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陰キャ、魔法学園で恋に課金中。このガチャ壊れてませんかね?  作者: 崖淵


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第54話 最後のメンバー

僕が団体戦メンバーとして誘っている最後の一人は、ナタリア・リャビナという風と氷を得意とする魔法使いの女性だ。

とても小柄で華奢な体に雪のような色白の肌を持つその姿は、彼女が北の雪国生まれという噂は十分に信憑性があるものだった。透明感のある青灰色の瞳は、まるで冬の湖を思わせ、肩まで伸びた淡い金髪は柔らかく揺れる。彼女の顔立ちは愛らしく、頬にほのかに浮かぶそばかすが少女らしい魅力を添えるが、口を開けば少しハスキーな声で毒舌を繰り出すギャップが仲間を驚かせる。

後期に入ってからは彼女とダンジョン演習などの直接な絡みはなかったが、前期ではなんどか一緒になり、その度に……まぁ僕がグズだったのが悪いのだけど、辛辣な発言で貶されたものだ。

そんな彼女をチームに誘うとかお前はM、むしろドMなのかと言われそうだけど、仕方ないじゃないか。僕の今のチーム編成は前衛3中衛2の5名なんだ。バランス的に最後の1人は後衛が欲しい。で、残ってる後衛は彼女だけなんだ。


だから、僕が彼女に「団体戦で僕のチームに参加して欲しい」って言った時、彼女も僕のことを散々罵倒したのを覚えていたのだろう。それなのに熱心に勧誘しようとしている僕を理解できないといった感じで見ていた。ただ、そこで彼女は何かを思いついた表情をしたあと、まるで毛虫でも見るような顔で僕をみたんだ。小柄でかわいらしい顔した女性…というよりは少女といった感じのコに、いつものかわいい高い声ではなく低い声で


「え、まじで?お前、そっち系の趣味あんの?マジ、キモいんだけど。」


と言われ、更に雪国育ちと言われた彼女に身震いされた僕を誰か慰めてほしい。


そんなナタリアさんだけど、彼女はテルキナチームにも誘われているらしい。僕の勧誘は即拒否…ではなく、どちらのチームを選択するかを一応考えてもらえることになった。


そして今日その回答をもらえることになっており、まさに今、彼女は僕の目の前にいる。今日は9週目の個人戦の日。そう僕は彼女と対決するのだ。


「ナタリアさん、約束だよ。僕が勝ったら僕のチームに入ってもらう。それでいいね?」


それに対する彼女の返事は無言だったが、かろうじて小さく頷いたのが確認できた。

彼女の顔はこれからの戦闘を思い浮かべているのかやや赤い。

だけど、裾や袖口には赤や青の花や鳥の模様を織りなす刺繍が施された純白のローブを身にまとうその姿は、まるで新雪のように清らかだ。ローブの下には、薄手の毛織りのチュニックを重ね、モコモコとした毛皮の縁取りが首元や手首を飾る——雪国ではないこの地でも、彼女の故郷の寒さをどこか彷彿とさせる非常にかわいらしい姿だ。腰には小さな革ベルトを巻き、そこに木の杖が無造作に引っかけられている。杖は古い樺の木から削り出された素朴なもので、先端には小さなサファイヤが埋め込まれている。彼女の得意な氷の魔法と相性の良い石だ。


そんな外見だけは非常にかわいらしい彼女を説明するときに忘れてはならないのが一つある。彼女の小さなポーチには、なぜか手のひらサイズのステンレス製ヒップフラスクが収まっている。湾曲した長方形のそのフラスクは、使い込まれた銀色に鈍く光り、表面には小さな雪の結晶の刻印が。

「故郷の味よ。気分転換に、ね?」とかわいく笑う彼女には誰もが注意ができなかった。戦場では杖を軽やかに振るい、風や氷の魔法を操る姿が、まるで森の妖精のように舞う。だが、魔法の合間にウォッカ瓶をチラリと取り出す仕草は、違う意味でいたずらっぽい妖精そのものだ。


そういえば、さっきもおもむろに取り出して飲んでいたような。

……あんな顔して結構な酒飲みなんだよなぁ。


――ブーッ!


試合開始の合図のブザーが鳴った。

僕は間合いを詰めるために盾を構えて猛然とダッシュした。彼女のような優秀な魔法使いを相手にするには、まず距離を詰めないと話にならない。


それに対する彼女の魔法が……あれ?飛んでこない?

試合…始まってるよね?労せずして彼女に接近することに成功する。

彼女の様子を窺うと、両手を口の前に持ってきて塞いでいる。魔法使いなのに喋れないアピールだろうか?


「うっぷ」


うっぷ?


次の瞬間、彼女は……


◎△$♪×¥●&%#?!


……。

飲み過ぎたんですかね。新雪のように清らかだって評した僕の発言は取り消してもいいですかね。いいですよね。

僕は武士の情けとばかりに、思いっきりメイスで彼女のお腹をぶん殴っておきました。さすがにもう全部出たんじゃないですかね。


ということでナタリアさんという念願の後衛が加わったんだけど、

大丈夫かな、僕のチーム……

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