第49話 シズカさんと…
今日は月曜日。定例の個人戦がある日だ。
7~9週目は11~20位からランダムで相手が選ばれ、8週目の今日はシズカさんが相手となった。先週はズレータだし、親しい相手とばかり当たるなぁ。
そして昨日のデートの流れのままに、調子に乗った僕はアンのアドバイスを聞かずに、個人戦の対戦相手がシズカさんだと分かると、その個人戦の対戦直前にシズカさんをデートに誘ってみた。
するとシズカさんには露骨に冷めた目で見られ、大きなため息をつかれた。
やっぱりダメか。
僕とシズカさんは連れ立って演習場に入っていく。
――開始線まで両者は下がってください。
とアナウンスされるけど、僕はまだシズカさんと話があるんだ。
「アキラ君、あなたは本当に私とデートがしたいの?クミコでなくて。私がデートを受諾した後、クミコにデートを誘われてブッキングしてもクミコの誘いを断れる?それでクミコを優先されるようなら、私そんなの絶対嫌よ。」
「そりゃもちろんだよ。僕はシズカさんとデートがしたいんだ。」
「本当かしら?」
「うん。シズカさんが以前僕に言ったように、4月に告白した時、シズカさんにはクミコの陰を見ているのでは、と言われて僕としてはそんなつもりはなかったけど、本当になかったのかと言われれば正直自信が無い。でも今は違うよ。シズカさんのいいところをいっぱい知って、シズカさんとデートしたいと思ったんだ。だから僕がこの個人戦でシズカさんに勝てたらデートして欲しい。」
「私のいいところねぇ。そんなのあったかしら?」
「魔法に熱心だし、こうやって粘り強く付き合ってくれる。この根気の強さは1人の人として尊敬するし、とても魅力な部分だよ。しかもその上、外見には割と無頓着なのにもかかわらず、それでも隠せないほどの美人だし、ゆったりとしたローブの上からでも分かるほど、胸も大きい……って、あれ?なんか怒ってる?」
あれ、さっきまではシズカさんも満更でもなさそうだったのに、途中からスンとした顔になってジト目で僕を見ている。あるぇ?女性はいっぱい褒めるべきって学んだつもりだったんだけど、何か間違ってたかな?
――ブーッ!試合開始です。
「はぁ。アキラ君に一瞬でもときめいた私がバカだったわ。勝ったらデートね、いいわ。はい。」
――ファイヤアロー!ファイヤアロー!ファイヤアロー!
すると突如至近距離から、シズカさんは火の矢の魔法を三連打してきた。シズカさんの手のひらに溜まった魔力が、凶悪な火箭となって僕に迫る。
「うわあああっ」
不意を打たれた僕は慌ててそれを避けながら、魔法障壁を張る。
――フレイムランス!
――パリン!
でも、魔法障壁はシズカさんの炎の槍の魔法に耐え切れずに一撃で魔法障壁が割れる。くっ、なんなんだよ、いきなり。
――ファイヤアロー!×3
そこに更に火の矢の魔法3連打が僕を襲う。1発目はなんとか避けたけど、2発目3発目と直撃を食らう。
「ぐはっ」
これは痛い。肩当てが弾き飛び、お腹に火傷を負う。慌てて魔法障壁を貼り直すけど、そこにはまたもや唸りを上げるフレイムランスが直撃すると、為す術もなく僕ご自慢の魔法障壁は、呆気なく相殺され消えた。くっ、どうやらシズカさんのフレイムランスは魔法障壁を砕く事に特化されているらしい。
僕は後ろに飛び退いて少しでも距離を取る。
魔法使い相手に距離を取るのは普通は自殺行為だけど、今は先手をとられている。そこに至近距離から魔法の連打を食らうのは対応しきれなくて、さすがにキツイ。一度立て直したい。そうすれば僕は僧侶なんだから、このダメージを一度回復すれば一度状況をリセットできるはずだ。
飛び退いて距離を取ったところに火の矢×3が着弾し、またもや1発の直撃をくらう。くっ、このままじゃジリ貧か。
更に火の矢×3が飛んでくる。今度は3つとも避けられたと思ったら、直前で軌道が変化して今度は3発とももらってしまった。うう、シズカさん、やるなぁ。
でももうこれ以上くらうのはマズい。僕が何もしないままやられてしまう。そしたら、個人戦の成績も0点だし、何よりシズカさんとのデートもなしだ。
魔法障壁を張った瞬間にまたもや炎の槍で割られる。
くそっ、もう保たない!次の火の矢×3は、僕を確実に倒すトドメになるだろう。チクショウ、もうこうなったらこれしかない。僕だってタダではやられないぞ!
――シズカさんめ、よくも僕をフッてくれたな!そして今、またもや僕とのデートを拒絶しようとしているなんて!
僕はここに失恋の悲しみを痛みに変換する。そして僕の悲しみの丈をシズカさんは、その身体で思い知るがいい!
くらえ、逆恨みの波動!
「ハートブレイクインパクトォォ!!!」
僕はその渾身の闇魔法をシズカさんに放つも、それと入れ違うようにシズカさんの火の矢の魔法×3が僕にもろに直撃した。僕は放った闇魔法の結果を見ることなく、そのまま意識を失い演習場外に転送された。




