第31話 個人戦と放課後
今日は月曜日。午前中の講義やレクチャーが終わって午後になれば第5週の個人戦だ。
今週も下位(21~30位)同士の戦いになるから、絶対に負けられない戦いになる。そして作者の厳選なる抽選の結果、僕の相手に決まったのは序列第26位モブ四郎君。
先々週のダンジョン演習で一緒だったのが記憶に新しいね。
当たるとすごい、けどなかなか当たらない。ゴブリン4匹に囲まれたら割と何もできなかったかっとばす系の棍棒使いだ。当たらなければどうって事ないのは確かだけど、パワーだけでAクラスに在籍しているのは伊達ではない。
―――サッ、ブゥン!
―――サッ、ブゥン!
僕が避けた場所を唸りをあげて棍棒が通過する。まあ正直避けるだけなら問題無い。
でも攻撃しようとすると、避けられないかもしれない。すごいスイングスピードなんだよね。
―――光の矢!
だから、こうやって目潰し。これで一発殴る時間くらいは稼げる。
―――バキッ!
で、モブ四郎君の左足を重点的に狙って殴ってる。彼の左足、すっごい腫れてるんだけど、戦意が全然衰えないんだけど。
彼ってどうやったら倒れるの?しょうがない、もう一発くらえー!あっ…
―――カッキーン!
モブ四郎:「三遊間を抜ける痛烈なライナーだ!」
「ごぶぁっ!」
ぐはぁ。
よくわからないモブ四郎君の実況とともに、盾越しだったけど棍棒が僕にクリーンヒット!僕はライナー性の当たりで10mくらい吹っ飛ばされて、ごろごろと転がって止まった。なんだよ、このパワー。なんとか盾での防御が間に合っていたのに、防御しなかったらどうなってたんだろう。本当にホームランだったのかもしれない。
起き上がろうとするも、頭がくらくらする。まずい、早く立ち上がらないとモブ四郎君の追撃を食らっちゃうよ。自分に回復と混乱回復の魔法をかけて立ち上がる。
くっ。どこだ!?
って追撃どころか、モブ四郎君その場から動いてないね。
え?足が痛くて動けない?
あ、一応僕の攻撃ちゃんと効いていたんだね。
で、もう動けないし、最後に一発当てて満足だから降参って…マ?
なんか締まらないけど、とりあえず勝利で試合終了だよ。
[個人戦5/10終了:合計12点]
火水木は授業のターン。そして放課後はシズカさんとの闇魔法の研究だ。まずはこの一週間の研究結果について報告し合った。
「相変わらず闇魔法の初歩、闇の矢ですら全く発動しそうな気配すらないんだよね。」
「そうなんですか、困りましたね。
私の方はまず自身の闇魔法の適正を調べてみることにしたんです。予想はしていたけど、見事にゼロだったんですよね。だから闇魔法の魔導書の内容と他の属性魔法との比較からの類推くらいしかできないんですけど…。」
「ああ、それじゃシズカさんにメリットが何もないね。」
「うーん、そう思うなら早く闇の矢くらい覚えて、私に撃って欲しいですね。」
「えっ!?」
シズカさん、って痛いのが良いとか、そっちの人なの?
「アキラ君、今、あなた私にとっても失礼な事を考えませんでした?」
「えっ。まさか、そんな、あははババババババ」
―――バリバリバリバリバリ!
いきなり雷撃…なんて…そんな…ばたん…きゅう…。
…
「シズカさん、ごめんなさい。」
「アキラ君、私最初に言いましたよね?いつ魔族と戦う事があるかもわからないから、闇魔法を体験しておくことに意味がありますって。」
「はい…。」
「今回は許してあげます。次、失礼な事を考えたら許さないですからね。
ああ、そういえばアキラ君が使ってる光魔法も割と希少で主要属性じゃないって聞いたんです。私は光魔法も適正0だからよくわからないですけど、光の矢って他の火の矢や氷の矢や風の矢のような主要属性魔法とちょっと使い方が違うんですって。だから闇の矢もちょっと違うんじゃないかなって思いましたの。」
「え、そうなの?」
「ええ、光魔法を使えて主要属性に適正がある人は少ないですけどいます。でもその人達がいうには主要属性の矢の魔法はどれもみんな同じような発動方法ですけど、光の矢はちょっと違うらしいです。だからまずアキラ君は主要属性の魔法矢を練習して、光の矢との違いを調べてみては?アキラ君の適正値は壊滅的って事で実戦では使えないでしょうけど、0ではないみたいなので光魔法と比較するために練習で撃つ分には意味があるんじゃないですか?」
1時間後、僕はシズカさんのアドバイスを受けて、火の矢をはじめとするいくつかの属性矢の魔法を撃つことが出来るようになった。
「なるほど、確かに主要属性矢の魔法はみんな同じ感じですね。簡単に言えば矢のイメージに属性のイメージと適切な魔力を込めれば撃てます。それに対して光の矢はまず光の塊のイメージがあって、そこから光を敵に浴びせるというか光を影響させるようなイメージですね。その移動方法が矢という感じで。」
「へー、結構違うんですね。面白いです。」
とシズカさんがメモをしている。
「でもそうすると闇の魔法も違いそうですね。うーん。話を聞いていますと、光の魔法って対象を明確にしないと撃つの難しいんじゃないですか?」
「あー。今はもう慣れましたけど、最初はそうだったかもしれません。」
「なら、闇の矢も相手がいないと最初は難しいかもしれませんね。わかりました、私に撃ってください。」
「えっ。」
「二回は言わないです。早く撃ってください。」
―――闇の矢!
「できませんね。」
「そうですか…。光は相手に影響を及ぼすようにイメージして撃つんですよね?闇魔法もそうしてみたらいかがですか?」
「…できないのは変わらないんですけど、何か今までと違う気がします。」
「闇なのだから相手へマイナスを及ぼすようにイメージしてみてはどうでしょうか?」
「シズカさんにマイナスイメージなんて難しいですよ。」
「そうですか?ほら、私にフラれた事を思い出し…キャッ!痛っ!」
―――ボンッ!
黒い魔力の波動がシズカさんの二の腕のあたりで爆ぜる。
「あ、ごめんなさい!」
僕は急いでシズカさんに駆け寄って回復魔法をかける。くっ、なんだ?この程度なら1回で回復しておかしくないのに。クールタイムが明けるのを待ってもう一度回復魔法をかける。完治した。ふぅ…焦ったよ。今気づいたけど、さっきからシズカさんがずっと無言でこっち見てたみたい。こんな事しちゃったから睨まれて…る訳でもなさそうね。
「アキラ君、できたんじゃないです?闇魔法。闇の矢じゃなかったみたいですけど。」
「え?あ、そうかも。でも…」
「ちっとも嬉しそうじゃないですね。念願の闇魔法ですよ?」
「ええ、そうなんですけど。シズカさん傷付けちゃいましたし。」
「本当ですね。ちょっとショックでした。」
と言ってシズカさんは先程大きく傷ついた二の腕の辺りをさする。
「だって私は魔法防御に自信があったんですよ。それを簡単に破られるとは思ってなかったです。」
「え?乙女の柔肌に傷が的な意味ではなくて…?」
「またそんな事を言って。いい加減、怒りますよ?
でも、闇魔法初めて見ましたけど、やっぱり興味深いですね。というか闇の矢じゃなかったですけど、あれは何だったんですか?」
「…あれ?そういえば何だったんだろう。」
まだまだ先は長そうだった。