胸中成竹
土曜日のパーティーに向けて、陽一は少しずつ準備を始めていた。
買い出しリストをスマホにメモし、スーパーのチラシを確認する。たいした料理を作るわけじゃないが、こはるの好きなものはなるべく用意してあげたいと思った。
「唐揚げに、ポテトサラダ……プリンも忘れないように」
冷蔵庫を確認しながらつぶやくと、いつの間にかこはるが隣に立っていた。
「ふふ、おじさん、にやにやしてるよ」
「してないって」
「楽しみなんでしょ、ぱーてぃー」
「まあな。久しぶりだからな、誰かと一緒に“準備する”ってのも」
こはるはくすっと笑って、買い物袋の中を覗き込む。
「プリン、いっぱい買ってきてね。三つは食べたいな」
「三つ!? 一人で? それ、パーティーじゃなくてプリン大会だな」
「ぷりん大会! いいね、それ!」
ふたりで笑い合う瞬間に、ほんのわずかだけ、時間が緩やかに流れていく。
こはるは相変わらず外に出ようとしない。それは彼女なりのルールなのだろう。だが、彼女がいるだけで、陽一の家はどこか温かく感じられた。
翌日、パーティーに使う飾りつけをこはると一緒に作ることにした。陽一が昔使っていた色画用紙やマスキングテープを机に広げると、こはるの目が輝く。
「これ、なにつくるの?」
「ガーランドってやつだ。こうやって紙を切って、ひもに通して……壁に飾ると楽しいぞ」
「わー、すごい! やってみたい!」
ふたりで並んでハサミを持ち、三角形やハートの形を切り出していく。マスキングテープで模様をつけたり、こはるが好きなキャラクターを描き加えたりして、部屋の雰囲気が少しずつ変わっていく。
こはるがふと、静かな声で言った。
「こんなの、したことないや。お祝いとか、たのしいこと」
陽一は手を止めて、彼女の顔を見た。
「これからいっぱいやろうな」
「……うん!」
こはるの頬が、ほのかに赤く染まっていた。
たったふたりの、ささやかなパーティー。でも、それは何よりもあたたかく、どこか特別な準備だった。




