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ワンダラーズ 無銘放浪伝  作者: 旗戦士
第一章: 新たなる旅立ち
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第九伝: 約束


 オルディネールを発ってから、約半日が経過した昼下がりの午後。彼らを突き刺す高温度の日光が草原に生い茂る草木に照り返し、金色の光を放つ光景を一瞥しながら武道袴に身を包んだ男――近衛雷蔵は被った笠の紐から滴る汗を袖口で拭う。肩口から提げていた円形の水筒の蓋を開け、中に入った水を少しだけ口に含んだ。温く味のしない液体を飲み込みつつ、その水筒を隣で歩いている赤縁眼鏡を掛けた銀髪の美少女――シルヴァーナ・ボラットに手渡す。普段から身に纏っている黒いローブを外し、背負っていたリュックの背に縛り付けている彼女は気だるそうに水を口に含み、更に彼女の隣にいた少年に渡した。彼はフィランダー・カミエール。オルディネールにて急遽雷蔵たちの旅に同行する事になった騎士志望の少年であり、シルヴィから水筒を受け取るなり彼はまじまじと水筒の飲み口を見つめている。


「……どうした? フィル? 」

「えっ!? あぁ、いやぁ……なんでもない、です……」

「ボーっとしてると置いて行っちゃいますよぉー……? あーっ、暑い……」


 先を行くシルヴィを横目に、雷蔵はフィルの耳元へと顔を近づけた。


「……間接的な接吻は、この際気にしなくても良いぞ」

「な、なななな何言ってるんですか!? 僕は別にそんなことを気にして……! 」

「んもー、二人とも何してるんですかぁー? 早く行きましょうよぉ、もう暑くて溶けそうです」


 シルヴィと雷蔵に急かされ、フィルは腕に力を込めながら飲み口を口元へと運び中身の水を飲み始める。想像以上に喉が渇いていたのか彼は音を立て、喉を通りながら身体中の潤いを乾かしていく。水筒を傾けていくフィルの姿に違和感を覚えていたのか、シルヴィは段々と目を見開いていった。


「ちょ、ちょっとフィル君! 飲みすぎじゃありませんかぁ!? ほらぁ早く止めて!! 」

「むぐっ! むぐぐぐっ! 」

「フィル……お主……」


 飛びかかるシルヴィにフィルは顔を赤らめながらも水筒から口を離し、空になった水筒が地面に落ちる。彼女の悲鳴が周囲に響き、雷蔵は苦笑を浮かべた。


「ちょっとぉ! お水無くなっちゃったじゃないですかぁ! 」

「だ、だってシルヴィさんが押すから! 」

「うぅ……この暑い中お水が無くなるなんて……もう! 」

「まあまあ落ち着け、シルヴィ。ちょうどそこに川辺があるだろう。もう半日も歩き詰めだ、この辺りで休息を取るのはどうか? 」


 雷蔵が指差した先には木製の橋の下に川が水音を立てて流れており、その光景を目の当たりにしたシルヴィとフィルは本能的にその川辺へと駆けだす。二人の様子を背後から見守っていた雷蔵は高らかに笑い声を上げながらその川辺へと歩みを進めた。シルヴィは岸へと着くなり荷物を投げ捨て、川へと飛び込む。よほど暑さが堪えていたのか、同じようにしてフィルも装備を石詰めの川辺へと投げた後に冷たい川の中へと身を投げた。


「ぷはーっ! あぁ~……気持ちいいですねぇ~……」

「ほんと、さっきまでの暑さが嘘みたいだ……」

「水浴びはそこまでにしておけ、二人とも。そのままでは風邪を引くぞ」


 水中から顔を出して涼風を全身で受け止めながら、フィルは隣のシルヴィへ視線を傾ける。彼女が白いブラウスを羽織っていたというのもあってか、彼の目にはシルヴィの胸部からうっすらと黒い模様が浮かんでいるのが見えた。それが女性物の下着だと分かる頃には、フィルは目線を彼女から逸らす。


「あの……シルヴィさん……その……」

「ん? どうかしたんですか、フィル君? 」

「ち、近いです! その……服が……」

「へっ? 服……ですか? 」


 フィルに言われてシルヴィは自身の胸元へ視線を落とすと、確かに自分が身に着けていた黒いブラジャーがブラウスの外から露わになっている光景を目の当たりにした。水に飛び込んだせいで中に着込んでいた下着が透けてしまっていたようで、シルヴィは顔を赤らめながら胸を両手で覆い隠す。


