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陰キャ、魔法学園で恋に課金中。このガチャ壊れてませんかね?  作者: 崖淵


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第46話 骨の王

「じゃあ、さっき相談した手筈どおりにお願いするよ。」


僕がそう声をかけると、ズレータが立派な扉を押して開く。

その向こうにはやや大めの部屋が広がっていた。四方に大きなかがり火が炊かれ、そして中央にはかがり火に照らされて黒光りする大きな棺があり、そこから2.5メートルを超える異様に巨大な骸骨の戦士が、棺の中からゆっくりと姿を現した。黒光りする大剣を片手に、まるで生前の名残を残すかのような堂々たる構え――それが『骨の王』だった。

大剣を軽々と片手で扱い、盾で攻撃を防ぐその様は紛れもなく一流の剣士。だけど真に厄介なのはその2.5mの体格。その高さから繰り出される攻撃と長いリーチは人間の戦士にとっては脅威だ。そして両奥の骨壺からは、無限に骸骨戦士が湧いてくる。

テルキナがやられた学園ダンジョンの10階のボス部屋に近いかもしれない。強力なボスであるハイオークに定期的に呼ばれる3匹のオーク。

でもこちらの方がボスも強いし、骸骨戦士は間を空けずにどんどんと湧いてくる。


こちらの布陣と作戦は、ズレータが正面で斧の特性を生かして随時骨の王にダメージを与えていく。レイラとグリフィスさんがズレータの左右を固め、無限に湧き出る骸骨戦士を処理しながら、骨の王にも攻撃を加えていく。

僕とアンはさらにその左右から骸骨戦士を牽制して、レイラとグリフィスさんが湧き出る骸骨戦士をすぐ撃破できるように状況を作っていく。こんな感じだ。


これならいけるかと思ったけど、しかし、思った以上に骨の王が強かった。

大剣が唸りを上げ、床を叩く衝撃で石が砕ける。ズレータも上手く戦っているけどリーチの差は大きく、少ない隙をついて斧を振りかぶって叩き込んだ攻撃は盾で防がれる。攻撃を加えるどころか、守る時間の方が長い。

そして後方の骨壺からは途切れることなく骸骨戦士が湧いては、感情のないまなざしで剣を振りおろしてくる。

それでもレイラとグリフィスさんが骸骨戦士を押しのけて、一瞬だけ作れる1対3もしくは1対2の状況の時だけ、ズレータも骨の王へ攻撃することができた。しかし骨の王もズレータの攻撃が一番痛いのが分かっているので、2人が左右から攻撃に加わっても、正面のズレータの攻撃を中心に捌く形を変えず、骨の王へのダメージの蓄積はレイラとグリフィスからの攻撃が主で、微々たるものだった。


それでもしばらくは戦況を五分に保てていたんだ。

でも僕がみんなにかけている祝福ブレスの魔法が切れる時間帯が数分おきに来るんだけど、そこでそのたびにかなり押されてしまった。それを取り戻すのに少し時間がかかり、効率はどんどんと悪くなっていった。


まだもうしばらくは戦えそうだったけど、これは勝てそうにないなと判断した僕はみんなに告げた。


「今回は討伐を諦めるよ、いいね?」


「おう」「わかった」「了解よ」「それがいいわね」


とみんなも分かっていたのだろう。すぐに了承してくれた。


「よし、俺が殿しんがりを引き受ける。左右から徐々に退いてくれ。それに合わせて俺も退く。」


とズレータが宣言して、少しずつ撤退を始める彼ら。

え?どうしたの?

討伐は確かに諦めたけど、別に退却しないでもいいでしょ?

僕は精神を集中するようにごにょごにょと一言二言の祝詞を呟くと、胸に当てていた手を前に突き出し


―――昇天ターン・アンデット


と、死者を悼む儀式を完成させる。僕の手のひらから放射状に輝く白い光の輝きが不死者の戦士たちを包み、光の波が押し流すように片っ端から昇天させていく。骨の王は押し寄せる理不尽な光の暴力に何か文句でも言いたげだったが、一瞬で物言わぬ塵となって天に昇っていった。

そしてまばゆい光が収まるとあたりは骨の王の棺しか残っていなかった。


「ふぅ。いい鍛錬にはなったかもだけど、まだちょっとだけ早かったみたいだね。」


と僕が言うと「おまっ、なんだそれ!」とズレータに肩を掴まれてぶんぶんと揺さぶられた。うわぁ、あんまり揺らさないで。すると「おいおい」「なんなの、今のは!」と他のみんなからも詰め寄られた。僕はズレータの手を肩から外すと


「ターンアンデットだよ。知ってるでしょ?特にレイラなんて何度も見てるんだし。」


「馬鹿を言え!ボスモンスター級を昇天させるなんて聞いたことが無い!」


「そうだ、そうだ」とみんなから唱和された。


「そう?僧侶職ならみんなできると思うけど。」


「できるわけあるかー!?世界中の僧侶に謝れ!」


と言われてしまった。

えええ、そうかなぁ?それにターンアンデットするとせっかくのボスドロップもなくなるし、どちらにしろあんまり価値ないと思うんだけどな。

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