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地元の図書館まで歩く途中に河原沿いの道がある。
土手は草でいっぱいなのに、舗装されたアスファルトの道はジリジリと熱を放っている。
ずっと続く道がユラユラと揺れている。
蜃気楼だ。
名前にするとすごく情緒的なのに、体感してみるとうっとおしくて仕方がない。
早く図書館の涼しい室内にいきたい。
でも、早歩きなんてできない。
暑い、暑い、と言いながら、だらだら歩いている。
相変わらず、遠くのほうには入道雲がある。
ふと、川のほうを見ると、何隻もの白い小さな船が流れている。
こんな浅い川に船!?
暑さでついに頭でもやってしまったんだろうか?
目をこすってみても変わらない。
おそらく、紙製の軽い船だろう。
誰が流しているんだろうか?
幸い、図書館は上流のほうだったので、そのまま歩く。
さっきまでのダラダラは嘘のように、小走りで向かう。
ある程度進むと、一人の青年がせっせと川に船を流していた。
あの髪色、背丈…、すごく見たことがある。
"白い紙でできた"船、という時点で気づくべきだった。
流すことに集中しているせいか、相当距離を縮めても気づく様子がない。
鼻歌まで歌っているし…
しかも有名な曲。
「ブラームズの愛のワルツ」
「え?うわぁ!!?」
思わず、曲名を口走っていたらしい。
情けない声を上げながら、青年…、高木先輩はしりもちをついた。
「あ、あれ?すみません、驚かせちゃいました?」
「かづきちゃんか…、マジでびっくりした…」
ノロノロと先輩が立ち上がる。
「うわ、びしょぬれですね」
「それ、君が言う?」
あちゃーと言いながら、先輩は自分の服を確かめている。
「そういえば、よく曲名分かったよね。有名だけど、曲名知らない人多いからさ」
「まぁ、弾きたかった曲の中の一つなので」
「へぇ」
「そういう先輩は、こないだの紙飛行機といい…、折り紙が趣味なんですか?」