「はっはっは、シルヴィ。お主は思春期の男児にいい刺激を与えるのぉ。流石拙者の見込んだ女だ」

「な、何言ってるんですか雷蔵さん! ふ、フィル君! 見てないですよね!? ね! 」

「み、見てないですよ! 意外と大人っぽい下着付けてるだなんて……あ」

「やっぱり見てたんじゃないですかぁ! フィル君と雷蔵さんのえっち! スケベ! 変態! 」


 雷蔵は笑みを浮かべながら風呂敷から包まれた布をシルヴィとフィルに手渡し、彼自身も荷物と腰に差していた愛刀"紀州光片守長政"を小石の散りばめられた地面へと置いた。歩き詰めで疲れ切った足腰を労わりながら雷蔵は腰を地面に落とし、膝の関節が軋む音を耳にする。



「その辺にしておけ、二人とも。オルディネールを発ってから何も口にしていないだろう。そろそろ昼餉にしよう」

「……はぁーい」


 不満げな表情を浮かべてシルヴィは布を全身に羽織ったまま積み上げられた木々の下へと座り込み、彼女は右手の人差し指を木屑へと向けた。直後、彼女の指先から橙色の光が溢れたかと思うと茶色い木材から突如として赤い火が燃え上がる。発火魔法、上がれ・暖かなる炎(モンテ・フィアンマ)。魔導士が一番最初に会得する、初級の炎系魔術だった。


「まずは濡れた衣服を乾かすと良い。シルヴィ、お主は先にあの茂みで着替えて参れ。フィル、お主には用がある」

「はーい。……覗いちゃダメですからね? 」

「覗くか阿呆め。早くしろ、風邪を引くぞ」


 ムッとした表情を浮かべたシルヴィは舌を出して彼に毒づくと、着替えを持ったまま川辺の茂みの奥へと消えていく。そんな彼女を見守ると雷蔵は対面して座っていたフィルへと視線を変え、彼の双眸を見つめ始めた。


「それで、用ってなんですか? 雷蔵さん」

「うむ……。まずはこの棒きれを手に取れ」


 雷蔵に言われるがまま、フィルは目の前に投げ捨てられた木製の棒を掴む。その瞬間、雷蔵は左のひざ元に転がっていたもう一本の棒きれを手に取り中腰の態勢のまま横一文字に薙いだ。フィルの右頬に触れる直前で木を握った腕の力を弱め、彼の眼前には驚愕の表情を浮かべるフィルが映る。呆気に取られている彼へ向けて雷蔵は笑みを浮かべ、棒きれの位置を元に戻した。


「二人の男が武器を手に取った瞬間から戦いは始まる。そのように注意が散漫ではあっという間に殺されてしまう……フィルよ、お主には戦士として生きる何もかもが足りていない。僭越ながら、拙者がこの旅の道中でお主に稽古をつけよう。さて……早速稽古を始めるとしようか。騙す真似をして悪かったな、フィルよ」

「い、いえ……でも光栄です。あの時断った雷蔵さんに、こうして鍛錬をしてもらえるなんて」

「嬉しい事を言うものだ。では、改めて構えよ」


 雷蔵はその場から立ち上がって焚火から少し離れた位置に移動し、右手で棒きれを握りながら右太ももの前に構える。被っていた笠を脱ぎ捨て、後ろで縛った彼の長い黒髪が川風に揺れた。気を取り直して正眼で棒を構えるフィル。雷蔵は彼から一時も視線を逸らさずに見続け、射殺すような視線を彼に向ける。その絶大な殺気を感じ取ったのか、一瞬だけ木の棒を握っていたフィルの腕の力が弱まった。雷蔵はその隙を逃すまいと後ろに置いていた左足に力を入れ地面を蹴り、一瞬でフィルとの距離を詰める。彼の握る棒が眼前に現れた瞬間、雷蔵は右腕を大きく振り上げて彼の防御を誘発した。わずか数秒に及ぶ速さと言えどフィルはなんとかその速度に追いつき両手に握っていた木で脳天を守ろうと頭上に掲げる。しかし、フィルが感じたのは脇腹と腹部に走った固い物の当たる感触。彼の軽い身体は一瞬で吹き飛ばされ、雷蔵はそんなフィルを追撃するかのように駆ける。一瞬で再び距離を詰められたフィルの身体は地面に倒れ、彼はうめき声を上げていた。


「……咄嗟に振り上げた剣に対して反応できたのは良しとしよう。だがフィル、それでは胴と腕がガラ空きだ」

「う、うぅ……。早過ぎますって……」

「騎士になるのならば、この程度は見切れるようにならんとな。立て、次はお主が打ってこい」


再び棒きれを構え直し、フィルが立ち上がってから木の棒を構え直すまで雷蔵は彼を待つ。鼻から息を吸い、新鮮な空気を取り入れて口から吐き出すと雷蔵は目を見開いた。


「――来い」


隙を見つけ出そうともがいているのか、フィルの双眸は雷蔵の全身を何度も見回している。腕、足、腰、胴、肩、頭……しかしながら、素人同然のフィルには達人のように僅かな虚を突いて動作に移すのは難しい。無我夢中でフィルは雷蔵の眼前に現れ、彼の感覚は左肩に掛けての斬撃だと雷蔵の脳に知らせる。すぐさま彼は振り下ろされんとしていた木の棒を弾き、フィルの胴体を再びがら空きにした。

