プロローグ
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彼は国の王だ。
国の最高主権者、道徳をもって天下を治める者である。この世界ではさらに権力が増しており、王が命令したことはどんなことでも国民は叶えなければならない。
王は誰に対しても命令することができ、叶えたいことはすべて叶えられ、欲しいものは全て手に入る。生まれた時からもうすでに勝ち組の人生を送ることができるのだ。
さらに全ての人間が魔法を使うことができるこの世界では、さらに王の自由度は広がっている。
とある日、そんな絶対的な力を持った王は自分の部屋で頭を悩ませていた。
…それは
「…くそ、袋とじが…あか、開かな…!もうちょ…くそ…!」
成人向け雑誌の閉じられた部分をどう開かずに見るかということだった。必死に跡がつかないように見ることが出来ないか、本を様々な角度から観察している。
…これが兵に聞こえてしまえば国民総力を上げて開けないといけないということはこのアホ王、理解していない。
そんな欲求前回の、将来『愚王』と呼ばれることになる国王がこの作品の主人公である。
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彼女は怪物だ。
人前に出れば化物と罵られ、虐げられてきた。人間の住む国に行こうなら敵襲であると勘違いされ、攻撃を受けてしまう。彼女が息を吐くだけで家は崩れ、彼女が拠点を変えるために移動しただけで大騒ぎだ。
彼女が人間を恨んでしまうような理由は数えることも馬鹿馬鹿しくなるほど存在する。
現に彼女の同僚たちのほぼ全員が人間に対していい感情を抱いていない。中には人間を殺すために生きているという者もいた。
事実、彼女たちには人間とは比べものにならないほどの力が有る。人間の住む都市を破壊することなど半日もかからないだろう。
そんな絶対的な力を持った彼女は…
「はぁ、そんなもの見ても何の足しにもならんでしょーに…ハサミありますよ、切ります?」
「ばっかお前!開けちゃったら俺が見たってバレるだろうが!」
「うわぁ…死ぬほどバカバカしいです。…なんかハラが立ってきたしもうそれ燃やしていい?」
「やめて!俺の生命線を奪わないでっ!!」
世界最強の力を、とても小さな本へ向けていた。
これはこの二人が、出会って、理解し合って、共に生活し始める。
そんな ほのぼの物語である。
主人公は基本アホです