第52話 連日のデート
今日もシズカさんと放課後の闇魔法の研鑽日だ。
ということはまたもやシズカさんとデートということだな。
って言ってたらまた燃やされたけど。
しかし、僕の闇魔法はニッチだよなぁ。闇魔法自体が人間界においてニッチなのは当然なんだけどさ。まず闇魔法が魔物にほとんど効かないんだよね。天使や僧侶をもとにした魔物とかの極一部を除いて。
だからほぼ対人間専用魔法といえる。そして人類の天敵である魔族が得意とする魔法だ。だから人間界においては忌み嫌われている魔法だ。
そんでもって現状フラレた相手にしか僕は撃てなくて、団体戦においてグリフィスさんは味方だから、現状対シズカさん専用だ。
うーん、あまりにもニッチ過ぎる。
「シズカさん、何とかならない?」
「失恋の逆恨み魔法は確かに強いのだけどね。相手を選ぶのがね。うーん。なんか闇魔法のイメージ的に負の感情を相手にぶつける方向でやってみたら良いんじゃないかしら?」
「失恋魔法もそんな感じだし。ありかもしれないね。」
「とは言ったけど、私としては闇魔法の基礎である闇の矢を頑張って習得するのが、結果的には一番早いんじゃないかと思うわ。それにその後の応用にも効くだろうし。基礎は大事だし、急がば回れよ。」
「うーん、確かにそうかもしれないけど、団体戦でもっと役に立ちたいんだよね。今だとどうしても中途半端な気がして。」
「アキラ君は僧侶という職に多く求めすぎな気がするわね。味方を回復して、少しでも戦場に長く立たせる。攻撃しても攻撃しても倒れてくれない相手はとても厄介よ?アキラ君はその僧侶としての役割を十分なレベルでこなしてるでしょ?」
「そんなの僧侶として当たり前の動きじゃないですか。」
「そうはいうけど、当たり前のことを当たり前にできない人は結構いるのよ?」
うーん、本当にそうかなぁ。
「周りがAクラスだからそう見えてしまうのかもね。でもAクラスだって自分の役割ができていない人はいっぱいいるわよ?それにダンジョン戦は今のところ階層が浅いこともあって、火力、攻撃力にスポットライトが当たりがちだけど、深くなるにつれて継戦能力が重要になってくるわ。そのうち優秀な僧侶は引っ張りダコになるでしょうね。」
「そんな日がくれば良いですけどね。」
「それだけじゃないわよ。僧侶をちゃんとこなしている上に、アキラ君はチームリーダーをしているし、その指揮能力は折り紙付きよ。現時点で既にアキラチームの最重要ピースは、シングルのグリフィスさんでも上位のズレータさんでもなく、アキラ君であることは間違いないわ。」
「……今日のシズカさん、メッチャ褒めますね。」
「ええ、デートの相手だからね。デートの相手は褒めるべきでしょ。」
ガクッ。僕はズッコケそうになった。そうかぁ、デートだからなのか。
「まぁでもそれを抜きにしても、アキラ君にはもっと自信を持ってほしいと思っているわ。あなたの自己評価よりあなたの実力は十分に上よ。私が保証するわ。」
「そっかぁ。シズカさんに褒められるのはとても嬉しいけど、でももう少し個人として強くなりたいなぁ。」
「まぁ焦らずじっくりとね。闇の矢の習得はまだだけど、失恋魔法はある意味で新魔法なのよ。偉大な発明といっていいわ。闇魔法だから大きな声では言えないけどね。」
うーん、そうかぁ。
シズカさんのアドバイスの従い僕はこの後も闇の矢の習得を第一に練習した。だけど相変わらず芳しくないため、僕はもう1つのアドバイスである負の感情を相手にぶつけることを意識していくことになる。どんな負の感情を乗せるのが闇魔法として適当なのか、効果が高いのかなどを調べながら、試行錯誤していく。
これが功を奏して、僕は闇魔法が少しずつだけど使えるようになっていく……といいな。




