三十四話 謎の石像と玉の正体
「あれは人魚の石像? なんであんなところに? それにその上に載ってあるのってティアラ?」
「なんでこんなところにあるのかな? もしかしてこれを守るためにこの神殿が作られたのかな?」
月奈の言う通りかもしれない。でもこのティアラって壁の絵にあったものとそっくり…… でもそれを身に着けてたのは絵だと人間だったはずだけど…… それにこの石像もなんでここにあるんだろ?
「……お母さん、この石像何か変」
「うん? 変って何が?」
「石像なのに生きてる……」
「え‼ 石像なのに!? そんなバカなことが……」
私は恐る恐る石像に触ってみた。すると、ドクンドクンという音がしていた。そして、石像はほんのり暖かかった。
「……本当だ、心臓が動いてる」
「でもなんで石像が生きてるんだろ? お姉ちゃんみたいに不思議な体験をしたとか?」
もしそうだとしても理由がわからない。 それにここは海の中にあった建物だ。普通なら水が入ってきたり、老化が進んだりするはず、でもこの石像や部屋の内部、ティアラなんかにはそれが見えない。
もし本当にこの石像が生きているとしたら、動けないはず…… それはつまり……
誰かがこの場所にいるってことになる
そう考えたとき、私たちが入ってきたドアがバタンと音を立ててしまった。
「だれ‼」
私はドアのほうを見て、思わず叫んだ‼ でも返事も音も何もしなかった……
気のせいかと月奈と雪奈のほうを確認すると二人が私のほうを指さしていた。
「お、お姉ちゃん…… その人…… 誰?」
「え?」
私は月奈の言うことがわからず首をかしげると私のすぐそばで知らない女性の声が聞こえてきた。
「あら、ようやく気が付いたのね? ずっとあなたのそばにいたのに……」
私は声が聞こえたほうを見ると、そこにはこの世の人とは思えないぐらいきれいな女性がいた。
その髪はまるでサファイアのごとく青く、身にまとっているドレスはパールのように白く、とてもなめらかだった……
「あ、あなたは? それにずっと私たちについて来たって……」
「あなたたちが海に入ってきたとき、私があっちの世界とこっちの世界の扉を開けたわ。だからあなたたちはこっちの世界に来れたの。 それと私はサラ、あなたたちと同じ精霊よ」
「あなたも精霊なんだ…… それじゃあ、ずっと一緒にいたってことは理恵についても知ってる?」
私が彼女にそう聞くと彼女は微笑んだ。
「ええ、知ってるわ。あのサメたちを呼んだのは私だもの」
サラが言う事実に私はいつの間にか歯をかみしめていた。
そして震える声で彼女に聞いた
「理恵は? 理恵は無事なの?」
「ええ、彼女は無事だわ。それに安心して、あなたたちが見た血は彼女のではなく、サメたちのだから」
私はその事実にほっとして力が抜けて地面に座っちゃった。
「よかった…… 本当に良かった……」
「あなたたちには悪いことをしちゃったみたいね。ごめんなさいね」
「いえ、無事ならいいんです…… それで、あなたはなぜ私たちをここに?」
「それなんだけど、あなたに少し質問していいかしら?」
サラはそう言って、雪奈のほうに近づいていった。
「あなたはどこまで戻っているの? それともすべてを知っていてなお知らないふりをしているだけ? ねえどうなの?」
「……どういう意味ですか?」
「いえ? 気づいてないならそれでいいの。でもあなたには必ず知らなければいけない時が来る…… それまではしっかり彼女、あなたのお母さんを守りなさい。 それとあなたもね月奈ちゃん」
「よくわからないけど、わかりました?」
「それじゃあ、聞きたいこともわかったし、あなたたちを連れてきた理由を話すわね。 あなたたちを連れてきた理由は彼女を助けてほしいの」
サラはそういって石像の頭をなでた。それは愛しいものをなでるかのようにやさしいものだった。
「その石像はいったい何なんですか? 石像って言っていいのかわからないけど……」
「そうね、今はこんな姿だけど生きているわ。 彼女の名前はセラ。 私の妹よ」
「妹? つまり彼女も精霊ってことですか?」
「そうね、でも精霊、じゃなくて聖霊だけどね」
「精霊じゃなくて聖霊? その違いは何なんですか?」
「うーん、教えてあげてもいいんだけどね、でもあなたたちには今は必要ない情報よ。 だけどいずれわかるときが来る。 だからその時はもう一度…… ってこんなこと言っても意味ないわね」
「まあとりあえずセラについて説明するわね」
