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第6話 待ち伏せ

翌日、日曜日。

昨日と同様に学園ダンジョンに向かい、地下3階の分岐から死者の墳墓ダンジョンへ向かう。昨日はアクシデント(ラッキースケベの方じゃないぞ!?)があって、全然戦えなかったからなぁ。今日は昨日の分まで頑張らないと。と思いながら死者の墳墓の入り口を通ろうとすると、そこに見知った顔がいた。


「よう、アキラ。昨日は私をオカズにいっぱいしたのか?」


―――ブフォッ!


思わず噴き出してしまった僕。この人は人通りがあるところでいきなり何て事を言い出すんだ。


「そ、そんな事する訳ないじゃ…ない…デスカ…。」


にっこりと笑うレイラの顔を段々と見続ける事が出来なくなって、最終的には思わず視線を外してしまった僕だった。いや、やましい事がある訳じゃないよ?陰キャが美少女と目を見て話すとか無理過ぎるだけだからね!


「はっはっは、別に誤魔化さなくていいぞ。健全な青少年なんだから、むしろそれが普通だろ?ましてや私みたいな美人だったら余計にな。」


ばんばんと僕の背中を叩きながら、心底愉快そうに笑う。ちょっと叩くの強すぎん?地味に痛いんだけど。


「痛い、痛いよ。でもそういう風にみられるの嫌じゃないの?いや、別に僕はそんな事してないからね?ウン、ゼッタイニシテナイ。」


「あー、そうだなぁ。相手にるともいえるけど、こんな鎧着ている以上、そういう目で見られるのはある程度覚悟してるよ。それにアキラだったら、別にそういう目で見られても嫌じゃない。」


え、それどういう事?と思って振り向いたけど、口には出せなかった。そして視線はレイラの顔を見ているつもりでも油断するとその無防備な胸元に引き寄せられそうになる。でもそんなのも全部レイラにはお見通しのようで、


「あっはっは。アキラは正直だな。まぁ、考えてもみなよ。いかに命の恩人とはいえ、本当に嫌だと思ったら、もう一回くらいなら見せてもいいぞなんて自分から言わないからな。もちろん昨日の出来事に対する感謝の念から来ている事は否定しないが、アキラに対して私は少なくともある程度の好意を持っているって事を見せているつもりだけど、分かってもらえているかな?それとも私は誰にでもそういう事を言うような女に見えるか?まぁ、こんな鎧を着ているからそう思われても仕方ないかもしれないけどな。」


レイラはその男を魅了してやまない防具――胸当てを軽くつまんでみせた。

それに対して僕は、ぶんぶんぶん、と勢いよく首を左右に振った。


「そうか、なら良かった。アキラにそう思われるのはちょっと寂しいからな。

しかし、男どもはこんな脂肪の塊のどこがいいのかねぇ。」


と、むにむにと自分の胸のあたりの柔らかい部分をつまんでいる。それまではなるべくそちらを見ないように耐えていた僕の眼球もとうとう耐え切れず、僕の視線はそれに釘付けになってしまった。それに気付いたレイラは意地悪な笑いを浮かべて僕を見ながら、僕に見せつけるように更にむにむにと揉んで見せた。


それにはっと気付いた僕はバツが悪そうにそこから視線を外した。


「ん、なんだ。もういいのか?別にもっと見ても良いんだぞ?別に減るもんじゃないしな。」


それが減るなんてとんでもない!と僕は思ってしまったが、もちろん口には出さない。視線を外したまま、僕はレイラに話しかけた。


「で、今日はどうしたの?僕をからかうためにここで待っていたの?」


「ん?ああ、まぁそれが主目的でも良かったが、ちゃんと用件はあるぞ。ほら。」


と中からジャラっという音がした小さな布袋を渡された。それを受け取って中身を見ると白い魔石が十個くらい入っている。これは何?とばかりにレイラを見る。


「昨日、お前が気を失っている間に周囲に落ちていたスケルトンの魔石を回収していたんだよ。で、そのうちの半分。本来なら命を救ってもらったんだし、全部渡すべきだとは思ったんだけど、私も結構な金欠だから半分は売らせてもらった。それにアキラは全部だと受け取ってくれなそうだしな。半分だけで済まないがこれを受け取ってくれないか?」


