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一年の計は元旦にあるらしい。

「『自分の志望校に他人が受かった』ってストレスを与えないように頑張った私の行動の意味は……?」

「まぁまぁ、結果的に何も問題無かったんだから良いじゃんか」

「アンタの無駄ポジティブのせいで私の苦労が水の泡になったかと思うと――」

「あれ俺のせいなの!?」

「だって、カモフラージュ用の参考書とか買ったし」

「わざわざそこまでしてたんだ……」

 初日の出も無事に見届け終わって、その後の帰り道。

 去年のように親に怒鳴られた俺は帰途に着いていて。

 その途中、

「あああああああああああッ!」

「!?」

 俺は、唐突に突然に叫んでいた。

「元旦からいきなりどうしたのよ」

「……色々と忙しくて、誕生日プレゼント、用意してなかった」

 去年はセンスがアレかもしれないけれども、一応は渡せた。

 でも今年は何も用意できていない。

「……じゃあ、アレが欲しい」

「アメリカンドッグかな良し来たさぁ来たバッチコイ!」

 ジーンズのポケットから財布を取り出しつつ叫んでみた。

 ここは道化を演じて下僕になって怒りを静めなければならない。

「いや、アメリカンドッグじゃなくて、」

 アズサが歩みを止める。

 つられて、俺も止まる。

 そして、アズサは左手をこちらに向けて、人差し指を俺に向けて。

「●●大学での、アンタの横が欲しい」

 微笑を浮かべながら、俺に向かってそう言い放った。

「え、」

「だから、さっさと帰って――」

 そしてアズサは、笑顔でそう言いながら。

「……、」

 唖然とした俺を無視しつつ、たたたっ、とアズサ家の方へ走っていった。

 そして、途中で振り返り、

「――頑張れよー!」

 手を振りながら、そう言ってきてくれた。

「あぁ!」

 いつか、思い出す。

「……でも、」

 今の、去り際の笑顔が。

 さっき俺達を照らしていた初日の出よりも眩しかった。

 一年前俺達を照らしていた初日の出よりも眩しかった。

 その事を。

「?」

 だから、動き出す。

 未来へ、走り出す。

 アズサの横を、得る為に。

 だから、

 その前に、

「さっさとコート返せぇぇええええぇぇええぇぇええぇぇええええッ!」

「バレたーっ!?」

 まずは、体を温めたい。

 準備も無しに、いきなりは走り出せないから。

 休息も無しに、荒波の中は泳ぎ渡れないから。

 寄道も無しに、説教へは向かいたくないから。

 新年の挨拶も無しに、アズサとは別れたくないから。

 一年の計は元旦にあるらしい。だから、

「ちょっ、なんっ、でそんなに、足速い、んだっ……!?」

「日頃から温存してるからね!」

 今の俺はできるだけ長く、アズサと一緒に過ごしていたい。

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