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第4話 膝枕より柔らかいもの、それは…

…ん?

ああ、そうか。思い出してきた。即死したなんて言う余裕があるくらいだから本当に死んでしまったわけでは無いけど、本当に死ぬかと思ったよ。

目の前が一瞬で真っ暗になって意識を刈り取られたんだ。まぁ、今も目の前は真っ暗だけど。いや、目を瞑っているからであって、開ければいいだけだけどね。

いや、でも待て。落ち着くんだ。この後頭部の柔らかい感触は何だ?


―――プルン


…おおっ!?もしかしてあの美少女が僕を一発KOした後に状況を察して、むしろ助けてくれた僕に恩返しするどころか仇で返してしまった事を済まなく思って、せめて意識が戻るまで…と膝枕をしてくれているとか!?

そうなると下手に目を開けてしまえば、その瞬間にこの幸せの膝枕が無くなってしまうという事では!?では少しでも長く堪能するために狸寝入りを継続…


―――プルルン


おうっ?なんか膝枕にしては柔らか過ぎん?どういう事?

も、もしや…え、そんな事あるの?女性の象徴ともいえる柔らかな双丘の間に挟まれているとか…?

え、え…!?いくら命の恩人を一発KOしたからって、流石にそこまでしてもらわなくても良いんだけど。でも、もうちょっとだけこの感触を堪能してもいいかな…?


「お、意識が戻ったのか?」


微かに身じろぎしたのがバレたのか、美少女らしき快活な声が頭上から聞こえる。でも彼女の身体の上に僕の頭が載っているにしては、声の発せられた位置がちょっと遠いような?


諦めて目を開けると、そこには立ったまま僕を覗き込む僕のローブをまとった赤髪の美少女がいる。え?立ったまま?

じゃあ、僕の頭の下はどうなってるの?

美少女に手を差し伸べられたので、その手を取って立ち上がる。手、やわらかっ!


え、キショい?だって、しょうがないじゃん。女の子の手なんて握ったことないんだもん。ましてやこんな美少女の手なんて、もう手を洗えないよ!


で、立ち上がって自分の頭があった位置を見ると、そこにいたのはスライム。


「ああ、お前はもう行って良いぞ。ありがとな。」


―――プルルン


と美少女の声に応えるかのように一震えすると、スライムはぴょんぴょんと跳ねてそのままどこかに行ってしまった。

…しばし呆然とその行方を見守る僕。


まぁ、そうだよね。助けたとはいえ、見ず知らずの男性である僕を膝枕する訳が無いよね。ましてや…〇〇だなんて、僕はどうかしていた。今思うとだいぶヤバい奴だった気がするよ。


「いきなり殴っちゃって悪かったな。お前だろ、私を助けてくれたのは。」


後ろからくだんの美少女に声をかけられた。


「ええ、多分。」


「ありがとな。確かアホみたいな量のスケルトンの軍団に押し潰されて、もう死ぬ寸前だったはずだ。それがこの通り傷一つ無くなっている。」


その美少女は僕のローブをバサッと脱ぎ捨て、傷一つないという肌を僕に見せようとする。

あっ、見えちゃいけないのものが見えてしまうと、咄嗟に目を背けつつ手で覆う僕。


「ほほう、その反応はやっぱり見たな?私の…乙女の胸を。」


あっ、しまった…


恐る恐るそちらを見ると、美少女は特に怒っている訳では無さそうだった。そこから視線を下ろすとそこにあるのは美少女の半裸…ではなく、世間で言われているビキニアーマーよりは多少まともな胸当てがちゃんと装備されており、肝心なところはちゃんと隠されていた。とはいえ、一方で隠す気が無さそうな胸の谷間に目が行ってしまうのは、健全な男子である僕には仕方が無い事ではないだろうか。

そしてその胸当ての部分は、僕が先程見たときは肩当てと胸当てを繋ぐ革の部分がスケルトンの攻撃で切れてしまって大事な部分が露わになっていたが、今ではその繋ぎの部分が無理やり縛るような形で結ばれていた。

ホッとしたような惜しいような…。


「で、どうだった?」


「えっ?」


「見たんだろ?私の胸を。その感想だよ。」


「いや、見たか見てないかで言えば見たんですけど、ちゃんと見たかと言えば、ちゃんとは見てないというか⋯。」


「なんだよ、ハッキリしない奴だな。私の胸はそんなどうでも良いようなモンだったって事か?」


「あ、ハイ。見ました。見えました。素晴らしかったです。脳内REC(録画)されました。永久保存領域に移行済です。」


あれ?つい認めちゃったけど、これもしかするとマズイやつでは?


「あっっっっ、すいません、ごめんなさい、許してください。さっきのはウソです。見てません。いや見ましたけど、忘れます。永久保存領域なんてありません。たった今無くなりました。すいません、ごめんなさい。何でもします。何でも言う事聞きます。許してください。お願いします。社会的に抹殺する事だけは勘弁してください。つい出来心だったんです。いや違います、不可抗力だったんです。わざとじゃないんです。どうしたら許してもらえますか。ごめんなさい、ごめんなさい。」


その場で即座に土下座して平謝りを始める僕。


「アッハハハハ。すっげー早口。お前、面白いやつだなー。いや、普通に考えてみろよ。こっちはもう殺されるってところで、お前はそこを助けてくれた命の恩人なんだからさ。パイの一つや二つ見られたって別に怒りはしないよ。」


えっ?本当に?

思わず見上げる僕。

それに対して胸の部分を隠すように両手で押さえる美少女。


「いや、わざわざは見せないよ?」


そんな…がっかり。しょぼんとうなだれる僕。それなら遠慮せずにがっつり見ておけばよかったよ。そんな僕を見て美少女は


「おいおい、そこまでがっかりする事か?」


呆れたように言う美少女。


「でもまぁ命の恩人だし、そこまで見たいんならもう一回くらいは見せてやっても別にいいけどさ。」


―――ガタッ


またもや期待の眼差しで見上げる僕。


「…っ。こ、今度、また今度な。だからそんながっつくなよ。傷はお前に癒してもらったとはいえ、私もかなり疲れてるからさ。それにこんなゾンビやスケルトンがまたいつ溢れ出てくるかわからないようなところで呑気にするような事じゃないだろ。」


この美少女は命が助かったこの今というタイミングだから見せてもいいとかいう気分になってくれたわけで、地上に戻ったらきっと目の前の美少女は我に返ってしまい、もう僕に惜しげもなく(※そこまでは言ってない)その身体を見せてくれることはないんじゃないかと思った。考えれば考える程そう思えた。それは諦めるにはあまりに惜しく、そう伝えたかった、喉から手が出るほどそう伝えたかったが、それはあまりにもカッコ悪い事なんじゃないかと思い、僕はギリギリのところで思い止まった。

そうだ、さっきまで僕は社会的に抹殺されるかもって思ってた事を考えれば、今の状態は上々なはずだ。僕みたいな陰キャは高望みしちゃダメなんだ。


「じゃあ、帰ろうぜ。」


彼女は荷物を拾うと僕にそう話しかけた。僕はその美少女の言葉に頷くと、彼女からローブを受け取り羽織った。でも、夕陽が目に染みるね。

カクヨムで先行配信しています。

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