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神が世界を造る理由  作者: 八分 涙
第1章 管理者満足編
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第5話 「ランクアップ」

 俺は朝起き、身支度をしながら昨日までの情報を整理した。

 最初のセーヴィラムでは生活分を狩るだけの、冒険しない冒険者がほとんどを占めていた。高レベルになるにつれて冒険者の人口は急下に低くなっていき、モンスター等の情報も減り入手し辛くなっている。

 この街で手に入る情報にも限度があり、既にそのほとんどを入手した。


 王都に入りそのまま北側の街で活動しても良かった。だが、途中の魔物の程度も直接知っておきたかったし、セーヴィラムで大量に入手した技術も完全に使いこなせるように練習しなければならない。安全を重視して楽なモンスターでそれ等を行う事に決め、西の街ミレティアに向かう事にした。北西のグレンツォへはミレティアでやる事を終えてから行こう。


 道中の魔物は姿形や動きは違ったが、強さは微塵も感じられず何事もなく西の街ミレティアに到着した。

 この街は基本的にゴールドがほとんどで、怠け者の巣窟の様なものだった。ならばするべき事は限られてくる。ゴールドからは戦闘以外の情報のみ、プラチナ以上を見つけられれば、戦闘関連の情報を目的に憑依する。あとこの街で他にする事といえばm武具の換装の必要性を検討くらいか。

 武器屋と防具屋を見てみたが、値段の割りに性能がそれほど変わらなかったので、結局買わずに立ち去った。


 俺は予定通り情報収集の為にギルドに向かった。中に入り、後はいつもの流れで憑依の繰り返し。

 昼までに情報収集は済ませた。

 情報によるとミレティアの街の近くで一番モンスターの多い場所は、真っ直ぐ西に向かった先にある深い森のようだ。

 昼食をその辺で適当に取り、西の森付近へ向かった。到着すると、俺は周囲のモンスターを察知する技術を使い、モンスターが集まっている場所を確認した。

 セーヴィラムとミレティアで集めた情報の確認と技術や魔法をモノにする為だけに、モンスターを見つけ次第、次から次々とモンスターをほぼ1撃で屠っていく。正直ここで狩り続けても今よりそれほど強くはなれないのだが、どんどん殺されていくモンスター。あちこちにある大量のモンスターの死骸を見るとなんだかやるせなくなってくる。俺がやったんだけどな。


 モンスターは同種ならある程度連携してくるが異種間では意思疎通は出来ない。同種のモンスターであれば攻撃パターンは限られてくるのでやっかいなコンビネーションなどはほぼ無い、その事がハッキリと確認できた。

 ひと通り技術や魔法を身につけた所で街に戻ると夕方だった。換金を済ませ、気分転換に日没まで街を散策し、翌日北西のグレンツォへ向かうのに備え宿でしっかり休んでおいた。


 朝起きてすぐにチェックアウトし、早速次の街グレンツォへと向かった。

 グレンツォへの道中もモンスターはサクサク倒せた。

 少し歩いていると向かい側から人が一人こっちに歩いてくる。ある程度近づくと声をかけてきた。


「兄ちゃん、この辺でみない顔だな。これからグレンツォへ向かうのか?」


「あぁ、そうなんだ。グレンツォへ行くのは初めてでな」


「ランクは何だ? ゴールド後半くらいじゃないと厳しいぞ?」


「そういやランクはまだボロンズだったな」


「ボロンズでグレンツォに行くなんて、死にに行くようなもんだぞ。バカな考えは辞めておくんだ」


「もう、ランクアップは出来るはずだからグレンツォへ着いたら申請手続きする事にする」


「ランク毎に決められたギルド指定の魔物の核は交換済みなのか?」


「その辺はギルドで確認してもらうことにする。セーヴィラムとミレティア付近のモンスターはあらかた倒したからな」


「ほぅ…。兄ちゃん、冒険者暦は長いのか?」


「いや、二日前にセーヴィラムで冒険者登録をして、翌日ミレティアで1日過ごして今日で三日目になるな」


「嘘を付くのは辞めるんだ。セーヴィラムで楽に倒せるようになるまで、どんなにすごい奴でも早くて一週間はかかり、平均的な奴は一ヶ月くらいだな。この辺りは冒険者の常識のはずだが……。それにミレティア付近はさらに厳しく早くて一ヶ月、普通四ヶ月だろ? それをそれぞれ一日で終えるなんて冒険者登録前からモンスターと戦ってたのか?」


