表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/30

移木之信

日曜日の午後。仕事の疲れも少し残る中、陽一は近所のスーパーへ食材の買い出しに出かけていた。


こはるはいつものように家に残っていた。外に出たがらない……いや、出られないこはるのことを思うと、陽一の胸に少しの切なさが宿る。


スーパーからの帰り道、子供たちの笑い声が聞こえてきた。商店街の一角で、風船を配るイベントが開かれているようだ。陽一は少し立ち止まり、その光景を見つめる。


――自分にも、あんな風に無邪気に笑う子供たちがいた。


そして、こはるもあの中にいたら、どんな顔をするだろう。そう思うと、胸が少しだけ締めつけられた。


帰宅して玄関を開けると、こはるはリビングの座椅子にちょこんと座り、くまりんを抱えていた。テレビではアニメの再放送が流れている。


「おかえりー」


「ただいま。お利口にしてたか?」


「うん、ちゃんと待ってたよ」


買ってきた食材をキッチンに置き、陽一は冷たい麦茶を注いで一息つく。こはるがくまりんをぎゅっと抱きしめながら、ぽつりと呟いた。


「おじさん、明日もお仕事?」


「ああ。月曜だからな。でも、夜には帰ってくるよ」


「そっか……」


いつもと変わらない会話だったが、今日は少しだけ、こはるの声が寂しそうに聞こえた。


陽一はふと立ち上がり、テレビを消してこはるの正面に座る。


「なあ、こはる」


「うん?」


「来週の土曜日、ちょっとしたパーティーでもしようか。いつもお留守番ばっかりさせて悪いし」


「ぱーてぃー?」


「うん。特別なご飯を作って、ゲームして、君の好きなお菓子も用意して。僕とこはるの、小さなパーティー」


こはるの目がぱっと輝いた。


「やるやる! おじさん、約束だからね!」


「もちろん」


ピンク色のワンピースを揺らして、こはるは嬉しそうに飛び跳ねた。その笑顔を見て、陽一は改めて思う。


――たとえ、彼女がどんな存在であったとしても。この子の笑顔を守りたい。


小さな約束。それは、普通の幸せを願うふたりにとって、大切な儀式だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