自業自得 ~ことだま~
教卓の前に立つ生徒が1人。
「皆さん、静かに前を向いてください。」
少しざわついていた教室が水を打ったように静まり返った。
彼は他のどんな生徒より優れていて、全てのことにおいて間違えたことを言わない優秀な生徒だった。
彼は満足げに一同の視線より高い位置から彼らを見下ろした。
「…あれ、一匹だけ毛並みの悪いライオン君が居ますね。おかしいな、ここは人間のいる場所なはずなのに。」
金色の髪を携え、こちらを睨む彼を見据えて口元に歪んだ笑みを浮かべる。
何も言えずにぐるると低く唸るだけの彼を見、こう言った。
「君みたいな、道から外れた子はここにいるべきではないんだよ。噛み殺されそうだ。早く檻にでも帰ったらどうだい?」
やる事なす事が正しくても彼が本質から捻くれていることは誰が見ても、いや、見なくてもわかる。
だが、ここでは彼が“すべて”、全知全能なのだ。
彼の失礼極まりない発言に反論できずライオンと呼ばれた彼は金色の髪を靡かせながらその場から走り去った。
「僕は皆さんの味方です。僕に従ってくれさえすれば安全で、楽しい学校生活が送れるでしょう。」
高慢な態度で、下卑た笑みを浮かべながらこう言い放ち「今日はこれで帰りますね」と、上機嫌に帰っていった。
そして翌日、彼は死んだ。
ライオンと呼ばれた彼も、その後学校に来ることは2度となかった。
“全知全能”の彼は言霊使い(無自覚)です。
言ったこと全てが実現してしまいます。
彼の言った「ライオン君」「噛み殺されそうだ」が本当のことになってしまい、彼は死んでしまいました。