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溶ける前に

作者: コーコ
掲載日:2026/06/17

最近ショートストーリーを描き始めました。


ぜひ読んでいってくれると嬉しいです!

 春風が気持ちいい四月。

 コンビニでアイスを買って食べ歩いていた帰り道、一通の通知音が鳴った。

 

 「ピロンッ」

 メッセージを開くと数日前に面接へ行った会社からだった。

 俺は慌てて採用結果を見た。

 

 結果は不採用。


 「はぁ~……」

 俺は深いため息をつき空を見上げた。

 これで何度目だろうか?もう、不採用の結果を見るのにも慣れてしまった。

 

 内心きっと今回も不採用だとは思ってはいた。

 面接のときも緊張しまくりで頭が真っ白になり、うまく受け答えができなかった。

 そろそろ慣れてもいいとは思うが面接だけは一向になれる気配がない。


 特に面接時の面接官が真っ直ぐに見る眼差しだ。あの目で質問されると、喉の奥が急に狭くなる。

 用意していた言葉も、そこで全部つっかえて、それで余計に焦ってしまう。


 こんなことで、つまずいてしまう自分が嫌いだ。

 

 無意識に握りこんだコンビニ袋が、カサッと小さく鳴った。

 

 「ヤバい!頼まれてたアイス解ける!」

 お母さんに頼まれていたアイスを思い出し、俺はコンビニ袋を握りしめ、さっさと家に帰った。


 ガチャ。

 

 「ただいまー」

 

 「おかえりー」


 家に着くと、リビングから母さんの声が聞こえた。


 「アイス買ってきたよ」


 「ありがと~」

 

 俺はアイスを渡すついでに、さっきの採用結果を伝えた。


 「さっき、こないだ面接受けた会社から採用結果が来て、『不採用』でした。」


 「そっか~……残念だったね。次、また頑張れば良いよ。チャンスは何回もあるんだしさ。」

 お母さんは、困ったように笑って励ましてくれた。けど、その言葉の後、お母さんの視線は少しだけ逸らされていた。


 俺はその視線を気づかないふりをした。

 

 「うん……」

 俺にとって、『次』という言葉は苦痛だ。『次』が来るたびにまたあの面接が待っていると想像すると胃が痛くなってくる。


 「ありがとう」

 そう言って、俺は自分の2階の部屋へと向かった。


 「はぁ~」

 部屋に着くと、これで本日三度目のため息だ。

 もう何もやる気が出ない。せっかく買ったお昼も食べる気が失せてしまった。

 

 どうしよ~。

 正直、面接はもうやりたくない。

 かと言って、やりたいことがあるのかと言われたら『ない』。


 「これ以上考えるのやめよ」

 俺は思考を放棄し、目を閉じた。






 「うぅん~…… あれ、いつの間に寝ちゃってたのか」

 


 目を覚ますといつの間にか外は夕暮れに染まっていた。


 「グゥ~……」

 「あ、そういえば昼食べずに寝ちゃったのか。はらへったなぁ~」


 しばらくボーっとしていると、下の階から夕ご飯ができたというお母さんのこえがきこえた。

 「○○~!ご飯できたよ~!」


 「はーい、今行くー」

 と、俺は返事をし夕飯の匂いがするリビングへと向かった。



 

 「ごちそうさまでした。」

 ご飯を食べ終え、リビングのソファーでスマホをいじり少し休憩をしていると。

 

 「そろそろ、お風呂入ってきなさーい」

 と、お母さんに言われた。


 俺は素直に「はーい」と返事をし風呂場へと向かった。




 チャポンッ~。


 「ふぅー……」

 俺は湯船につかり、採用結果を思い出していた。


 やっぱり、明確な意思もなく、人見知りで目も合わせられないようなやつは無理よなー。

 あそこで働いている人たちはきっと、俺よりもやりたいことがハッキリしていてその会社へ就職するために頑張ってきたんだろうなー。


 ふと、高校生の時の思い出が頭をよぎった。

 高校3年生の進路のとき、担任から「進路どうすんの?もう決まってないのお前ぐらいだぞ。」

 と言われた。

 逆にどうしたらそんなやりたい事を見つけることができるんだろうと、少し不思議に思っていた。

 友達やクラスメイトもすでにやりたい事が決まっていて進路へと取り組んでいた。

 

 俺はやりたい事も、したい仕事もない。

 そんな長生きしたいとも思はない。別に今すぐ死にたいわけではない。

 せいぜい半分、50歳生きてれば十分と思うくらいには『積極的に生きたい理由がない』。

 きっと、やりたいことがある人は長くいきたいとも思えるんだろう。


 そんなことを思いながら揺れる湯船を見ていた。


 「よし!そろそろ上がるか」


 ジャパッ。

 

 体が温まったところで、俺は湯船から上がった。


 



 お風呂から上がった後、俺は無性に冷たいものが食べたくなり、家の冷蔵庫を見たが何もなく。

 近所のコンビニのアイスを買いへ行くことにした。


 玄関で出る準備をしていると。

 「どこに行くの?」とお母さんから声をかけられた。


 「ちょっと、コンビニに行ってくるー」と返事をし、家を後にした。


 

 4月といっても、まだ夜は肌寒いな~。なんて思いながら、コンビニへ向かった。


 夜なのもあって、昼間とはまた違うコンビニからの光が漏れ出ている。

 でも、どこかその光は俺に息を吐く余裕を教えてくれた気がした。


 コンビニに着くと、目当てのアイスを見つけ、ついでにお菓子とジュースも買ってレジへと並んだ。

 

 会計のとき、「それ、新作ですよね~」

 とたまに見る店員さんがレジを打ちながら笑って言った。


 「今日、これ買う人多いんですよ」


 「へぇ」

 

 それだけだった。

 特にこれといった特別な会話ではなかった。

 でも、自分が“その他大勢”の中に入れてもらえた気がした。


 コンビニから出て、歩きながら食べてると。

 

 ポタッ。


 アイスが少し溶けて手についた。

 

 俺はそれを見て、「放っておくと、なんでも少しずつアイスみたいに形がなくなっていくのかな」って思った。

 

 

 就活も、人間関係も。

 


 指についたアイスは、もう形すら失いかけていた。


 それでも、冷たさだけはまだ残っていた。

 

 

 別に特別な一日じゃなくたって良い。

 

 さっきの店員との会話を思い出す。

 

 今日はまだ、誰とも話していない一日じゃなかった。

 

 

 俺は溶けかけたアイスを一口かじった。

 

 今日も俺は『まだ少しだけ生きる側にいる』

最後まで読んでいただきありがとうございました!


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