第33話 ダンジョン演習中盤(第五週)
簡単な作戦を立ててボス部屋に入る。
そこにはハイオークが1匹いた。僕らの侵入に気付くとそのハイオークは
―――ブモォォォ!
と雄叫びを挙げて、どこからともなくオークが3匹現れた。
ハイオークが強いのはもちろんの事、このオーク3匹が定期的に呼ばれるのが厄介なところ。だってこいつら第九階層で雑魚敵として出てくるけど、結構強いんだよね。
僕?僕は1対1だと負けるね。まぁ、ゾンビ戦法すれば結構もつと思うけど、もちろんやった事は無いよ。作戦通りまずテルキナがハイオークに向かう。
「はぁぁぁぁぁっ」
テルキナがハイオークに斬りかかる。事前情報によると流石にテルキナと言えど、ハイオークと1対1では苦しいだろうということ。しかも相手の方がタフで持久力もある。1対1のままではそのうち劣勢になるだろう。テルキナはズレータやキャサリンが援護に来るまでに粘る。という作戦になる。
ズレータとキャサリンはまずそれぞれオーク1匹を担当する。ここは五分~やや優勢だ。倒せるかもしれないし、倒せないしれない。
残る1匹は僕だ。ここははっきり分が悪い。でもすぐには負けるつもりはないよ。
そしてシズカさんがアタッカーになる。まず僕ら3人が担当するオークで一番倒し易いやつを、攻撃魔法で倒してもらう。まぁ僕って事は無いと思うけど。ズレータ担当のオークを倒した場合はズレータは僕が担当するオークを担当する、キャサリンの担当オークを倒したらキャサリンはテルキナ支援でハイオークに向かう。シズカさんはオークの殲滅を目指しつつ、残りの2匹とも倒せたらハイオークに火力を向ける。
で、ズレータが僕担当のオークを倒したら、ズレータもハイオークに向かう。僕は遊撃だ。とはいえ、それまでに多分誰かが怪我してるだろうから、僕の回復魔法の出番だと思うけど。
ん?アンはどうしたって?
―――カキン!
アンが背後からハイオークを攻撃したが防がれた。こういった感じでテルキナのハイオーク戦のサポートだね。基本的に隠密に徹して、テルキナがピンチの時やハイオークの意識が完全にテルキナにいった時に攻撃する。アンはハイオークと正面切っては戦えないからね。
―――グモッ!?
作戦通り、キャサリンのオークをシズカさんの火の矢が襲い、その隙をついてキャサリンの槍がオークの急所を突いてまずは1匹撃破。キャサリンはテルキナと共闘すべくハイオークに向かう。
その後、シズカさんは苦戦している僕とズレータのオークにそれぞれ火の矢を撃っていく。そのうちにズレータのオークが倒れて、ズレータが僕のオークを倒して、ズレータもハイオークに向かう。
―――回復!
僕は、結構ダメージを受けているテルキナに回復魔法をかける。
ハイオーク1匹になって、ここから畳みかけるぞ!というところで、
―――ブモォォォ!
とハイオークが雄叫びを挙げ、オーク3匹がお代わりされた。
再度、ズレータとキャサリンと僕がそれぞれ1匹ずつ引き受ける構図に。
今度は慣れたのか先程より多少短時間でそれぞれのオークの処理が終わり、皆でハイオークに火力を向けるが、大したダメージも与えられないまま、またオークのお代わりが来る。
最初のうちはオークの対処も段々と効率化されて、短時間で処理できるようになっていくが、一方で疲労はたまっていくが、おかわりのオークは常にフレッシュな状態だ。そして疲労が溜まればミスも出易くなるものだ。
「きゃあああああっ。」
アンの悲鳴だ。テルキナのために隙を作ろうと深入りし過ぎたのかもしれない。
ズレータに僕のオークの相手も頼み一時的に1対2になってもらって、僕はアンの元に向かう。アンはハイオークに斜めに斬り裂かれており、なかなかの深手だ。
―――回復!
傷は塞がったが、回復魔法1回ではとても戦線復帰できそうにない。そして、キャサリンがやっとオークを倒してハイオークに向かおうとするも、その前にアンがいなくなりテルキナに全力を傾けられるようになったハイオークの攻撃がテルキナに襲い掛かる。テルキナは既に軽傷を負っているところで本来ならば僕の回復魔法が届くところだけど、アンに使ってしまっており、回復魔法のクールタイム中なのでテルキナは回復がもらえず手傷が増えていき余計に動きが悪くなる。
「この豚風情が、死ねっ死ねっ!」
裂帛の気合をもってキャサリンがハイオークに槍で連続攻撃をするもハイオークはそれを余裕をもって捌いていく。ハイオークにとってキャサリンの攻撃は無視できないが、さりとてテルキナ程の鋭さは無いといった感じなんだろうか。
テルキナは傷を負っており、明らかに動きが悪い。本当はもう一回アンに回復魔法をかけたいところだが、ここは一度テルキナにかけておかないとマズいかも?
―――回復!
テルキナに回復魔法が届き、動きのキレが回復する。ズレータとシズカさんも何とかオーク2匹を倒したようだ。
―――ブモォォォ!
としかしここでハイオークが雄叫びを挙げ、オーク3匹がお代わりされた。うーん、今回はハイオークに攻撃できなかったか。
その後もオークを倒しては、皆でハイオークを攻撃するという時にオークのお代わりが来るという展開が続く。
ハイオークも無傷ではないが、こちらの方が手傷に加えて疲労もある。誰かしらが大怪我をする割合も増えて、回復魔法も少しずつ追い付かなくなってきている。
これはもう勝てない気がする。
撤退するべきじゃないのかな。




