第53話 団体戦メンバー追加
今日は8週目の後半戦のダンジョン演習の日だ。
この頃になるとクラスのほぼ全員が団体戦でどのチームに所属して戦うか決まっていた。
Aクラスは超精鋭のクミコチームとモブチームが定員になっていたので、元々3択だったけど。
・大貴族マリュウカ率いる魔法主力チーム
・中~大貴族テルキナ率いる剣士主力チーム
・アキラと愉快な仲間たち
このどこに入るか。
アキラチームは現在4人であと2人必要だ。まだ未加入のクラスメイトに僕もチームの編成を考えて熱心に勧誘してきたのだけど、今日そのうちの1人からやっと良い返事をもらえた。
それは南国出身のザフィール・アルカサルだ。
平均的な体格に引き締まった肉体、陽に焼けた小麦色の肌に鋭い鷹のような眼差しを持つ。顔立ちはややイケメンで、短く刈り込んだ黒髪と彫りの深い鼻と引き締まった顎が、荒々しい魅力とどこか異国の貴族のような雰囲気を漂わせる。額に巻いた細い革ひもが戦士の気概を際立たせる。
彼は軽戦士という前衛も中衛もこなすファイターで、彼の装いは大胆で野性味に溢れる。上半身は鍛えられた筋肉を誇示するようなほぼ半裸、左右の肩にだけ無骨な金属の肩当てが鈍く光る——腰から下は動きやすい革ズボンのみの粗野で実用性重視の装備だ。
右手に握るシミターは、湾曲した刃に陽光が反射し、軽やかな足さばきとシミターの舞で敵を翻弄する姿が、まるで砂漠の嵐そのものだ。
よろしく頼むと彼は手を差し出してきたので、僕はその手を握り返すと、彼はパチッとウインクして、日に焼けた肌にとてもよく映える白い歯をキラリと輝かせた。
キザな男だなーとは思ったけど、不思議と嫌な感じはしない。
今日は彼も加えたダンジョン演習となった。
前衛も中衛もこなせるという前触れどおり、今日は前衛の人数の関係上で前衛をやってもらったんだけど、ランキング25位とAクラスでは下位になるが実力は確かだ。
でも、なんというか、ウザい。
戦ってる最中に技が決まるたびに決めポーズをとって振り返り、中衛や後衛の女性陣ににっこり笑って白い歯を見せるのだ。
そこを振り返らずに、怯んでいる敵に畳みかけて攻撃すれば敵を倒せるんじゃないかと思うんだけど。
だからそう言ったら、
「いやぁ、これが僕の性分だから、無理かなぁ。無理やり変えようとすると僕の戦闘バランスが崩れそうだからね」
と言って満面の笑みと白い歯を見せて、僕にニッコリと笑った。
いやぁ、男の僕にまでしなくていいんだけど。
っていうか、流されかけたけど、バランスってなんだよ。
そんなんで崩れるバランスなんて崩れてしまえ!と言いたいところだったけど、まだメンバーになったばかりだし、もう少しお互いのことがわかってから話をしようと思う。
なんてヘタレたら、「ちゃんとリーダーの仕事しろ」ってアンにお尻を蹴られた。
ちなみにザフィール君は戦闘中に女性陣にニッコリ笑いかけてた件で、今日だけで3回はアンにお尻を蹴られてた。全然効いてなかったみたいだけど。
でも25位っていう順位の割には彼って強いんだよね。剣の技術もしっかりしてるし、威力はないけど魔法も上手く使って戦っている。後ろをよく見ている(?)せいか、前衛の人にありがちな目の前の戦闘に集中しすぎる傾向もなく、全体の状況把握もできている。回復が必要な時はちゃんと少し下がってきてくれるし。中衛の僧侶としてもリーダーとしても、とてもやりやすい。
お陰で今日のダンジョン演習は上々の成果だった。
やっぱり無駄なアピールのせいでランクを落としているのかな。
ちなみに彼はアンと夜の街に繰り出していった。学園入る前からの知り合いらしくて、これから2人で飲むらしい。
とりあえず、前衛2中衛2のところに前衛兼中衛が1人でバランスを崩さずに仲間を増やすことができた。今声をかけている最後の1人が後衛の人なので、仲間になってくれるといいんだけどな。




