第4話 「急成長の1日」
(お金は上々。リーダーの装備も剥いでおきたかったが、装備があれば狩りは出来る。いずれ何かの役に立つかもしれんからな……)
パーティー四人分の稼ぎを独り占めしているので金銭面の心配は無くなったはずだったが、上質な装備を買い揃える必要があったので手に入れたお金も右から左へと流れた。武器屋で装備一式を揃えて外に出た時には財布の重さは随分と軽くなっていた。
装備が揃ったので早速モブ狩りを始めた。初心者の狩り場の知識もあるので一直線に狩り場に移動した。狩りに関しても知識はあるので知識通りに体を動かすだけの反復運動に過ぎなかった。もちろん最初は体力がなく、すぐに疲れるので残金で買った回復アイテムでドーピング。魔法やその他技術を完全にものにしながら着実に強くなっていった。
「今日はこのくらいにしておくか」
俺は生活に必要なモンスターの核は手に入れたので、換金所に戻ってお金に換えた。お金に余裕も出来、普通に狩りをするだけなら回復アイテムなしでも問題なくソロで狩れるようになった。この辺りのモンスターは弱く効率が悪くなってきたので、もう少し強い敵を倒す必要がある。
情報を得るため、ギルドで結構遅くまで待ち伏せてみたが、ゴールドランク以上の冒険者現れなかった。
「そういえば今日一日、街にいる時間はそれほど長くなかったがゴールドの冒険者は一人も見かけなかったな……」
今日はゴールド冒険者探しを切り上げて、この街で一番の高級宿に泊まる事にした。だがその前についでに今朝冒険者登録を頼んだギルド職員のお姉さんに色々聞いてみる事にした。
「街の冒険者はボロンズとシルバーばかりで上級冒険者を見かけないが何故なんだ?」
「このセーヴィラムは初心者向けの街でして、近くに強いモンスターが一切いないのです。突然現れることもありません、ですから強い冒険者の方は他の街を拠点にして活動していますね。それぞれの街の近くのモンスターは、地形の影響か特徴や強さがある程度偏って生息しているので、冒険者の方はそれらを基準に拠点を選ぶのが一般的ですね」
「なるほどな。セーヴィラム以外にはどんな街があるんだ?」
「王都とセーヴィラムを含め六箇所が、主な人々の居住エリアになります。木島様はこの世界の状況をご存知ですか?」
「いいや、全く。出来れば教えて欲しい」
「承知しました。まずこの世界には人も魔族も国は1つしかありません。そして人類と魔族は長い戦争状態にあります。とはいえ、かなり昔に何度か全戦力による戦いがあったのですが全てお互いの戦力を消耗するだけで決着がつかない結果となっています。ですのでお互い牽制だけに留まり、均衡状態にあります」
「ふーむ」
「それが長い間続き、危機感が薄れ冒険者の皆様も躍起になって強くなろうとしないのです。しかし魔族側は戦力は常に維持してると見られており、近年ではその均衡が崩れ魔族が押し寄せてくるのではないかと、国では危機感を感じているのが現状です」
「こんな大きい街なのに強い冒険者を見かけない上に冒険者は割りと気楽そうなのは、この街の冒険者は怠け者だからって事か…」
「はっきり言ってしまうとそういう事になります…。後は辺境に小さな村が多少ありますが、ほとんどが自給自足で国も関与していない状況です」
「なるほど。それで詳しい地域などの位置を教えてもらえるか?」
「王都を中心にご説明しますね。まず、すぐ南側にこのセーヴィラムがあります。そして東側にオルティガ、西側にミレティアがあります。セーヴィラムの次に行かれるのでしたらこのどちらかをお勧めします。そしてさらに上級者が多く拠点にしているのが北東のセロガルト、北西のグレンツェです。この5都市は王都を囲うように位置しております。下級になるほど冒険者が多い事もあり、街の規模や広さも南側ほど大きくなっています。そして北側の2都市のさらに北に前線があり、その先には渓谷が北へ真っ直ぐ伸びています。左右に大きな山脈があるので、魔族もほぼ間違いなく渓谷を通ってやってきます。」
