れもん
テーマとタイトルを決めて15分で書く企画です。
テーマ:幼い女の子の秘密
タイトル:れもん
私、葵。
今日はね、翠ちゃんのお家でれもんケーキを作ることになったの。
きっかけは幼稚園で翠ちゃんに誘われたことだった。
「あんたってビンボーだからケーキたべたことないんでしょ。わたしがたべさせてあげる」
翠ちゃんはいつもみんなの中心で、きらきらしている。その金色の綺麗な髪はみんなの憧れだった。
そんな子が、わたしを遊びに誘ってくれるなんて思わなかった。
私はビンボーだから、背も小さいし、ドジだし、可愛くないから。いつも1人で遊んでた。
突然のことに驚いて声が出ない。
「あんた、うちにきなさい」
今日は10月28日。ハロウィンのサプライズパーティを準備しなきゃいけないんだって。私は誘わないから、準備を手伝わせるんだって聞いた。
でも、それでも、私は嬉しかった。
翠ちゃんのお家にはいっぱいお手伝いさんがいて、私たちはそのお手伝いをすることになった。
包丁は危ないから、クリームや果物をケーキに乗せたり、味見をするのが私たちの仕事。
「わたし、カボチャきらい。あんたがたべなさい。わたしはれもんのケーキたべるから」
高飛車な態度をとる翠ちゃんがなんだかとても愛おしく思えて、私は翠ちゃんの唇を奪った。
初めてのキスはれもんの味だった。
――――――――――
そう、あれは幼いゆえの過ち。でも、私はひと時もあの甘美な瞬間を忘れない。
10月は檸檬の季節。私たちは今は中学生になっていた。
今年の春、翠ちゃんのお父さんの会社が倒産して、彼女はビンボーになった。
私の気持ちはまだ秘密。でも、いつか……。