「いや、登録してから初めてモンスターと戦ったんだが? 何事にも例外はあるだろ」


「それで済む範囲を超えてるぞ。からかってんのか?」


「すまん、かるい冗談だ。まぁそこそこの長さだよ」


 まじめに対応すると面倒なので嘘を付いておいた。


「まったくふざけたやつだ。まぁここで会ったのも何かの縁かもしれん。俺はバリハントだ、また何処かであったらよろしくな」


「俺は薫だ。まぁもちろんお断りだな」


「ハッハッハ。冗談の好きな兄ちゃんだな、達者でな」


 変なのに絡まれたが、反対側から冒険者が来たせいかモンスターとは出会わなかった。正直モンスターを相手にするほうが気が楽だった気がしないことも無い。人間の最大の敵は人間かもしれないな……。


「あれがグレンティアだな。ここで目立って前線の部隊にでも入れられたらたまったもんじゃないからな。揉め事は決して起こさないように慎重にいくか。そういえばこの世界に来てからほとんど人と接触してないのもあって揉めてないな。あ、おっぱいもな」


 ……あれ。俺こんなキャラじゃなかったよな? 他人の記憶を自分の物にした影響が出てるのか? 人と親しくなったらあんまり多用しないようにしよう。

 そんな事を考えながら忘れていたランクアップの申請をするためにいつも街について最初にする事、そう、冒険者ギルドへ向かった。ギルドの中に入って俺はすぐにギルド職員を探した。ここの職員は全部で4人。俺は背が高く、体にメリハリのある、ふんわりとした優しそうな女性職員に話しかけた。


「お姉さん。ランクアップを今まで忘れていたんだが、今までの記録でどのランクになれるか、次のランクの条件を調べてほしいんだが」


「では確認するので情報が記録されているブレスレットを出してもらえますか~?」


「ああ、ちょっと待ってくれ」


 そう言い、俺はボロンゴのブレスレットを差し出す。


「少々お待ちくださいねぇ~。木島薫様、プラチナへのランクアップおめでとうございます~。それにしても冒険者登録してから3日でプラチナですかぁ。すごいですね~。こんな例は聞いた事がないのですよ~」


「何事も最初ってのはあるものだ、それがたまたま俺だっただけだろう」


 適当に誤魔化し、その場を立ち去った。俺は戦闘技術を盗む為、前線へ向かう事にしたが、装備が最初の街で買ったまま換えておらず、それほど攻撃も受けてないとはいえ痛んできていたので、このグレンツォで一番良い装備を買い揃え、ついでにアイテム類もしっかりと補充した。


「これで準備は整ったな。前線へ赴くとするか」


 憑依は対象には一切関知されない事が今までの経験で分かっていた。前線周辺にはモンスターもいるので自分の技術で周囲のモンスターがいないのを確認して憑依を繰り返せばモンスターの居る地域でも問題ないだろう、と考えひとまず前線へと向かった。

 とはいえ実際モンスターを感知するにもどんなモンスターがいるか、グレンツォの冒険者から情報を得ないといけない。ここに来て初めて俺自身で情報なしの状態で戦闘を行いつつ、冒険者を見かけたら憑依を行い、次の冒険者を見つけるまで新たな技術の習得しながらモンスターを狩る、という作業を繰り返した。


「……やはり狩場だと中々効率よく憑依出来ないな」


 自分の選んだ行動が効率的で無い事に初めての失敗を感じながらも、一方で対面するモンスターの情報がない戦いに緊張と少しの恐怖、そして倒した時の喜びを感じていた。


「先の事が分からないと言うのは怖い面もあるが、それがスパイスとなりこんなにも面白楽しく、心が満たされるものなのか」


 新たな発見に興奮をしつつも、俺は本来の目的は忘れていなかった。夕方前には街に戻り、狩りから戻ってくる冒険者を待ち伏せし見つけ次第憑依していった。日が暮れ、周囲が静まり返るまで続け、適当な宿屋を探し、その日は休んだ。次の日はこの街の東側にある街、セロガルトでお馴染みの情報収集兼戦闘技術を得る作業をする事にした。


「恐らく今度が最後になるだろうな」


 そう考えながら、ベッドで眠りに就くのであった。


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