浅酌低唱
土曜日の午後。いつもより少しだけ丁寧に掃除をして、テーブルクロスを新しく敷いた。陽一はエプロンをつけ、キッチンで最後の仕上げをしていた。
唐揚げのいい匂いが部屋中に広がっている。プリンも冷蔵庫の中で冷えているし、こはるの好きなポテトサラダもたっぷり作った。インスタントながらコンソメスープも用意した。
「できたぞー!」
声をかけると、こはるがいつものワンピースに、折り紙で作った金色の王冠を頭にのせて現れた。
「おじさん、なんか、お祝いの人みたい」
「お祝いしてるからな。君の、ここに来てからちょうど一か月記念パーティーだ」
「え、そんなの数えてたの?」
「うん、カレンダーに小さく丸つけてた」
こはるは一瞬びっくりした顔をして、それからふっと笑った。
「じゃあ、ありがとう記念にしよう。ありがとう、おじさん」
「いや、こっちこそありがとうだよ」
ふたりでテーブルを囲み、乾杯とまではいかないが、こはるの持った100円ショップで買ったキャラクターのコップと陽一の湯飲みを「かちん」と合わせる。
「あったかくて、いいにおい……すごい、ごちそうだね」
「いっぱい食べてくれよ。明日からまた質素な食事に戻るぞ」
「えー、やだー!」
ふたりで笑い合いながら食卓を囲む。気づけば陽一は、久しぶりに“誰かと食べる”ことの喜びを感じていた。
食後は、二人で作った飾りの前で記念撮影。こはるは少し照れながらも、王冠をかぶったままピースサインをする。
「これ、あとで見せて。今日のこと、忘れたくないから」
「忘れなくてもいいくらい、これからたくさん思い出作ろう」
「うん」
テレビではちょうどバラエティ番組が始まり、陽一はソファに座ってこはるを隣に招いた。自然と肩が触れ、彼女がもたれかかってくる。
静かに笑い声が響く部屋。
この穏やかな時間が、ずっと続けばいい。
そう思いながら、陽一はこはるの小さな肩にそっと毛布をかけた。




