本文最初記載。
たぶん面白くないです(笑)
よければどうぞ読んでください。訪問ありがとうございます。
Ep1-Stigma-スティグマ‐
「さっ・・・ご飯出来たよ~♪祥真くん。」
可愛い足音がする。だが、俺は今それどころではない。
愚か、聞く余裕さえも持てないのだ。
そう。俺は頑丈な拘束具で身動きが取れない。
なぜ、こうなったかは、ただ仲がいいだけで、恋愛感情なんてさらさらない女の子と一緒に歩いていただ
けなのに、魅有はかなり嫉妬したのだ。
「今日は許してあげる。でも・・・次、他の女の子と歩いていたら、どうなるかわからないからね・・・?」
などと、さっきまでキラキラと輝いていた、見事に吸い込まれそうな瞳は、瞬間に消え去り、漆黒の闇をまとった夜が、目のうちに存在した。
怖いてもんじゃない。行き過ぎな程に激しい嫉妬と、独占欲とが互いに強調しあい、表現し難いのだ。
それで、俺は拘束具をつけられた。
監視と誰の手にも触れないようにと。
それが続き三日になる。だが、暇ってわけじゃない。
魅有が四六時中付いてくれるから。
苦痛ではなにのだが・・・、やたら俺にべたべたくっついてくる。
俺は身動きが出来ないから、なすがままなのだけれど。
そして、もう夕食時。お腹空いたというと、俺の好きなものを作ってくれるらしい。
慌ただしい足音。
魅有は楽しそうに二人分のご飯を装っている。
拘束具がなければ、ただの幼馴染との夕食。
ふう・・・考えても無駄か。
魅有は、小学校からの幼馴染である。一人教室の隅で読書にふけっていた。
誰も立ち入ることが許されぬ雰囲気を纏ってたから、誰も彼女に話す者はいなかった。
読書してて楽しいのだろうか。俺はそう思いながら、魅有を半ば好奇心気味に見ていた。・・・もしかしたら彼女に一目惚れしたのかもしれない。
放課後。僕が先生に職員室に呼ばれて、帰りが遅くなってしまった。
ランドセルを取って、早々と帰ろう。
教室のドアを開ける。・・・?あれ、確かあの子・・・。
確か、いつも読書してる子だよな。何してるんだろう。
「ねえ、何してるの?」
その子は、いきなり話かけられたものだから、飛び上がった。
「ひうっ!?何ですか!?私に用件でも!?」
小学生なのに、流暢な敬語を使ってる。家系がいいのかな。
「あっ、いや。ただ一人で何してるのかなーってさ。」
「あっ、えと、何でもありません!」
すっと、何かを後ろに隠した。
その子・・・えと・・・。魅有さん?だったかな。・・・は、早々と何かをランドセルに直し、逃げるように、教室を出て行った。
なんだったんだろう。そういえば、初めて話しかけたな。
彼女はメガネを掛けていた。文学少女って感じだった。
僕はモヤモヤとした気持ちを無理に押し込み、教室を出た。
翌日。彼女はいつもと同じように、近寄りがたい雰囲気を出していた。
彼女と話してみたいが、なかなか話すきっかけがない。
さすがに邪魔するわけにもいかないし。
授業中に、どうにか話すきっかけを作る方法を考えていた。
なかなか思いつかないまま、いつの間にか、放課後。
僕は普段行かない図書室に、ふと行ってみたくなった。
何故だろうか。全くわからない。
足が勝手に動く感じがした。
図書室につき、一通り見渡すと、あっ・・・、あの子がいた。
その姿は、昔から図書室に住んでいるのではにいかと錯覚してしまう程に、マッチしていた。妖艶だった。
もしかしたら、この子を探すために?仲良くなりたいために?無意識?
