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陰キャ、魔法学園で恋に課金中。このガチャ壊れてませんかね?  作者: 崖淵


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第56話 酔い潰してお持ち帰り

今日はシズカさんとのデート……じゃなくて、闇魔法の研究の日だ。


「アキラ君のところもとうとう団体戦メンバー揃ったんでしょ?よかったわね。」


「ええ、バランスも悪くないので、よかったです。」


「ナタリアさんだっけ?魔法使い同士だから、基本的にダンジョン演習が一緒になることはあまりないのだけど、あの人、面白いわよね。あんなに幼そうな外見で、ちょいちょい隙を見ては強いお酒飲んでるし。」


「いやぁ、それでただの酔っぱらいになられたら困るんですけど。」


「彼女はお酒も強いしそんなことは……ああ、先日のアキラ君との個人戦であったわね。あんな彼女は初めて見たわ。普段はあんなことはないと思うけどね。それに僧侶のアキラ君なら、酩酊という状態異常は回復できるんじゃないの?」


「できるかできないかで言えばできますけど、完全にシャキッとなるかといえば、そうはなりませんよ。一時的に酔いが醒める程度です。元が泥酔状態ならそのうちまた酔っぱらいます。」


「あら、そうなのね。そういえば光魔法と闇魔法って対になってることが多いけど、光魔法で酔いを直せるなら、闇魔法で相手を酔っぱらわせたりできないかしら。」


「……無理な気がしますけど、できたら面白そうですね。ただ酒に強い人には効かない、効きにくいとかいうピーキーな魔法になりそうですけど。」


「フラれた人にしか効かない魔法よりはマシじゃない?」


「…まぁ、そうなんですけど。」


「とりあえず早速やってみましょうよ。ハイ」


と言って胸を張るシズカさん。まぁかける相手が自動的にシズカさんになるのは仕方ないことだけど。そう思いながら、闇の魔力を高めていく。シズカさんをお酒に酔わせるイメージで……ってどんなイメージじゃ!


「ちなみに、シズカさんはお酒強いんですか?」


「えっ、どうだろう。あんまり飲んだことないから。お正月にちょこっと飲んですぐ赤くなっちゃうから、強くはないんじゃないかな?」


「へー、そうなんですね。

よし、じゃあシズカさんが酔う、そんなシチュエーションをイメージするんだ。

いい雰囲気のバーで、僕はシズカさんと二人でお酒を飲みながら、そんな時ふとシズカさんが僕を上目遣いに見ながら『アキラ君、ちょっと酔ってきちゃったかも』って言うんだ。」


「そんなこと絶対に言わないわよ。私はアキラ君の中でどんな女なのよ。」


「違います。ただの童貞の妄想です。

そして僕はそんなシズカさんの肩を抱き寄せるんだ……」


「なんか生々しくていやね。むしろ、そこまでイメージする必要あるのかしら。」


「どうでしょうね。でもここでいい感じに僕の魔法でシズカさんを酔わせたら、僕は貴女をお持ち帰りできちゃうかもしれませんね。」


「えっ、何言ってるの。そんなのダメよ、待って。待ちなさい!」


「ふふ、もう遅いですよ。シズカさん、僕はあなたを酔わせてお持ち帰りする!酔いつぶれて僕に全てを委ねてしまうんだ!」


――|酔い潰す、今夜は君を帰さない《よっぱらえ》!


「キャッ!」





シーン。

目の前にはガードするかのように両手を交差しながら、ぎゅっと目をつぶっているシズカさんがいる。この図、結構かわいいな。でもまぁこれは効いてない。闇魔法が発動した感じもしないし。

すると、シズカさんが恐る恐る目を開ける。


「シズカさん、効いてないですよね?魔法を抵抗レジストされたとかじゃなくて、発動した感じもしないし。」


「……ええ、そうね。でもびっくりしたわ。急にあんなこと言うんだもの。」


「その方がイメージが湧いて発動率上がるかなって。」


「確かにそうかもしれないけど、あれはダメよ。あやうくアキラ君が全女性の敵になるところだったわ。この魔法は危険だから封印しましょう。」


「えええ、どうせ発動しなかったんだし、少し改良してみようとは思いませんか?魔法学の発展のためにも。」


「魔法学の発展……?

