第23話 ヴァラシルヴィド 4
更新遅くなりました。
ヴァラシルヴィドの森で出会った男達の話です。
振り返ると、自分の喉の方向に剣先を向けて、数人の男が立っていた。
後ろに見える兵士が弓を構え、今にも手を離しそうな顔つきで、矢の先をそこに居る全員に向けて威嚇するのであった。
「団長っ!」
咄嗟にゼロスが動こうとするが、フレイヤがそれを手を広げて制した。
ここで争うのがどれ程危険か考えての行動だった。
「シッ!」……。
すると、一番先頭に立っている騎士が口に指を当てて、フレイヤ達を見回した。
そして、ゆっくりと森の開けた先に指を一回向けて、またフレイヤを指差したのである。
騒がず、森の先を見ろと言ってるのであった。
そこには、ルナヴァナルが居るのであった。
自分達の気配を感じたのか、当たりを見回してうろうろと歩いて匂いを嗅いだりしているのである。
そして、そのまま動かないで居てくれと言ってるようであった。
「判った」
フレイヤは、短くその男に頷いた。
「いきなりすまなかった。騒がれるとアイツの傍なので命に関わるから、咄嗟にこれしか出来なかった非礼を許して欲しい」
男は、少し頭を下げて剣を降ろした。
「私は、ヴァロミクのフェルニルと言う物だ。そなたらを先ほどから見ていたが。お見受けした所そのエンブレムは、ブレイヴァルの王国騎士団の聖騎士様とお見受けしたが、それに相違ないか?」
男は、そう言ってフレイヤとゼロスの前に進み出てきた。
「フェルニル……?」――その言葉に、フレイヤは何か知ってる事があるような気がして、その名を繰り返した。
「いかにもそうだが。もしそうだとしたら、どうだと言うのか?」
しかし、ゼロスはその男の言葉がいきなり問い正すような内容だった為、男の言葉に疑問を投げかけた。
「もしそうで有るなら、私の頼みを聞いて欲しいと考えたのだが……」
フェルニルと名乗った男は切羽詰ってような感じで、ゼロスに答えたのである。
「頼み?」
ゼロスや、アグニたちはフェルニルの言葉に一瞬険しい表情になって顔を見合わせた。
すると、そこでゼロスが何かを思い出して、声を上げるのであった。
「フェルニルとは、確かヴァロミクの王子様の名前と聞いていますが、間違いは有りませんでしょうか?」
「王子様?」
その言葉に、ゼロスとアグニが反応してフェルニルの姿を見る。
確かに、そのフェルニルの鎧は王家のエンブレムが入り、他の兵士よりも強固なつくりになっているようであったが、かなりの汚れた装備であったのだ。
もしそうだとしても俄かに信じがたかった。
「いかにも、私はヴァロミクの第1王子、フェルニル・ド・ヴァロミクに間違いありません」
フレイヤの言葉に、フェルニルが精悍な顔を皆に見せるのであった。
その男は、名乗った通りヴァロミクの第一王子だったのである。
フレイヤは、このヴァロミクの地に足を踏み入れたことは無かったが、祭事を司るこの国に勇猛な若い王子が居ると、クルーガーには聞かされた事が有ったのである。
その為、名前を聞いた時に少し考えたのであるが、見た目にはそれを王子とはどうにも考えつきもしなかったのである。如何せん使い込まれた鎧には土や血の汚れ等がついて色が見分けがつかず、それでは王子だと言われても何人がそれを信用出来るか疑問だったのでつい。
「しかし、そのフェルニル王子が何を、私達に頼みが有ると言うのでしょうか?」
すると、フェルニルはそう聞かれ、すかさずフレイヤ達を見回して言うのであった。
「私達と一緒に、あそこに見える『ルナヴァナル』と戦って欲しいのです!」
フェルニルはそう言うと、森の中に歩き回る『ルナヴァナル』を一瞬見て、また視線をフレイヤ達に戻すのであった……。
最後まで読んで頂き、有難う御座いました。
次は、いよいよ対決になる予定です。