少し考えた後に僕は受け取る事にした。受け取らないと言っても彼女も多分引いてくれないだろうから。それなら感謝しつつもらう事にしよう。

レイラはそれを受け取った僕をみると、僕の心の動きも全部読んだのか、満点の笑顔で


「アキラ、昨日は本当にありがとうな。昨日別れた後、そういえば連絡先とか聞いてないって気付いて、アキラが学園の寮暮らしかどうかすら分からなかったから、この死者の墳墓前で待ってたらまた会えるかなって思ってこうして待っていたんだ。待ち伏せしているみたいな形になって悪かった。じゃあ、またな。」


と言って死者の墳墓ダンジョンの中に入っていこうとするレイラ。その腰に差した剣は昨日と同様にまたもや薄っすらと発光している。


「ちょ、ちょっと待ってよ、レイラ。なんでまた死者の墳墓に入っていこうとするの?剣士が不向きなのは分かったんでしょ?」


「ん、まぁそうだな。とはいえど、先程手渡したのと同数の魔石を今朝換金したが、その金額は悪くなかった。それと対人に近い戦闘訓練を積めるのも事実だったからな。昨日のような無様な戦いにならない方法も考えた。荒稼ぎは出来なくてもなんとかなるのではないかと思っている。」


「どうにかならなかったら、どうするのさ。」


「む?ならなかった場合は…考えていなかったな。

昨日はスケルトンを捌くためとはいえ、動き過ぎたのが失敗だった。だから移動を最小限にすれば、あんな酷いスケルトンの群れは出来ないはずだ。それでももし出来てしまったら、あれ程のスケルトンの群れをモンスタートレイン(他の人がいるところに逃げて自分の戦闘中モンスターをその他の人になすり付ける事)する訳にもいかぬな。そうすると、他の人の迷惑にならぬように迷宮の奥に群れを引き連れて、そこでひっそりと死ぬしかなさそうだな。なるほど。いや、助かった。心の準備が出来た分、先に聞いておいてよかったな。」


「なるほど。じゃないよ!折角僕が助けた命をレイラは粗末にするつもりなの?」


「そう言われると弱いな。だが、王国騎士を目指す以上、強くなるための効率は必要で、そのためにはある程度のリスクを受け入れざるを得ないだろう?」


「そうかもしれないけど、違うよ!そうじゃないよ。僕を頼ってよ。

『一緒に来て欲しい。私が捌ききれなくなったら昨日みたいにまとめて葬り去ってくれ。』

でいいじゃないか。僕に頼み事をするのが嫌なら、

『一緒に来い。もし私の頼みを聞いてくれないなら、昨日私の裸を《《まじまじ》》と見ていた事をバラす。』

でいいじゃないか!」


するとレイラは僕にそんな事を言われると思っていなかったのか、ちょっとびっくりした目をしていた。少し考えてから、


「そう…なのか?私はアキラを頼っても良かったのか?昨日もお前に迷惑をかけただろう。結局お前は昨日ここで何の鍛錬も出来ずに帰る羽目になったのだろう?」


と上目遣いで言われた。何この破壊力。美少女の上目遣いってとんでもないな!


「もう赤の他人でもないんだし、協力くらいならするよ。というかレイラくらい美人なら、男子に対してなんてお願い事利かせ放題じゃないの?」


まぁ、私くらいの美人になると確かにそうなんだけどぉ…と言いながら髪の先をくるくると所在なさげに弄んでいる。でも薄っすら頬を赤らめながら時折ちらっちらっとこっち見るのかわい過ぎんか!?


「じゃあ…アキラもお願いを聞いてくれるのか?」


「聞くよ。というかさっきから良いって言ってるつもりだけど?」


「そうか。じゃあ、改めて頼もうかな。

…アキラ、お願いします。私を手伝ってください。」


と言って、レイラはそれまでの割と粗野な振る舞いが鳴りを潜めるようなキレイなお辞儀を僕にした。僕は『はい、承りました。』と短く答えた。


「しかし、アキラが私の裸をまじまじと見ていたのは知らなかったな。そう言われてしまうと流石の私も照れてしまうな。」


レイラは自身の顔の赤さを違う理由で誤魔化すように、ぱたぱたと手であおぎながらそう言った。

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