「セラは聖霊と呼ばれる少し特殊な種族なの。 私は水を扱えるぐらいしか能力がないけどセラは水だけじゃなく海のすべてを操る力を持っているの。 そして、セラはその力を完璧には扱えなかった…… あまりにも強大な力。安定するまでにはものすごく時間がかかったわ。 それでも完全には扱えなかったけどね。
でもセラが扱えないと世界が崩壊してしまう。そこで精霊と聖霊の王である女性にあるものを作ってもらったわ。それがこのティアラ クリスタロス。神器とよばれるものの一つだわ。そして、もう一つこのティアラに仕込んでもらったの。 それがこのティアラの真ん中にはめ込んである玉、海神の神玉と呼ばれるもの。これはもともと一つの玉だったものを彼女が三つに分けたものの一つ。 これは一つで世界がひっくり返るほどの危険なものなの。あなたたちも持っているはずよ? この三つのうちの一つを」
サラにそう言われ、私はその玉にピンっと来た。初めて雪奈にあったときにあった謎の玉。そして、今もなお雪奈がもっている玉のことだ。
「それは雪奈が持っている玉の事ね。 あれがそんなものだとは全く知らなかったよ……」
私がそういうと雪奈が玉をバックから出して私に渡してくれた。
「雪奈ありがとね。 それで? サラはこの玉が何の玉かわかるの?」
「ええ、わかるわ。 あなたたちのは太陽の神玉。 私にはなぜそれをあなたたちが持っているのかが気になって仕方がないけどね」
「これは雪奈と初めて会った時に見つけたものです。 そしてこの玉のおかげでこっちの世界に来れたんです」
「そう、その玉はさっき言った王である彼女が肌身離さずに持っていたものなの、その神玉が一番力を持っているものなの…… そしてその玉に対なる神玉が最後の神玉 月の神玉。 これが三つに分かれた神玉のすべてよ」
「そうですか、あ、一つ聞くんですけどいいですか?」
「ええ、いいわよ?」
「私と理恵はもともと精霊の神玉と言われるものを探すために旅に出たんです。サラはその神玉について情報を知ってたりしないかな?」
「精霊の神玉ね、さっき神玉を三つに分けたって教えたわよね」
「うん」
「その三つ集まった状態の神玉が精霊の神玉と呼ばれるものよ」
「え? つまり、精霊の神玉と呼ばれるものを手に入れるには三つの神玉を集めないといけないってことですか?」
「そうね、それとそれを復活させるための鍵もね。 でもなぜかしらね、そのカギはもうあなたの近くにいるわ」
「え? 鍵が近くに?」
「ええ、時が来たら必ずあなたのもとに来るでしょうね。セラについてだけど、急に海神の神玉の効力が失われてしまったの…… そのせいでセラは力が制御できなくなって最終的に自分を石像にすることで何とか窮地を脱出したわ。 だけどその石像になる魔法を解除するにはある物が必要なの……
それがあなたたちの持っている太陽の神玉。 私は絶対に手に入らないとあきらめていた時にあなたたちが入ってきた。 そして神玉は神玉同士で引き合うわ。 だからあなたたちをここに誘い込んだ。サメたちを使ってね」
「それで理恵や私たちを襲ったってわけですね」
「ええ、本当にあなたたちには悪いことをしたわね」
「理恵が無事ならそれでよかった。 それでその石像を解くにはどうしたらいいの?」
「太陽の神玉の光をセラに照らせば解けてくれるわ」
「それじゃあさっそくやってみます‼」
私は神玉の使い方を知らないからいろいろ触ってみたけど、まったく光は出なかった……
「あれ? 光が出ない?」
サラのほうを見ると小声で何かを言っていた。とりあえず話を聞いてもらえる雰囲気じゃなかった。
5分ぐらいいろいろいじってみたけどうんともすんとも言わなかった。
いい加減腹が立ってきていい加減にしろ‼と心の中で玉に向かって言ってしまった。
すると、神玉が光り輝いた。
「う、うそだ~ まさかあんなことで光るなんて……」
ま、まあ、け、結果オーライってやつだよね。ということで私はなにも悪くない‼ よし‼
そして、その光をセラさんに当てると石になっていたからだが肌色になってサラと同じ色の髪が見えてきた。
そうして、五分ぐらい当てているとセラさんの石化は完全に解けた。
「う、ううん~」
セラさんのうめき声が聞こえるとサラはガバっとセラさんに抱き着いてこう言っていた。
「おかえりなさい、セラ」
さて今日だけで更新四話目です
今回は主人公たちが持っていた玉の正体と石像の正体がわかりましたね
次回は完全にセラさん復活なのでお楽しみに‼
それとブクマや評価もよろしくお願いします
作者 水月 鏡花