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520000分

「初日の出を見に行かないか?」

 12月31日、14時13分。

 つまり、大晦日。

 そんな日にこんな俺の言葉を聞いて、俺の目の前に居る少女は、露骨に嫌そうな表情を浮かべた。

 見ているこっちが不安になってくる程にまっ白い素肌。

 もう何年間も切られずに放置されているまっ黒い長髪。

 その辺の小枝よりも脆そうに見えてくるまっ白い四肢。

 そんな少女を包み込むブカブカサイズのまっ黒いYシャツ。

 少女の細く白い足を床の冷たさから守るまっ白い靴下。

 一般にジト目と呼ばれる形に細められたまっ黒い両目。

 そんな風貌の少女――アズサは、露骨に嫌そうな表情を浮かべていた。

 そしてその表情のまま、かしょん、と缶ジュースのプルトップを上げ。

 そしてその表情のまま、くいっ、と缶ジュースを傾けて中身を飲んで。

「その台詞、去年も聞いたんだけど」

 去年の今頃よりも更に無気力な眼差しで俺を拒絶した。

 拒絶後、アズサはすぐに視線を手元に落とし、ノートにペンを走らせる。

「それより、そんな事言っていられる余裕あるの?」

「え、何の事?」

「とぼけても現実は変わらないんだけど?」

「エ、ナンノコト?」

「さっきよりも露骨に声が震えてるじゃない」

 ……去年の今頃、確かに俺はアズサを初日の出に誘っていた。

 で、アメリカンドッグを召喚する事で連れ出しには成功した。

 そしてなんやかんやあった末に、俺はキーホルダーを渡した。

 アズサの十七歳の誕生日を記念する誕生日プレゼントとして。

 さぁて。ここで問題だ!

 アズサの誕生日――1月1日から、364日が経過した今日。

 高校二年生の冬休みから520000分近くが経過した今日。

「まだ大学が決まっていなくて、今はその勉強中だって言うのに、初日の出に行ってる余裕あるの?」

 僕たちは、どんなシーズンの中で生きているでしょうか!?

 ……はぁ。

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