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「BACK SIDE ENDLESS FIRE.」  作者: 高橋。
3/4

5と6


5.

朝、午前10時位に目が覚め、田所の容態を看る、いびきは無くなり赤ん坊のようにすやすやと眠る田所、しかしこのまま眠り続けるならいずれは餓死またわ水分が不足し死んでしてしまうと不安もよぎりはするが、やばいなと時を見ながら、その時は救急車なり、または田所の車で総合病院なりに連れてけばよいとは思うが、水分だけでもと思い、冷蔵庫の2リットルのペットボトルのポカリスエットをコップに注ぎ、田所の口に流し入れてみることにした。昏睡してるにしろライフラインの水分に田所は反応してくれ、ゆっくりと口の中に流れ込んでくるポカリスエットを飲み込んでくれた。コップに結果5杯程のポカリスエットを飲み、安心し、電車にて紫蘭町を目指すことにした。自分の持銭は4千円と数百円位の小銭で、やはり隣県に迄出向くには食事なりのこと、田所をほっとく事は出来ないのでなどを考えると長くても一泊、出来れば日帰りでとは思うが、4千円位では足りない、田所の財布から借りることにするしか無く、田所にわるい、と頭を下げ、テーブルの上の田所の長財布から2万勝手に借りることにした。田所の寛容で、そういった所にあまり細かさのないザックリとした性分に感謝である、にしろ、あかんことに変わりは無く、暫くぼーとしてしまった。エアコンの設定温度をもう一度28度と確かめ、田所が眼を覚ましたらと思い、2万借りる、本日、8/17。明日には戻る。コピー用紙で置き手紙をテーブルにし、特に持って行く必要な物は無く、地図は紫蘭町のある隣県に辿り着いてから買うことにし、田所宅を後にした。外はギラギラと暑く、唯最寄り駅まで速歩きで向かった。汗が流れ、タオルくらい持って出れば良かったなと思った。以来川駅でペットボトルの緑茶を買い、清算は着いた駅、紫蘭駅で清算しようと思い、一駅分迄の切符を買い改札を抜け階段を登り向こう側のホームに出た。平日の昼間だからホームで電車を待つ乗客は4、5人程だった。アナウンスが鳴り、電車がやって来て乗り込んだ。車内は涼しく、汗をシャツの袖で拭い、とりあえずは隣県のメイン駅、可鳴駅迄と案内を見てみた。このまま一本で行けるようだった。暫くは眠るなり気を抜けれると思い、茶を飲み、電車が動き出した時、反対側のホームに角鳥が真っ赤なスーツに紫色のネクタイをし立っていた。異様であり、何か嫌な予感がしたが、角鳥の職業は舞台に立つ職種なんだろう、漫才師、演歌歌手、まあ営業なりに向かうのかなと、少し妙な不安が胸に巣くい始めたが、自分を納得させ、角鳥は悪い人間には全く見えなかったので気にしないことにした。電車は加速し、乗客の少ない涼しい車内は楽で揺られながら、いつの間にか眠っていた。

6.

「お客さん、終点ですよ〜、終点です、」

と駅員に掛けられた声で眼を覚ました。寝過ごした、と思い、すいませんと駅員に会釈し車外に出、ホームの駅名を確認した。紫蘭駅だった。路線がそのまま終点紫蘭駅行きだったのか途中からの経由を入れ替える電車だったのか、まあ、ついてるとし、時計を見ると15時過ぎだった。ホームから町を眺めて見ると、商店街もありそうな雰囲気があり、書店で地図を買いたい思いもありほっとした。改札の窓口で清算し、とりあえず腹が減っており適当な店で食事をしてから書店を探す事にした。駅から出るとそのまま目の前がアーケードのある商店街メイン通りになっており、プラスチックの飾りをした看板に紫蘭商店街と銀色のベースに紫色で書いてあった。3、4件目に蕎麦と書いてある幟を立てた店があり蕎麦を食うことにした。ざる蕎麦を頼み、早々と食し700円を支払い店を出、書店は蕎麦屋の斜め前にあり、界隈の出来るだけ詳しく分かる縮尺の物を選び購入し、店を出、直ぐに開いてみた。紫蘭町5-12-5、地図上では枝番が2つ目迄確認出来た。距離的には、歩いて30分ないし40分位かと思う。方角は北東。商店街をそのまま抜け、住宅街を過ぎ、畑が砂地になり海の近くなんだと思う。地図を見、現在位置の地形と見比べてみると、もう暫く、この畑を過ぎた所らしいと思う。あたりは砂地の畑ばかりで、5-12-5辺りはもう目に入っている距離に思う。唯の畑だったら、唯の勘で来ただけの自分の無意味な行動だったと、直ぐに引き返し田所の元に戻るだけのことと思い、番地だけでも確認出来たらと思い歩みを進めた。恐らくは此処だと思う場所はやはり畑だった。農機具をしまっておく為の物なのか、建築現場などにある簡易トイレの一回り程大きいくらいの小屋があっただけで、畑はらっきょうのものなのか、あさつきの様なものが並び生えている。

