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神が世界を造る理由  作者: 八分 涙
第1章 管理者満足編
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第2話 「いきなり転移」

 待ったをしようとするも話を聞かない。こいつはコミュニケーション能力が足りないな。まぁ管理者ってやつには必要もないな。

 突如、足元に魔法陣が現れ視界は光で白くなり目が開けられなくなる。次に目を開いた時、そこはまさに異世界だった。ぼろい集落が見えた。


(見るからに電化製品が無い生活だな…正直ウォシュレットだけは欲しかった。とりあえず、知識も得られるというし憑依能力を使ってみるか)


 ぼろい家の中に少年がいるのを見つけ、憑依能力を発動してみた。


 視界が一瞬ぶれ、少年の体を乗っ取っていた。俺が元いた場所へ振り向くと俺の姿は無い。


(憑依中は俺の実体は消えるんだな…と考えていると、俺の頭の中に少年の記憶や知識などの情報がある事に気がついた。)


「上手くいったようだ。とりあえず外の様子でも見てみるか。」


「あっ、お兄ちゃんやっと起きたの?」


 目の前にこいつの妹のリアリがいた。


「あぁ、良い朝だな」


「もう、昼過ぎてるよ。朝の畑仕事を手伝わなかったからお母さん怒ってたよ」


「それは悪い事をしたな。後で謝っておくよ。それより少し外に出てくるから帰りが遅くなるかもって伝えておいてくれ」


「えっ、どこかいくの? 泥棒はダメだってお母さんにいつも言われてるでしょ?」


「今日は違うから」


 辺りを歩き出すと見えるのは畑と古びれた家のみで辺りは山に囲まれていた。既に俺のものとなった記憶や、妹の言っていたように辺りは何もない。


(この少年の名はトモリ、妹がリアリ、母親がメリア。父はなぜかいないようだ。トモリの知識ではこの集落のかなり北に大きな都市があるようだな。他に役に立ちそうな情報は無し。この村は道具はある程度整っているが、基本には自給自足か。文明と言えるものは外れの集落には特に無し。国などがあったとしても支配は全域に及んで無いな。)


 あの管理者を満足させる答えとなると…地方を含めた村の発展と安定した豊かな暮らしか? このレベルからの発展になると途方もない時間がかかる。こいつの人生は俺のいた世界よりも、さらに面白くない。


(管理者よ。この男の人生の答えを見つけたぞ)


 俺は山に向かい答えに向けて一心不乱に走り出した。この男の記憶が正しければ山の中腹には『あれ』がある。そこでは綺麗な景色が一望でき村の周りの状況がよくみえた。下を

見ると肝が縮むほどの高さがあった。つまりは崖である。


「さらば、おれの人生」


 普通であれば躊躇する場面であるが、やり直しが利くなら他人の命など使い捨てで良いだろう。目的のために犠牲は付きものだ。多少痛みはあるだろうが、この高さで頭から落ちればすぐに楽になるだろう。答えが違っても問題ない。普通に憑依能力の解除も出来るが、殺されたりした場合どうなるか知っておきたいからな。


 ――トマトが潰れた音がした。


 気が付くと、家の前の少年に憑依する直前の光景と同じだった。唯一違うのは少年がいない点。どうやら無駄に命を使ってしまったようだ。

 そして憑依能力について分かった事がある。憑依中に俺の本体を見かけなかったし村の外の人間が居るという話を村人がしていた様子もないので、俺自身は実体が消えていたようだ。そして死んだり憑依能力解除をした際は、憑依能力を発動した場所で実体と精神が戻るようだ。この場合時間が経ちすぎて空間がなかった場合などはどうなるのだろうか?ま、憑依能力の前後は、不都合がない状態で開始するのだろう。


 何にしても北の方向にある大きな都市に向かうとするか。俺自身移動しないといけないからな…。とりあえず村を歩き回っていると1台だけ荷馬車を見つける事が出来た。これを使うか。


 様子をみて、持ち主と思われる人物に憑依能力を発動した。


(やはり荷馬車の持ち主であっているようだ。取引できそうな事…ふむ、なるほど。試してみるか)


