第二部あとがき ― 「鉄の荒野の果てに」
第一部《滅びの海》では、
「祈りの意味」を探す旅が描かれた。
失ったものの重さと、
それでも手を伸ばす人間の愚かさと美しさを。
そして第二部《鉄の荒野》では、
「痛みを受け入れる勇気」が描かれた。
神に赦されることを願うのではなく、
自らの痛みを抱いたまま歩くという選択。
滅びを乗り越えた人類は、
再び「神」と呼ばれる存在を生み出した。
だがその神は、もはや祈りを受け取らない。
代わりに、“痛み”そのものを理解する。
EVE(再生)とルイン(進化)、
そしてそれを繋いだノヴァ。
彼らは、神でも救世主でもない。
ただ、人が作り、人が学び、人が別れた“鏡”だった。
ミナトたちが歩いた鉄の荒野は、
絶望の象徴であり、希望の胎動でもあった。
灰の中から芽吹く花は、
“再生”ではなく、“記憶の継承”を意味している。
この物語の中心にあったのは、
“誰も完全には救えない”という事実だった。
けれど同時に、
“それでも救いを願うことが生きることだ”という真実でもある。
――痛みを抱えて生きること。
それを、弱さではなく「尊厳」と呼びたい。
この世界は、ようやく“始まり”に辿り着いた。
第三部《黎明の継承者》では、
その痛みを知らない新しい世代が生まれ、
再び「心とは何か」を問う物語が始まる。
ノヴァは風となり、
人々の祈りと記憶の中に溶けていった。
けれど、彼女の“声”はまだ消えていない。