相変わらず理由は不明瞭だった。
「あの時の・・・。えと・・・。」
「祥真です。よろしく。」
思わず僕はその子へ握手を求めていた。
いつもクラスで、見るのに初めてな感じだった。
「あっ、祥真くん?よろしくです。」
彼女は恐る恐る手を伸ばし握手した。
「君って本が好きなんだね。」
「あっはい!本を読むと、現実で起きないことが、起こるし、主人公になれるし、楽しいです。」
本の話をしてる彼女はとても楽しそうだ。
僕もつい、笑みがこぼれた。
「あの、祥真くんは本読みますか?」
「本?あまり読まないなー・・・。」
「そうですか・・・。」
かなり残念そうな顔をしている。おっと、彼女の悲しい顔は見たくないな。何とかしなきゃ。
「タメでいいよ。敬語だとさ。なんかよそよそしいというか・・・。」
「えっ?この前まで他人でしたよ?」
彼女がふふっと笑った。確かに。
「でも、仲良くなった印に・・・。」
だんだん言葉が小さくなる。
「わかった。タメで話すね。うーん・・・タメは慣れないなー・・・」
赤面しながら、タメで話す彼女はとても可愛かった。
初めて彼女の顔をまじまじと見た。
正直、彼女の美しさに、目を奪われた。
髪で前の方を隠しているが、前髪を上げたら、かなりの美少女なんじゃないだろうか?
そして、彼女と時を忘れ、何時間も話をした。
いつの間にか、もう、下校時刻になっていた。
彼女とは、帰る方向が違ったので、校門で別れた。
いつの間にやら降っていた雨の音を聞きながら、明日も逢えたらいいな・・・。
・・・その想いが、雨に静かにかき消されていった。
翌日。彼女は、相変わらず本を読んでいた。
何故だか、教室にいるときは、彼女に話かけづらい。
だから放課後に話そうと思った。
今日も自然と図書室に足が赴いた。
今日はいるだろうか?
扉を開ける。見渡す。・・・が、いない。
今日は珍しいな。仕方ないので、図書室を後にした。
と、思ったら、図書室から、少し歩いた所に彼女はいた。
渡り廊下から見える景色をぼんやり眺めていた。
遠く地平線に沈む夕日をただただ眺めている。
少し、躊躇った。今、話しかけていいのか。
だが、僕の思いとは、裏腹に、足は自然と動いていた。
「えと・・・魅有さん・・・?」
ふと、振り向いた姿は、とても優しく、けれど、とても儚い表情を浮かべていた。
僕は言葉を失う。あまりに美しく、そして、あまりにも悲しかったからだ。
「えっ?ああ!祥真くん?」
さっきの表情は、遠く沈みゆく夕日と共に、見えなくなり、代わりにいつもの可愛らしい笑顔が戻ってきた。
「何してたの?」
「あっ、いや。ただ夕日を見てただけ。沈みゆく世界の終りのね。」
彼女は意味深なことを言った。
僕は面食らってしまった。
「え・・・」
彼女は慌てて、我に返る。
「えっ・・・あっ、ごめん。何でもないよ。」
彼女は苦笑する。
その日から彼女は変わった。
初めて会ったときより、随分明るくなった。
教室でも話しかけられるようになった。
彼女が、かなりの変貌を遂げたので、クラスメイトも最初は戸惑いを露わにしていたが、段々とそれが、普通になっていった。
俺に対しても、かなり干渉してくるようになった。
俺がトイレに行こうとすると。
「祥真くんのこと心配だから。」
と・・・トイレまで付いてくる。
さすがに中までは来なかったが、トイレ付近で待っていることもしばしば。
俺が女の子と話をしていると。
「ダーメ。祥真くんは私がいれば十分。他の女と一緒なんて・・・汚れる。」
「えっ、何かいった・・・?」
「ううん。何でも。」
と、ごまかしを含む笑みを浮かべる。
果ては、俺の家によく遊びにくることだろうか。