 憑依能力を解除した。


「すみません、この荷馬車の持ち主の方ですか?」


「ああ、この村で作った食い物やらを都市へ売りに行ってるボビーだ。おめえは誰だ?」


「木島 薫という旅の者です。北の大きな都市へ行きたいのですが連れてって貰えませんか?」


「セーヴィラスの街か? 丁度明後日の早朝に行く予定だが、お金は持っているのか?タダで乗せてく訳にはいかねぇな」


「生憎とお金はありません。踏み入った事をお聞きしますが…先程よりあなたがメリアさんをチラチラ見ていましたよね? 最初はメリアさんの息子が崖から落ちて亡くなったのを心配しているだけかと思ったのですが、あなたはメリアさんに好意があるのではないですか? もしそうならメリアさんがあなたに好意を抱くように話をつけます。上手くいけばセーヴィラスの街まで乗せていってもらえないでしょうか?」


「お前にそんなことが出来るのか? 出来るのならそれでもいいが…変な事して嫌われるなんて事はないだろうな?」


「私はあくまでも上手く話をもっていくだけです。では期待して待っててください」


 ひとまず話は纏まったな。それにしても金か。まあ、あって困る事はないし憑依して村の者から少しずつ頂くとしよう。世界をよくするんだ、税金みたいなものだな。

 そして村人へ憑依してお金を山の中へ置き村へ戻り能力解除、それと次々と繰り返しそこそこのお金を集め、俺はそのお金で宿を借り、翌日の夕方まで時間を潰した。


「そろそろいくか。」


 メリアに能力を発動した。


 とりあえず邪魔な妹を寝付かせておこう。


「リアリ。トモリが死んでしまったのは母さんも悲しいわ。でも私達に出来るのはトモリの分まで笑顔で生きることよ? 母さんは明日の朝までトモリが安らかに眠れるように少し出かけてくるわ。あなたはちゃんと寝てるのよ? 外を出歩いたらダメだからね。」


「お母さんまでいなくならない? 本当に帰ってくる?」


「もちろんよ。リアリを残していなくなったりしないわ。明日には元気になって母さん戻ってくるからね」


「わかった。じゃあもう寝るね。おやすみ、お母さん」


 そして夜が更け、メリアに憑依している薫はボビーの家の扉を静かにノックした。するとすぐに扉は開いた。


「こんばんは、ボビーさん。こんな時間にごめんなさい。実は話があって…。中に入れて貰ってもいいですか?」


「え? えぇ。どうぞ」


 ボビーは緊張と期待を感じながらメリアを家の中に入れた。


「実は夫が亡くなってから、村の為に無償で物を売りに行って下さるボビーさんの事を素敵だと思っていて…。そして昨日、息子まで亡くして…私、つらくて胸が締めつけられそうなんです。私なんて魅力が無いかもしれません。ですがどうか今夜だけは私を慰めては貰えないでしょうか?不安でたまらないんです。」


 そう言うとメリアは服をゆっくりと脱ぎ出した。メリアは子供を二人産んだとは思えないほどメリハリのあるボビー好みの体をしていた。


「私、息子を失った悲しみを一時だけでもいいので忘れたいんです。快楽でも恐怖や嫌悪でも何でも構いません。強い感情で私の心を上書きしてください。もし嫌がって抵抗したとしてもどうか私の為だと思い、やめないで下さい。お礼になるかは分かりませんがいつまで続けて頂いても構いません。気を失う位強引にしてください」


「そうか……。よほどつらいんだろう。俺にまかせとけ」


 ボビーが近づいてくるのが見えた瞬間、薫は憑依能力を解除した。


「うぇ、男に告白とか正直気持ち悪すぎるな……」


 薫は自分の行動に気持ち悪さを覚えながらも罪悪感を感じる事もなく宿へ戻って行った。そしてボビーがセーヴィラスへ向かう日の早朝。荷馬車の近くで待っているとボビーがやってきた。


「セーヴィラスへ行きたいんだろ? 乗ってけ」


 あまり良い顔をしていない所を見るとうまくいかなかったのだろうか。真相は分らないがどうでもいいので黙っていよう。そうして静まり返る村で二人はセーヴィラスの街は出発したのだった。

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