いや、ダメダメ。だめよ。アキラ君、魔法学の話にしたら私がなんでもうなずくと思ってるでしょう?」


うん。思ってます。現に今もうなずきそうになったし。


「でも、ちょっと気になりません?これをとっかかりにすれば、闇魔法の研究が1歩進むかもしれませんし。」


「そ、そうね。

でも、嫌よ。私の知らないところで、アキラ君にいいように体をもてあそばれるなんて。」


シズカさんは顔を赤くしながら、自分の身体を抱きしめるようにしている。なんかその姿ちょっと色っぽくていいなぁ。


「知ってたらいいんですか?先っちょだけですから。」


「それならまぁ…って良いわけないでしょ!やっぱりアキラ君は全女性の敵ね!」


ノリがいいなぁ、シズカさん。


「まぁマジメな話をすると、酔いをさますにはアルコールを飛ばせばいいと思うんですけど、逆に酔っぱらわせるのはアルコールがいると思うんですよ。で、今ここにはお酒が無い。だから発動しなかったんじゃないかなぁと思うんですけど、どう思います?」


「え、このままこの酔わせる魔法の話を続けるの?

はぁ、まぁ確かにそれはありえそうな話ね。火の魔法だって火の魔力をもった魔石や宝石を媒介にした方が効率がいいのだから。だからお酒を手に持って使えば、もしかしたら発動するかもしれないと?」


「ええ、慣れたら闇の魔力だけでもいけるかもしれませんけど、最初はお酒を媒介にした方がいいんじゃないかと。」


「…で、アキラ君はその魔法を私に使うと?」


「ダメですか?魔法の研究のためです。」


「はぁ、仕方ないわね。」


まじですか!?シズカさん、チョロ…、いや協力してくれるなんてありがたい!


「でももし私がその魔法にかかったとしても、すぐにリフレッシュの魔法をかけてくれないと嫌よ?」


「それはもちろんです。」


「あと試すのはアルコール度数の低いお酒にしてよね。」


「…ちっ」


「今、『ちっ』て言った!?」


「まさかぁ。じゃあ僕お酒を買ってきますね。」


シズカさんの気持ちが変わらないうちにと、ぴゅーんと酒屋さんに向かう。ヴォドカを買いたかったけど我慢して、女性が好みそうなフルーツカクテルのお酒(あれ?でもこれ結構度数高い?)を買ってきた。



「あら、それは桃のお酒?美味しそうね。じゃあ、さっそく試してみましょうか。」


僕はそれにうなずくとフルーツカクテルのキャップを外し、その口を少し傾けシズカさんの方に向けながら闇の魔力を練っていく。


「じゃあ、行きますよ。

シズカさん、このお酒で酔ってメロメロになって、僕のことを好きになってしまえばいい!」


「ちょっとアキラ君!なんてことを、あっ!」


――闇魔法!酔っぱらってしまえ!


カクテルの瓶から酒精が闇の魔力とともに流れ出すと、霧となってシズカさんを包み込んだ。そして霧が晴れるとそこには…


トロンとした目のシズカさんがいた。これはやったか!?


そんなシズカさんはツカツカと僕に歩み寄ると、僕の首根っこをガッと掴んで引きずり倒した。


え?え?え?

途端に僕の視界は天地が逆になった。


「アキラ君。何をぼーっと突っ立ってるの。早く次を注いでよ。お酌よ、お酌。」


えっ、何これ、どういうこと?って思ったら、頭をスパンとシズカさんに叩かれた。


「もう。何をもたもたしてるの。もういいわ、頂戴。」


とシズカさんは僕からカクテルの瓶を奪うと、そのままラッパ飲みを始めた。


「ぷはーっ。美味しいわね!」


と頬に手をやって美味しそうに飲んで……そのまま飲み干した。


「あれ?アキラ君、なんでそこにいるの?うーん、お酒もなくなっちゃったし、次はアキラ君の味見でもしてみましょうか。」


シズカさんは舌で口回りを妖しくペロリと舐めまわすと、そのままこちらに向かってくる。

ナニコレ、シズカさんってば酒乱?僕は身の危険を感じ後ずさりするけど、シズカさんは僕が下がった分だけ迫ってきた。


「あらアキラ君?とても美味しそうね。ねぇ食べて良い?いいわよね?」


後ずさりしていた僕はそのままシズカさんに捕まると、シズカさんはそのまま僕に馬乗り状態になった。

あわわわわ。あ、そうだ!


――リフレッシュ!


すると酔いで濁っていたシズカさんのグリーンの瞳が、知性を感じさせるキレイなエメラルドグリーンの瞳に戻った。そしてそのままシズカさんは、僕を押し倒している現状をしばらく理解ができない様子だった。しかし状況を理解すると


「えっえっ、なんで?嫌ぁっ!」


――バチーン


「痛ってぇー!」


馬乗りされてる状態の僕は避けるどころか、防御も何もできずにまともにビンタを食らってしまった。


「あ、ごめんなさい。」


途端に謝るシズカさん。僕はジンジンと痛む頬をさすりながら


「シズカさんも、あんまりお酒は飲まない方がいいね。」


と言うと「うん、そうする…」というシズカさんのか細い声が返ってきた。

僕はただの叩かれ損だ、トホホ。

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