土日は、ほとんど僕ん家によく遊びにくることだろうか。
まあ・・・、傍から見れば、美少女と、二人屋根の下。なんて・・・、シチュエーションを羨ましがると思うが、そんな現実は甘くなかった。
或る日の夕方。僕が外から帰ってくると、僕はある異変に気付く。
玄関のドアが開いていた。
確かに、僕はドアを閉めたはず・・・。何で・・・。
泥棒でも、入られたか、それとも・・・。
僕は高鳴る鼓動を何とか鎮め、玄関にあったバットを持ち、ゆっくりとリビングに向かう。
リビングで人影が見えた。今のうちに泥棒を捕まえよう。
そう決心し、リビングの扉をゆっくりと開ける。
・・・だが、予想外に、僕は相手を知っていた。
「魅有・・・?何しているんだ?」
俺は、何とか平常心を保ち、リビングの床にぺたんと座る魅有に問う。
だが、返事はない。長い沈黙の後にすっと魅有が、口を開く。
「ねえ・・・祥真くん。怒らないから・・・ね?ちゃんと答えて・・・?次の質問にね?」
俺はわけがわからなかった。
「ちょ、おま・・・」
「一番目、祥真くんと一緒に歩いてた子って誰・・・?」
・・・。俺は思わず、黙り込む。なぜなら、さっき俺と買い物に行った子だったからだ。何故知っている?
「だから、なんで・・・。」
「いいから!答えて!!」
魅有は、怒っているようで、聞く耳を持たない。
ここは、何を言っても無駄だろう。俺は正直に答えることにした。
「えっと、あの子は、僕の友達だ。友達に誕生日プレゼントをあげたいって。相談に乗ってあげたんだ。だから、買い物に付き合ってた。
だが、魅有は、俺の顔すら見ない。無効を向いたままなので、表情が窺えない。
「ふ~ん。それで、何もなかった・・・でいいんだよね?」
その質問を言い切った後、魅有は、俺のほうを向いた。
その瞳はどこまでも黒く、どこまでも深かった。
「えっと・・・その・・・。」
手には、くしゃくしゃの写真と、カッターナイフ。俺は殺されるんじゃないかという恐怖に襲われた。
「ちゃんと、答えて。私のこと、どう思うの?好き?大好き?嫌い?大嫌い?」
俺は真面目に答えることにする。
「好きだよ。初めて会った時からずっと。」
俺はこの時、後悔した。彼女の本当の恐ろしさを知らなかったからだ。
「えっ・・・、そっ・・・そうなんだ・・・。ふふっ嬉しいな!」
瞬間、魅有は、いつも通りに戻った。さっきの不快な圧迫感は何だったんだろう・・・。
「私も、好きだよ?祥真くんと同じくね?」
だが、この時俺は知らなかった。魅有の本当に【好き】という意味を。
魅有が、僕の胸元に飛び込んでくる。
とてもいい香りがする。柑橘系の爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
「あっそうだ。その手に持ってるのって・・・カッターと写真だよな?」
「えっ・・・?あはは。何でもないの。」
魅有は、苦笑いを浮かべる。
「そうか・・・。ならいいが。」
俺は、あまり追及するのはよくないと思い、これ以上聞くのをやめた。
「それと、何で僕ん家にいるんだ?鍵は閉めたと思うが。」
「ああ・・・。そうそう。実はね、合鍵作ったんだ。時々来てご飯とか作ってあげるね。」
にこっと人懐っこい笑顔になる。
いや、ちょっと待て・・・。いつの間にそんなものを・・・?
魅有は至って普通に言ってるが、下手すればストーカーじゃないのか?
「ちょっと待て。いくらなんでも合鍵は・・・」
と言い終わろうとする前に、魅有は立つ。
「いいの!いいのー!!あっ、お腹空いたでしょ?何か作るね。」
と、ごまかすようにその場を立ち去る。
初めてなんで長くなりました・・・。汗
読みにくかったらごめんなさい・・・。
本文最後記載。