三十三話 海底探索にレッツゴー 後編
「り、理恵‼」
サメに視界を奪われた隙に理恵が襲われた…… 私の目の前には理恵の血だと思われるものが海の中を漂っていた。
サメは興味を無くしたのか私たちに目もくれず去っていた……
「お、お姉ちゃん…… 理恵が……」
月奈も私にいろいろと言っているが私にはもう何も聞こえなかった。 ただ私の中にあるのは理恵が食べられたという事実とぽっかりと穴が開いてしまった心だけだった。
「い、いやぁ、なんで? ずっと一緒にいるって約束したじゃん…… うそだよね? 理恵が食べられちゃったなんて……
「お姉ちゃん……」
理恵のことを考えていると隣から服の袖がギュッと握られる感覚が私に襲った。
「雪奈……」
「……お母さん、理恵はちゃんとお母さんを、私たちを守ってくれた。 ……それに、まだ本当に死んだってわけじゃないと思う。 理恵はとても強いんだからあんなサメなんかにやられないよ。だから私たちは理恵が生きてるって信じてできることをやるべきだと思う……」
「なんで…… なんで雪奈はそんなに前向きに考えられるの? 理恵が食べられたんだよ?」
「だって、だって、私は理恵のことを信じてるから。 理恵がお母さんとの約束を破るはずないもん……」
私にそういう雪奈の顔からぽろぽろと涙が流れていた。
ああ、この子もつらい思いを我慢して理恵のことを信じてるんだ…… 理恵なら必ず生きてるって。この子は私よりもずっと強いな。体はまだ子供なのに…… 雪奈がこんなに頑張っているのに私はいったい何をしてるんだろ? 理恵が食べられて死んじゃったなんて決めつけて、これじゃあ私のほうが子供だよ……
「……雪奈の言う通りだ。 理恵が約束破るはずないよね…… ごめんね、こんなお母さんで、雪奈のおかげでわかったよ。 私たちは私たちでできることをしよう。 理恵がいつ帰ってきてもいいようにね」
「うん‼ お姉ちゃんの顔色も良くなったしね。 雪奈もお姉ちゃんを励ましてくれてありがとね? だからもう涙を拭こう‼ そして、その涙は理恵が帰ってきたときに取っとこうね」
月奈は雪奈の頭をなでて、ぽろぽろと流れているなみだを服の裾で拭いていた。
その姿はまるで姉と妹だった。
そんな中、私はあることに気が付いた
「ねえ、雪奈のバックが光ってるよ?」
そう、わたしが気が付いたのは雪奈があの玉を持ってくるためにもってきていたウサギのバックが光っていることだった。
「本当だ‼ 光ってる‼」
月奈は驚いて、雪奈は光っているバックを手にもって、バックのファスナーを開けた。
「……お母さん、あの玉が光ってるよ?」
雪奈はそう言ってバックの中から持ってきた玉を取り出すと確かに光っていた。
「本当だね? でもなんでだろ? 今まで触ったり調べたりしたけど何もなかったのに……」
すると、雪奈が持っている玉が反応し始めた。そして、より一層輝くと海の先から似たような光がこっちに向かってきた。
「玉の光と向こうで光っている光が一つにつながった?」
それは光の道しるべみたいだった。
「光の先になにかあるのかな? 行ってみよう」
私たちははぐれないように手をつないで海を歩いて光が差す何かに向かって歩き始めた。
そうして、10分ぐらい歩いて、私たちの目の前に現れたのはとても大きな建物だった……
「海の中にこんなに大きな建造物が…… でも光はあの建物から出てる、ここが目的地みたいだね」
「これってパルテノン神殿だっけ? なんだかそれに作りが似てない?」
月奈の言う通り、絵なんかで見る神殿と言われる建物に作りがものすごく似ていた。
「じゃあ、これも何かを祭っている神殿ってこと?」
「わからないけど、その可能性が高いと思うよ?」
「……お母さん、呼んでる」
月奈と話していると雪奈が私にそう言ってきた。
「雪奈? 呼んでるって何が?」
「……わからない、でもこっちに来て?って呼んでる」
私には何も聞こえないけど、一応、月奈に目を合わしてみるけど月奈も首を横に振っていた。つまり、雪奈にしかその声は聞こえてないってことか……
「その声の正体がわからないのは危険だけど、ここで立ち止まってるわけにもいかないから行ってみる? あの神殿に」
「「うん」」
私たちは崖を飛んで目の前の神殿に入った。
神殿の中はとても広く、壁などに絵がいろいろと書いてあった
どれも見たことがない絵で何を示しているのかはわからなかった。
「すごいね…… どれも見たことのないものだ、でも中に入ってみたけど、道は一直線だね」
「いかにも何かありそうだね? それに見た感じだけど建物の老化が全くないよ? つまり、誰かがこの神殿をずっと手入れしてるってことだね」
「……私もなんだか不思議な感じがする。何かに包み込まれる感じ?」
私も雪奈と一緒で何かに包み込まれる感じがする? それになんだろ? この感じ? なぜか私はここが始めてきた場所とは思えなかった。
それに神殿の壁に書いてある絵、それが一体何を示すのかはわからないけどあれが何かの物語だということはなんとなくわかった……
それにそれが私は無関係ではないことも……
「ここが最後の扉だね…… 何があっても私から離れないでね?」
「「うん」」
私たちはきれいに飾られている扉を開けた。
そしてその中にあったのは……
台座の上で眠った形をしている人魚の形をした石像とその石像の胸に置かれたティアラだった
三十三話いかがだったでしょうか?
これにて海底探索にレッツゴーは終わりです。
次回からは神殿で繰り広げられるストーリなのでお楽しみに
一応誤字脱字は気を付けましたがもしかしたらあるかもしれません
その時は優しく教えてくれると嬉しいです
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それでは次回もよろしくお願いします
作者 水月 鏡花