「ふむ。この辺りのモンスターでは物足りなくなってきたし、明日朝にはミレティアに出発するか」
「えっ!? 今日冒険者になったばかりでしたよね? もう次にいくほど強くなられたのですか?? そういえば、今着けてらっしゃる装備はこの街では最上級のものになりますね……」
「まあな。実際に戦ってみたら意外と弱かった。ところでそろそろ宿に行きたいんだが、今夜この街で一番高級な宿に泊まりたいんだがどこにあるか教えてくれないか?」
「あっ、はい……。ギルドを出て右に歩いていき、五十メートル先に十字路があるので右に曲がってください。そして百二十メートルほど進むと左手に木で出来たテーブルと椅子が並んだ屋外で食事出来るお店がありますので、その一つ目の路地を左へ。するとポーションや雑貨のお店が並んだ通りに出ますので、防具屋の先の分かれ道を左へ。そのまま突き当たりまで行って今度は右へお進み下さい。そしてしばらく真っ直ぐいくと左手に井戸がありますので、その二つ先の路地を右に入り、五つ目の建物の先を左へ曲がって右側十三軒目の石造りの建物が、この街で一番高級な宿屋になります」
「わかった、丁寧にありがとう。空いてるか分からないが行ってみる。会って一日だが世話になった、ありがとう、お姉さん」
「部屋が埋まる事はまずないので安心していいですよ。木島様も体にお気をつけて無理しないようにして下さいね」
(あーあ、行っちゃった。もし今度会えたらアタックして恋人にしてもらおっ! あの人はダイヤモンドクラスになり得る優良物件ね)
俺はギルドのお姉さんの言う通り道を進んでいき、目的の宿屋には3分ほどでたどり着いた。
もちろん良い宿に泊まるのが一番の目的ではい。上級冒険者であれば稼ぎも良いはずで、高い宿に泊まってもそれほどの出費ではないだろう、と考えたからだ。それに、上級冒険者といえどケチケチしてるような奴ならば、文字通り『冒険』してない可能性が高く強さは同じでも情報量が少ないと考えられる。
疲労と回復を繰り返すストレッシブな狩りをした事もあり高級宿屋に泊まれる事に充足感を感じながら宿屋の中に入り、チェックインを済ませる。色々と色がしかったので昼は持ち歩けるパンで済ませたが、夕食は宿屋にある食事処で済ませた。相変わらずあまり美味しくない。王都に行けば少しはマシなのだろうか?
(……今後は食事は腹を満たす目的しか期待できそうにないな。その辺の通りにある携帯出来そうなもので済ませるか)
かなりのペースで稼いだ点とこの街にある宿屋という点を考え、お金は充分足りると予想してたが、考えた通り大した出費でもなかった。この宿泊に際し、お金が足りなかったり財布が心許なくなれば宿の冒険者から巻き上げる事も前もって考えていたが、必要なかった。その事に何故か安堵を覚えつつ、荷物を部屋に置きエントランスのソファーで待機する。もちろん上級冒険者を待ち伏せて憑依し、次の街の詳しい情報を得るためだ。そんな事を考えながらしばらく待っていると、ゴールドの冒険者が部屋から出てきた。
早速憑依能力を発動した。
なるほど、この憑依先の男の情報からすると、俺の実力的に東と西は苦もなく無く倒せるようだ。間を飛ばして最前線に近い北側の街に向かうべきか? 情報は多いに越した事は無い。情報は使うもの次第で、例え間違った情報でも他と比較し正否を判断する。この実力が人の優秀さを決定付ける大きな要素の1つだ。なので、他の冒険者にも憑依して情報のすり合わせと狩りの技術を勝手に分けてもらう事にした。――それからその日部屋で寝るまでの間、片っ端からシルバー以上の冒険者に憑依し、様々な種類の情報を大量に入手し、その日はその宿で眠った。