――だが。フィルはその防御を読んでいたのか、弾かれた反動で身体を時計回りに捻転させ地面に足を着く。


「……ッ!? 」


 先ほどの雷蔵からの一撃で玄人の技を自分なりにアレンジしてみたのだろう、思わずこの機転には雷蔵も舌を巻いた。本当にフィルには剣に関して天賦の才を持っていることを実感し、そして内心ほくそ笑む。だが彼はこの感情を表には出さず、フィルから放たれた横一文字の一閃を右手を返して受け止める。


「えっ……!? 」

「隙在り」


 瞬時に雷蔵はフィルからの斬撃を受け止めたまま彼との距離を詰め、左拳を彼の眼前で止めた。

死の恐怖を本能的に感じ取ったのか、フィルの額には脂汗が滲んでいる。ハッとした雷蔵は膝から崩れ落ちたフィルの身体を受け止め、その場に優しく腰を落とさせた。何が起こったのか分からないフィルへと手を差し伸べ、雷蔵は地面に座り込む。


「剣を持った相手が殴撃を使わぬとも限らんぞ、フィル。何時如何なる時も、気を抜いてはならぬ」

「は、はい……」

「しかし、先ほどの拙者の防御を読んだ一撃は見事だった。やはりお主は……いや、なんでもない」


 フィルは差し出された雷蔵の腕を握り、其処を支点にしてから再び立ち上がった。稽古を再び始めようとした所で茂みから軽装着に着替えたシルヴィの姿が見え始め、棒きれを構え直そうとした雷蔵は切っ先を下ろす。


「おやおや、お二方お熱い事で。お邪魔でした? 」

「いんや。そろそろ拙者も終わりにしようと思っていたところだ。日も暮れてきた事だし、夕餉にしよう」

「はーい。それじゃちゃちゃっと作っちゃいますね~」


 そう言うとシルヴィは地面に置いた大きなカバンからオルディネールで買いためていた食材やキャンプ用具を取り出し始め、一人調理の作業へと耽っていく。雷蔵とフィルはそんな彼女に苦笑を浮かべながら地面に寝転がり、気づけば意識は睡魔に襲われていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

<河原>


そうして太陽が地平線に沈み、橙色から紺色の淡く暗い空へと変貌していく頃。寝転がって一時的な睡眠を採っていた雷蔵の鼻に香ばしい匂いが突き刺さり、寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こした。温かい焚火の光が調理を行うシルヴィの姿をより一層輝かせ、彼の目には今の彼女の姿がとても美しく見える。


「……すまん、眠っていたか。調理を任せてしまった」

「あぁ、いいんですよ。ほぼストレス発散用にやってるだけですし。周囲に魔物もいないので、今日は久しぶりにお肉を焼いてみました。あとシチューも飯盒で作りましたよ」

「かたじけない。シルヴィの料理は美味いからなぁ……毎度夕餉の時間が楽しみで仕方ない」

「えへへ、誉めたって何も出ませんよ? でもそういってもらえるのは嬉しいです。フィル君も起こしますか? 」


 シルヴィの問いに雷蔵は首を横に振った。


「初めての旅で疲れたのだろう。食事が冷めない内に拙者が起こそう、今は寝かせておいてやれ」

「はーい。あ、どうぞ雷蔵さん。食べないと明日に障りますよ」

「有難う」


 木の器に入った白いスープと牛肉を受け取り、雷蔵は風呂敷に仕舞っていた一膳の箸で丁寧にシチューの具を掴み取る。一口彼女の料理を食べてみると、牛乳のまろやかな口当たりと共に塩っ気の有る熱い液体が雷蔵の喉元を通り過ぎた。歩き通したものと先ほどフィルに稽古を付けた疲労もあるのだろう、シルヴィの温かい手料理は彼の五臓六腑に染み渡る。


「旨い! やはりシルヴィは良い嫁になるぞ、料理が上手い女子は最高よな。一日の疲れも吹き飛ぶというものよ」

「そ、そんな褒めたって何も出ませんってば。それに嫁って……私はそんな年齢じゃありませんよ」

「そう謙遜するな。お主ほどの良い女、国中探しても見つからんさ」


 照れ臭そうに頭を掻くシルヴィを横目に雷蔵は手にした器からシチューをあっという間に飲み干し、器に残っていた手のひら大の牛肉を貪った。食した香ばしい肉が自身の血肉になっていく感覚を感じ取り、完食したかと思うと雷蔵は両手を合わせて器を地面に置く。


