表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

その事を。

「っと、すっかり忘れてた」

 早朝。

 カンカンに怒った親からの電話で帰宅を促された俺は、アズサと共に帰途についていた。

 その途中。

「ほい」

 と、俺はポケットからキーホルダーを取り出してアズサに手渡した。

「……鏡餅?」

 三段鏡餅の上に、小さい蜜柑。

 そんなビジュアルの正月っぽいデザインのキーホルダーを、アズサに手渡していた。

「あぁ。今日、アズサの誕生日だろ? だからプレゼントに、さ」

 元々は、これを渡す使命のためにアズサを連れ出していたんだった。

 それなのに、すっかり舞いあがっていたせいで忘れてしまっていた。

 俺は馬鹿か?

 俺は馬鹿か。

 そうだった。さっきまでの話で分かったんじゃないか。俺は馬鹿だって。

「ハッピーニューイヤーにハッピーバースデーとは、縁起が良いんじゃね?」

「プレゼントよりお年玉が欲しい、かも」

「ひでぇ!」

 たしかに、プレゼントのセンスには自信がないけども!

 いやまぁ、プレゼントのセンスの無さには自身があるけども!

「冗談だって。涙目にならなくて良いから」

 と、声に若干の笑みを滲ませながらアズサは俺の横に並んで。

 ちゅっ。

 と。

「え?」

「じゃ、さっさと帰って親に言い訳しなよー?」

 アズサはくるくる回りながら俺の前に踊り出て。

「じゃーまた来世ー!」

 笑顔で、そう言って。

「いや今世で会わねぇの!?」

 俺のツッコミを無視しつつ、たたたっ、とアズサ家の方へ走っていった。

「……」

 それを見届けて、俺はぼーっと立ち尽くしていた。

 そして、思い出す。

 今の、去り際の笑顔が。

 さっき俺達を照らしていた初日の出よりも眩しかった。

 その事を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