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●住民登録(1)

時系列的には「ほうき星町にようこそ」のすぐ後、いよいよ月読がこの町に住むことを本決めしたときのおはなしです。

あまり長くありません。さくっと住民登録するだけの話です。ほとんどサブ的な。

「あー、月読、今日町役場行くから」出しぬけにセリゼが言う。

「こないだ言ってたよね、副局長さんと」

「あら、いよいよ本決定ですか? この町に滞在するのを」

「ええ、腰を落ち着けようかと。大家さんのお許しも出たことですし」

あれからすぐにフレアに次第を告げたら、即座にOKが出たところである。

「へぇ!」

月読の言葉に驚くセリゼだった。

「ボヘミアンがそれを言うかね!」

「心境の変化、ってやつです。おかげさまで居心地がいいもので」

「お上手は必要ないですよ」

「正直に述べたまでのことです」

それを聞いて、フレアは微笑んだ。


 そんなほうき星町の朝であった。白夜の地域に近い地域のこの朝は透き通っていて、手を伸ばせばエーテルに触れることが出来そうなほどである。大地から湧き出る、大気に浸透する魔力の質は清らかで、月読ならずとも魔術師ならば快適極まりない、といったところだ。それは魔力を「エネルギー」としてではなく「何とはなしの感じ」としか感じることの出来ない一般人でも、その清冽さを感じることが出来る。


窓を開けて、透明な朝の光を部屋に取り入れている。イーシィ湖からやってくる清らかな空気が部屋を回る。


そんなところで平然と生活しているセリゼはやはり破格の吸血鬼であった。こんなところに生身をさらすことなど出来やしない。吸血鬼とはそういうものだ。


それなのに、「ああ、いい気持ちだなぁ」と朝を満喫しているセリゼである。異形。けれど彼女は今となってはそれを楽しんでいる。新鮮な空気を吸い、日の光の下生きる住人。


――月読は自分を「月読という種族」、って言ったけど、私も同じようなもんなのかな。


軽く自嘲する。けど、すぐに頭の片隅に追いやる。あまり楽しい考えではないから。


「とりあえず、住民票取るために行くから。大丈夫、素直に従ってればめんどくさくはない」

「僕は何だと思われてるのか」

「化物魔術師」

「あはは、言われちゃいましたね」フレアが笑う。

「人のこと言えた義理?」月読が返答する。

「人のことだし」

「くっそぉこれだから貴族は」


なんて言葉のじゃれ合いをする。楽しい、とセリゼは思う。こんなダラダラしたやりとりをず~っと続けていけたらいいなぁ、と思う。願う。


「ところでキギフィは?」

「深酒して寝てます」

「あの呑んだくれは……」

「二日酔いがひどいんじゃないの?」

「うんにゃ、あいつの場合は大丈夫。前やってた仕事で、身体がやたらと丈夫というか。毒に対する抗体も打ちこまれてるしね。だから酒にも一向に平気」

「……前やってた仕事って何なのさ。何か剣呑な雰囲気があるけど」

「追々話してくれるんじゃない? 月読相手だったら隠すこともないでしょ」

 セリゼは言う。そこらの人に話す類のことではないが、月読ならば大丈夫だ、という信頼がある。

「昼前あたりがいいかな、人少ないだろうし」

「僕の預かり知らないところで僕の予定が決まっていくね」

「どーせ暇でしょ? だったら付き合いなさいな。それに、面倒なことはさっさと済ませた方が吉」

「ま、それは言えてる」


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