「ご馳走様でした。そういえば……シルヴィは食わないのか? 」

「私はもう先に頂いたので大丈夫ですよ。食べ終わった器を洗うので、こっちに渡してください」

「いや、共に洗おうではないか。こうして二人きりで話すのもよかろう」

「……そ、そうですね」


 そう言いながら満腹になった腹を摩り、隣にシルヴィが居る事を確認した雷蔵はそのまま川辺へと歩き出した。闇の帳に静かで心地良い川のせせらぎが聞こえ、昼とは違った涼し気な風が二人を包み込む。雷蔵とシルヴィはその場に座り込み、器たちを川に漬けると中に付着した汚れを手で洗い落としていった。


「……なぁ、シルヴィ。お主はなぜ、この旅に拙者を加えた? 」

「うーん……いきなり難しい質問をしてきますねぇ……。なんででしょう? 」

「ははは……拙者に聞いてどうする。まあ良い……」


 洗い終えた器をその場に置き、雷蔵は履いていた草鞋を脱ぎ捨てると両脚を川に浸ける。冷たくも心地良い流れが彼の足を包み込み、思わず彼は感嘆の声を上げてしまった。隣のシルヴィも同じようにして川に細く白い脚を浸し、少女のような小さい悲鳴を上げる。


「拙者はな、お主に感謝しているのだ。国も家族も……仕える者も愛する者も無くし、放浪の旅を続けていた拙者に手を差し伸べてくれたお主にな」

「ど、どうしたんですか急に? なんだか今日の雷蔵さん、変ですよ」

「……そうだな……。何故だが急に、故郷が恋しくなったのかもしれん。拙者たちについてきたフィルを見て……拙者にも国があった事を思い出したのかもな」


 自嘲気味に雷蔵は笑みを浮かべた。国を、家族を捨て、放浪の旅を選んだのは彼自身。後悔しても取り戻せない事は雷蔵が一番理解していた。しかし雷蔵もまた、孤独な人間の一人である事には変わりはない。


「……分かります、その気持ち。私も、その。フィル君を見て……自分の為すべき事に直面させられました。今まで雷蔵さんとの旅でそれを忘れかけてたけど、改めて覚悟が決まりましたよ」

「不躾だが……お主の旅の目的とは何だ? お主の為すべき事――」


 雷蔵がそう問いかけた瞬間、彼女の石膏のような白い人差し指が彼の口を塞いだ。悪戯に微笑む彼女はどこか儚く、そして悲しみを抱いているように雷蔵には見える。だが、彼は敢えて聞かない事にした。シルヴィが来るべき時に話すのだと、雷蔵は思ったからだ。


「……まだ教えてはくれぬのだな。わかった――」

「はい。だから――」


 二人は同時に口を開き、そして互いに見つめ合う。


「――お主の為すべき事を、拙者が共に見届けよう」

「えっ? で、でも……」

「所詮拙者は放浪の身。死ぬのならば拙者を救い出してくれた者の為に死ぬまでよ。まあ、ついて来るなと言われても拙者はお主にしがみ付いてでも同行するぞ? 何分関わった人間は見過ごせん性分でな」


 意外だった雷蔵の答えにシルヴィは呆気にとられ、そして笑みを浮かべる。本当にこの人間を旅の供に選んでよかったと、彼女の笑顔から雷蔵は理解した。


「……もう。そこまで言われたら一緒に来て下さいって言うしかありませんね。ほんと、雷蔵さんってお馬鹿なんですね」

「馬鹿は馬鹿でも、死んでも治らん馬鹿さ。それにお主のような可憐な少女が、孤独に旅をするなど男として見過ごせぬよ」


 雷蔵の言葉を聞くなり、シルヴィは器を手に立ち上がる。少しだけ水しぶきが上がり、雷蔵の顔に跳ねたが彼は気にせずに彼女へと視線を向け続けた。すると直後、雷蔵の頬に柔らかい肉の感触が走る。仄かな女性物の石鹸の匂いが鼻を刺激し、絹のような銀髪が彼の顎に触れた。


「……これはお礼です、雷蔵さん」


 そう言い残して照れ臭そうにシルヴィは焚火の下へ駆けていくと、雷蔵を残して一人で毛布に包まってしまう。先ほど彼の頬に触れた感触を確かめようともう一度雷蔵は自身の頬に手を伸ばし、口付けをされた部分へと触れた。


「礼には及ばぬさ、シルヴィ。拙者はただの――」


 国を捨てた逆賊なのだからな、と言いかけた言葉を胸に仕舞う。空を見上げながら更けていく夜は、雷蔵をただただ暗く染め上げていった。

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