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「香月ちゃん、どこ行ってたの~、もう…」
「あ、ごめんね」
お隣の席のサナちゃんだ。たぶん…。
名前を覚えるのはあまり得意ではない。
そんなに付き合いのない彼女が、
私の不在を嘆いているのはおそらく、
先ほどの授業で読みあわせでもしたのだろう。
「古文に慣れるにはまず朗読から」がモットーの先生だ。
何かにつけて、輪読をさせたり、
隣の人と交互に読み合わせさせたりする。
彼女は、私がいないせいで、先生とペアでも組んだのだろう。
先生とペアを組んだときは大きな声で読まないと何回も読み直しを命じられる。
内向的な彼女にとっては苦痛だったに違いない。
「あの、そういえば、高木先輩って知ってる?」
「どうしたの?急に…。そりゃ知ってるよ、悪い意味で有名人だし…」
「そうだよね」
「それがどうかしたの?」
「ううん、なんでもない」
「なんか今日変だよ、もう一回保健室行く?」
普通の人が言ったら、煽りとも取れるその言葉は、
彼女が口にしただけで本当に心配している雰囲気が出るから、
やっぱり印象は大事だと思った。




