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もうそれで良いや!

「初日の出、見に行かない?」

 12月31日、19時02分。

 つまり、大晦日。

 そんな日にこんなアズサの言葉を聞いて、アズサの目の前に居る俺は、唖然とした表情を浮かべている。

 多分。

 見ても見ても見慣れない程度には綺麗でまっ白い素肌。

 もう何年間も切られずに伸ばされているまっ黒い長髪。

 その辺の小枝よりも脆そうに見えてくるまっ白い四肢。

 クローゼット内に何着もストックがあるまっ黒いYシャツ。

 暖房が放つ熱を逃がさない様に穿かれたまっ白い靴下。

 常より生気に満ちているような気もするまっ黒い両目。

 そんな風貌の少女――アズサは、無表情のまま先の言葉を言い放った。

 そしてその表情のまま、ずるっ、と年越し蕎麦の麺を勢い良く啜って。

 そしてその表情のまま、ずずっ、と年越し蕎麦の汁を勢い良く飲んで。

「まぁ拒否権は無いんだけど」

「無いの!?」

 いやいやいやいや、数時間前に俺から提案した時はあっさりばっさりざっくり拒否されていた気がするんだけれども!?

 あれか、心境の変化って奴かな奴だろうきっとそんな奴なんだろうでもいきなりどうしてなんでそんな変化が訪れた?

 と、熱々の年越し蕎麦が入った器に手を当てたまま俺はフリーズし、思考だけを巡らせていた。

 器から伝わる熱が徐々に我慢し難いものへと変わっていっているけれども未だに巡らせていた。

「……」

 だって、あの後、俺とアズサは黙々と勉強を続け、たまに教えてもらい教えてもらい教えてもらった。

 学力に雲泥の差がある故にこちらから教える事も叶わずに時間が過ぎ、まぁそこそこ効率良く進んだ。

 で、『時間も時間だから』と帰宅を告げた俺にアズサ母が年越し蕎麦を薦めてくれたので言葉に甘え、

「拒否、したいの?」

「いや滅相もございませんよ!」

「じゃあ決まりね」

 今に至る。

 変化の種がどこから撒かれていたのか、なんてもう全く分からない。

「じゃあ五分くらいで支度してくれる?」

「ここアズサの部屋! 俺の服なんてある訳が無い!」

「……私の服、来たいの?」

「違う! って言うか、アズサの家に来ている時点で支度なんて整いまくってる!」

「え、その格好で?」

「地味に傷付く冗談はやめてくれないかな!」

「え、冗談じゃないけど」

「そんな笑顔で言ってるのに!?」

 既に他人の家に来ているのに、更に支度しろとはどういう事なのだろう!

 でもまぁ、俺がアズサと初日の出を見れるんだったらもうそれで良いや!

 深い事を考えたりするまでもなく、さぁ行こういざ行こうレッツらゴー!

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