【花言葉】 「姫林檎 ~選ばれた恋~」
あなただから、私は恋に落ちたんです。
星の数程人が存在するこの世界で、
巡り合い、惹かれ合ったのは、きっとあなたと私だったから。
姫林檎
~選ばれた恋~
船が波に揺られてゆらゆらと揺れる。
出航する頃にはじりじりと照りつけていた太陽は今はすっかり水平線の下へと隠れ、眼前にはどこまでも続くと錯覚させられるような黒い海が広がっていた。
「本当に良かったの?」
「え?」
唐突に切り出された問いに首を傾げた。
「急にどうしたんです?」
「いや、ね…」
そこで一旦言葉が切れる。
「君にまでこんな決断をさせてしまって、少し不安になったんだ。」
いつもとは違って、自信無さ気に彼が苦笑する。
「俺を好きだと言ってくれたこと。
一緒に付いてきてくれたこと。
すごく嬉しいよ。
でも、君も大切なものを置いてこなくてはならなくなった。」
見知らぬ土地へ行くことに、決して不安がないわけじゃなかった。
大切な人たちを置いていくことに、ためらいがなかったわけじゃなかった。
それでも、私が決断できたのは―――
「本当に、俺で良かったの?」
「当たり前じゃないですか。…ううん。あなたじゃなきゃ、駄目なんです。」
―――あなただったから、なんですよ?
あなたじゃなければ、駄目だった。
あなただったから、私は恋に落ちたんです。
星の数程人が存在するこの世界で、
巡り合い惹かれ合ったのは、きっとあなたと私だったから。
いくつもの運命から選ばれた恋だから。
「巡り合えて、本当に良かった。
あなたとなら、どこへだって付いていきます。」
「どうして、君は…」
頬に添えられた手が、冷たい。
「俺の欲しい言葉ばかりくれるんだろうね。」
そっと額に落とされた口付けに、顔が火照ったのが分かった。
「ふふ、可愛い。」
「~っ、じゃあ逆に聞きますけど…っ」
「ん?」
「…私なんかで良かったんですか?」
恥ずかしくて、
目を合わせていられなくて、
視線を逸らして逆に聞き返す。
くすりと微笑するのが聞こえて、
次いで感じた唇の温もりにますます顔が火照るのを感じた。
「<なんか>、じゃない。君<だから>、好きになったんだ。」
…終。
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以前、二次創作をしていたのですが。
(サイト消していないからいちお現在進行系ですが…)
その時に書いたお話を書き直してみました。
キミ「なんか」じゃない「だから」というフレーズを入れたくて
このお花?にしたような気がします。
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