「紫蘭町、5-12-5なの、」

人気など全く無いのに声がし、驚き、直ぐに声は小屋の中からしたものだと分かり、一瞬で血の気が引き、固まった。

「紫蘭町、5-12-5なの、」

また小屋の中で何者かが声を発した。自分は怖くもあったが、確かめたい欲求の方が瞬時に勝ち、小屋の扉を開いた。中には真っ赤なスーツに紫色のネクタイをした角鳥がいた。顔には薄ら笑いを浮かべ、青ざめた顔が異様だった。一眼で狂人だと感じ、自分は頭を一瞬に巡らし、何か仕組まれたことだと、角鳥から逃げ出さなければ危険であると直感するが、嫌、角鳥がどう動くかはまだ分からないことではあり、自分は冷静を出来るだけ保ち、訪ねた。

「角鳥さんですよね?」

「違います。僕は、鳴間力人です。」

鳴間と聞き、自分の苗字と同じことに言い知れぬ怖さを感じた。

「あなたの弟だわな。いひひひ。」

目の前の男の眼が憎悪をとも取れる光を宿していた。そして、男はいきなり号泣しだし、物凄い勢いで海の方と思われる方へ走り去って行ってしまった。暫く訳が分からず、立ったままにいたが、小屋に何かあるのでは無いかと思い中を覗いて見た。中には封筒がひとつ落ちていた。拾ってみると封筒は糊で閉じて無く、中からは一枚の写真が入っていた。真っ赤なスーツに紫色のネクタイをした20歳そこそこと思われる自分と中学生くらいの男の子とのツーショットの写真だった。男の子は、角鳥と思った、走り去って行った男だと直ぐに分かった。写真裏には、ありがとう兄ちゃん、と書いてあった。どういう事なのかさっぱり分からず、白紙となってしまっている記憶は依然として微動だにしない白紙で、急に辺りの気温を感じ、蒸し暑いなと思った。


パンッ、

乾いた破裂音がした。銃声かは分からなかったが、男が走り去った向こうから聞こえた。まさかと思い、走り、海まで出た。砂浜に仰向けで男が倒れていた。右手に銃を握りしめ、頭から血を流していた。胸に物凄い感情的なものが溢れ、自分は力人ぉぁあ‼︎と叫んでいた。何故かありありと、倒れている男が自分の弟なんだと強く感じ、まだ温かい男を崩れながら抱き起こした。涙が激情として溢れ、叫び、嗚咽となり、やがて海の空は太陽を控えはじめ真っ赤に染まった。血の着いた手で涙を拭い、住宅地まで何とか戻り、もう絶命していることは分かりきっていたが救急車を呼ぶため住民の方に電話を借りた。電話口で拳銃で男が頭を自分で撃ち抜いたと伝え、砂浜の力人の所に戻った。警察と救急車が暫くして来、自分は事情聴取としてパトカーに乗り警察署にて、そのままの話しをした。次の日、力人の行動の足跡に自身で拳銃を手に入れたことが警察の調べで分かり、間違い無く自殺と断定され、数日後、自分はとりあえず警察署を後にすることが出来た。自分は混乱するしか無かった。角鳥は力人だったのか、力人は何故自殺したのか、けれど田所が心配で混乱を振り切りながら帰りの電車では、まさか田所は死んで無いかと不安で潰れそうだった。以来川駅に着き、田所宅まで走った。雨が少し降っており、風が生暖かく、台風の前のような妙な雰囲気がした。窓に明かりが点いていてほっとした。家の中で田所は柿ピーを食べながらビールを飲み。ぼーとしていた。自分を認め、何にも無かったかのように、お帰り、お疲れ、と挨拶して来て、柿ピー食うか?と聞いて来て、自分は本当にほっとし、田所の佇まいの阿保さ加減に爆笑してしまった。田所は不思議そうにしてたが、自分が笑いの種だと気付き、自分と田所は腹を抱えて絨毯に倒れこみ、床を叩きながら次から次と無意味にやってくる爆笑の波にやられ、息が出来なくなるまで笑い転げた。ビールが美味かった。田所は、あんま俺は心配いらんわな、たまに発作みたいに、自分がコントロール出来なくなる、気絶して次の朝には、たっぷり睡眠したのと一緒で、快調になるんや。あんま心配いらん、正気は失ってないから。自分は画家なる突出した才能あるが故の田所の持ち物なんだと唯思った。噛み付いていた腕もたいした傷では無く、安心した。ビールもそこそこに、もう寝るわと田所に告げ、自室に戻り、また母からの手紙を見つめる。何か凄まじい内容の様に感じだし、疲労でとても開封することは出来なかった。力人との思い出が、白紙の記憶に少しひびが入ったように、自然と子供の時分に一緒に遊んだ思い出が映画の様に頭に流れた。涙がながれた。


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