表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/39

第27話 助けたいものと守りたいもの 前編

書き貯めしようと思いましたが、

この話でひと段落つくので

前編と後編合わせて更新します。


ぜひ楽しんでいってくださいね

私は、変な生物の前に立った。


「あなたの相手は私よ。」


私がそういうと生物の姿が犬の形に変化した。

そして、グルルルル…とうなっていた。


「姿が変わった…でも月奈には一本も触れさせない‼」


私はそう言って、簡易魔法を唱えた。


「シャイニングスフィア‼」


シャイニングスフィアは光の簡易魔法だ。

光の玉が謎の生物に向かっていった。


そして、魔法は生物の頭に当たるとはじけた。


「グアァァァ‼」


魔法を食らった生物はさらに怒りだして

私に向かってきた。


私は戦っていていくつか気づいたことがあった。

私の攻撃や今戦っている生物の体が固まっているみんなに当たっても貫通して壊れないのだ。


「なんで攻撃なんかが当たっても壊れないんだろ?」


私は先頭に支障がない程度に固まっている人間に触ってみた。

すると、私の手が当たる寸前に薄れているのが分かった。


それはまるで、私たちのほうが実態がないみたいだった。


私はさっきの魔法を少し変えて、

生物がめまいを起こすように光の爆弾を打ち込んだ。


そして、謎の生物が狙い通りにめまいを起こしている間に、

月奈のいるところに向かって、見つけたことを話した。


「月奈、ある程度分かったことがあるんだけど、

 どうやら、この世界が止まっているんじゃあなくて

 私たちの実態がないみたいなんだ。」


「でも、今の戦いの中でついたかすり傷なんかは、

 生々しく残っているの。」


「だから、もし致命的なダメージを受けると死んでしまうと私は思うの、

 そして、この世界で死んでしまったとき現実で何が起こってしまうのかは、

 私にも想像がつかない。」


私が見つけたことを早口で伝えると、月奈はより真剣な顔つきになった。


「つまり、私たちがいるこの場所は、何が起こるかもわからない場所で、

 私たちだけに起こる理不尽な現実ってわけなんだね?」


月奈が私の手を握ってそう答えた。

私は何でここまで月奈が落ち着いているのかが不思議だった。


「私たち死ぬかもしれないんだよ?

 なんで月奈はそんなに落ち着いているの?」


月奈にそう聞くと、月奈は笑って答えた。


「それは、お姉ちゃんが必ず守ってくれるって約束したからだよ。」


月奈がそういって私はなんだか恥ずかしくなった。


私はなんで弱気になってたんだろ?

月奈と約束したじゃない。


何があっても今度は月奈を守って一緒にいるって。


私は、月奈に誤った。


「月奈、ごめんね。」


「お姉ちゃんなんだか怖くなっちゃってた。

 もし、もう一度、みんなと離れてしまうって考えると…」


私が月奈にそう言おうとしたとき、月奈が抱きしめてきた。


「お姉ちゃん、怖いなら、ちゃんと言ってほしいよ?

 お姉ちゃんはいつも自分よりも人のこと優先で」


「私はいつも守ってもらうことしかできない。

 お姉ちゃんはいつも守ってくれるけど、

 がんばれっていうことしかできないのもつらいんだよ」


月奈が真剣な顔つきで、でも涙を流しながらそう言ってきた。


「だから、もう一度、お姉ちゃんに聞くね?」


「本当に戦うのが怖いなら、ここから逃げよう?

 もし本当に私をあの怪物から守ってくれるのなら、

 私もあなたのそばにいさせて。」


「もう、あんな気持ちにはなりたくないの‼

 だから、私もお姉ちゃんのそばで戦いたい‼」


月奈は力いっぱい私に訴えてきた。

 

私は月奈に震える声でこうきいた。

それは、とてもずるい質問で実際に聞かれたら私も答えられない。

でも、私はその答えが知りたかったから月奈にきいたのだった。


「もし、私が自分とあなたのことを守り切れずに、

 死んでしまうことしか手段がなかったら、」


私はそこでいったん切って息をすってこう言った。


「あなたは私と一緒に死んでくれますか?」


これは、とても残酷な質問なのだろう。

月奈が死にたくないと答えてくれれば、

私は魔法でも何でも使って月奈を逃がしていただろう。


そして、相打ち覚悟であの生物を倒して、

あの子を守っていただろう。


こんなことを考えてはみたけれど、

私が本当にほしいのは理由だったのだろう。


私は本当に最悪だ。

あんなにみんなとも約束したのにこれだ。


私の無意識が私を闇に引き込もうとしている。


私は月と夜を司る精霊。

それすなわち、正反対を司る精霊。


月の光が弱ればあたりは静寂の闇


つまり、今の私は自分の闇に飲まれようとしているのだ。

ああ、でもここですべてを投げ出せたらどんなに楽だろうか。


私の意識はだんだんと暗くなっていき、完全に飲まれようとしていた。


「駄目だよ、お姉ちゃん。」


「そっちに行ったら」


そう言って私の体を優しく抱きしめて止めてくれたのは、

私を精霊にしてこんな体にした張本人 ルティだった。


「ルティ? 何でここに?

 月奈はどこに行ったの?」


私がルティにそう聞くとルティはこういった。


「まだ気づかない? 私が月奈だよ。お姉ちゃん。」


そう言って、笑う姿はまさに月奈だった。


「でも、それだとなんであの時は…」


ルティもとい月奈に聞くと、月奈はこういった。


「私は確かに、この娘と一緒の存在だけど、少し違うの。」


「私は裏の世界の月奈。つまり精霊界とこの現実世界は裏と表の世界なの」


月奈が分かりやすく説明してくれた。


「だから、初めて精霊界に行ったときにこっちの知り合いにそっくりさんがいたんだ。」


私がそうつぶやくと月奈は正解と言って補足説明をしてくれた。


「私たちは表と裏。だから本当は交わることがないはずだった。」


月奈は深刻な顔をしながらそう言った。


「お姉ちゃんに言った通り、いま世界は大変なことになってるの」


「今の世界は裏と表がバラバラになって交わろうとしている。

 そして、世界が交わったとき世界は破滅するの」


月奈がそう言った。


「本当は私は力をためてこの世界のゆがみを直すはずだった。

 でも、歪みが強く、私ができることは二つしかできなかった。」


「一つはあなたという存在を中間点として置くこと。

 そして、二つ目は、今からすることよ」


そう言って月奈は私には聞き取れない魔法を唱えた。

すると、だんだんと月奈の体が薄くなっていた。


「月奈?どうしたの?」


月奈にそう聞くと月奈は悲しそうに言った。


「二つ目は、現実の私に記憶と魔法を託すことなの。

 そして、私という存在は消えてしまうの」


「だから、お願い。現実の私と一緒に。

 世界を、みんなを救って?」


私はこの月奈がもう助からないとなんとなくわかった。

だから、私は精一杯の笑顔で任せてと言った。


月奈に泣きながら、でも笑顔でそういうと、

月奈も泣きながらこっちをみてこういった。


「ありがとう、お姉ちゃん。バイバイ」


月奈はそう言ってきていなくなり、

元の月奈に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