題名は最後に
さようならが喉の奥に。
耐え切れなかった寂しさが、瞳のふちに。
よく動くえくぼがいつもと違う形に歪んで、震えて。
ああこんなにも。悲しいという顔はないだろうな。
悲しいな。
私は君の涙を拭うため、ふわり舞う。
風に乗って、ひらりひらり。
届かなかった私のかけら。地面に落ちて、もう舞うことなく。
諦めきれないから、私は幾つも体を削る。
君の涙を拭えるように。
いくつも、いくつも。風に舞う。私だった欠片。
今まで私に住んでいた小さなものたちに別れを告げる。じゃあね。そして君たちは空を飛ぶ。頼りなく、強かに、次の住処を求めて。
その下で、つまらなそうな顔した誰かが足を止めて私を見上げる。「綺麗」。誰にも、私以外の誰にも届かない声で、そう呟いた。
やがて君の前に、君と親しい誰かがきた。
笑顔の誰かは君に声をかけ、そしてゆっくりと私の方へ指を向ける。
そして君は私に気づく。君の目の端に、私のかけらが遺る。顔が、ほころぶ。
「ほんとだ。綺麗だね」
『門出の桜』