金魚
テーマとタイトルを決めて15分で書く企画です。
テーマ:恋愛と入れ墨
タイトル:自由
『黒い金魚は魔を掃う』
それを信じて私は黒い金魚の入れ墨を入れた。
その結果がこれ。
「すみません、他に好きな人ができました」
この人生で一体、何回の別れを繰り返したんだろう。
あの迷信が正しいのなら、きっと彼らは私には釣り合わない男だったんだ。
私はそう言い聞かせながら次の男を探す。
「その金魚、綺麗ですね」
勤め先でそう声を掛けられた。肩のすぐ下に入っているから普段は見えないけど……袖を捲ってしまったのが悪かった。
「でも先生、1匹だけでは可哀想です」
その子は物悲しげにそう言った。
確かに、そうかもしれない。
私は休みの日に対の金魚を入れることにした。
「可愛い……」
鮮やかな赤の金魚。
『赤の金魚は幸を呼び込む』
私に足りなかったものはこれなのかもしれない。
2日後、出勤するとまたあの子に声を掛けられた。
「先生。また金魚、見せてください」
知られてしまったのは私の落ち度。とはいえ、生徒に入れ墨なんてあえて見せるものじゃないだろう。
私が逡巡していると、彼女の方が先に腕を捲った。
「じゃあ先生、私の方を先に見てくれませんか」
その子の腕に入っていたのは赤と黒の美しい金魚の入れ墨。
「あなた――」
「あ、もちろんシールですよ。校則違反をしてしまってすみません。でも、私だけ先生の秘密を知ってしまったのは不公平だなって」
声を出せないでいる私に、彼女がすっと近づく。
人気のない廊下、私の袖がゆっくりと捲られていく。
「先生のも対になってる……お揃いですね」
そう言って彼女は妖しく笑った。




