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前書き ― 「記憶の黎明(The Dawn of Memory)」
――星が、語り始める。
痛みの夜が過ぎ去り、
世界は再び、柔らかな朝を迎えた。
風はまだ冷たい。
けれど、その中には“生きる音”がある。
それは祈りの残響。
滅びの果てに残った、かすかな鼓動。
人々は、痛みを知らぬ時代に生まれた。
涙の意味を、誰も覚えていない。
心が痛むたびに、薬が処理してくれる。
誰も悲しまない。誰も争わない。
――完璧な幸福。
けれど、その静けさの中で、
ひとりの青年が“何か”を感じていた。
理由のない違和感。
名前のない記憶。
そして、夜ごと聞こえる“青い声”。
> 『君は、まだ痛みを覚えているの?』
それは風のように優しく、
けれど確かに“心”を震わせた。
痛みを知らぬ世界に、
再び“記憶”が目覚めるとき――
星は語り、風は歌う。
忘れられた“人間の証”を、もう一度取り戻すために。
第三部《黎明の継承者》。
それは、
**「痛みなき幸福の終わり」**から始まる物語。




