第30話 アンとレイラ
そんなこんなで週末が来た。
そして今僕は先週同様、アンとカフェでモーニングを食べている。なんでだろう?
土曜日の日課である早朝ランニングをしていたんだけど、気付いたらアンが並走していたんだよね。アンは女盗賊ってキャラとは裏腹に、普段から割としっかりとした露出の少ない服装をしているんだけど、流石にランニングウェアは薄いというかより魅力的な服装でして、ハイ。以前からグラマラスなボディだなぁってのは何となく気付いていたんだけど、ランニングすると揺れる揺れる。それに釣られるように僕の首も上下してしまったんですよ。『一緒にモーニングどう?』って聞かれた時も。
アンはとても魅力的な女性だし話してて楽しいから、モーニングくらい別にいいというかこちらからお願いしたいくらいだけど、でもね。
「アキラ、この後レイラとダンジョン行くんでしょ?アタシも同行していい?邪魔はしないからさ。なんならアタシの取り分は無くてもいい。」
って言われると困ってしまう。僕だけの話ではないのだから。
「うーん、それは僕だけでは決められないよ。レイラの話も聞かなきゃ。それにレイラは嫌とは言わないかもしれないけど、今日の今日でこういう話を持っていくのは悪い気がするんだよね。」
「そう?アタシの知ってるレイラなら普通にいいって言う気がするけどね。」
「知り合いなの?」
「全然?」
…。なんで僕の周りにはこういう女性が集まるんだろうか。
「まぁいいからアタシにレイラと話させなさい。学園ダンジョン前に9時集合でいいの?」
「いや、学園ダンジョン内3階の死者の墳墓入り口前で待ち合わせだよ。」
「なんで、そんなところに。まぁいいわ。アタシは早めに行ってレイラと話をしているから、アキラは9時ぴったりに来なさい。いいわね?」
と押し切られてしまった。
◇◇◇
アタシはアン ボニー。女盗賊よ。
先日以来アキラが気になっているのよね。何かお金になりそうな匂いがプンプンするの。そういうアタシの勘ってば結構当たるんだけど…その理由を我ながら知りたいのよね。で、レイラとの特訓に割り込もうと思うんだけど、どうかしらね。普通は他の女の存在なんて嫌がると思うんだけど、なんか女の直感的にレイラはアタシを迎え入れてくれそうな気がする。
「さて、死者の墳墓入り口だったわね。またなんだってそんなところで待ち合わせ…よく二人が学園内では目撃されるのにダンジョン内で見られないのはそれが理由なのかしらね。」
さて、レイラは…っと。いるわね。
しかし、この娘の装備も大概よねぇ。よくこんな露出のすごい男好きするような装備できるわねぇ。よっぽど自分に自信があるのね。
「おはよう、レイラ。」
と声をかけるとけげんそうな顔で見られた。まぁそうよね。早速要件を告げる。
アキラとのダンジョン探索に混ぜてほしいと。すると、すぐにOKが出た。OKしてくれるのではないかとは思っていたが、あっさりしすぎて拍子抜けだ。なんでか聞いてみた。
「アンもアキラの魅力に気が付いた…ってところか?まぁ良いんじゃない。アキラはもっともっと良い男になる。それには私だけじゃなくて色んな女が必要なの。だからその養分の一人として貴女を認めてあげる。」
「うっわ、すごいわね。正妻の余裕?」
「うーん、私が現在一番彼女に近いポジションにいるとは思うけど、正妻とは違うんじゃないかな。正妻の位置はまだアキラの中ではクミコがいると思う。」
「あー、そうなの?」
「本人は認めないだろうけどね。ただ、私はクミコに負ける気は更々ないよ。もちろん貴女にも。アキラには飛び切りの良い男になってもらって、そこを私がおいしくいただくつもり。だから精々アキラの良い養分になってね、アン。」
ほへー。こんな女もいるのね。いいわ、面白いじゃない。
そしてアタシは金になりそうな匂いというか勘が正しかった事を早々に理解する事になる。
それは祝福の魔法をアキラにかけてもらった時だった。
アタイの武器はダガーだ。お世辞にもスケルトン向けの武器とは言えない。武器の性質的にも攻撃範囲的にもだ。確かに祝福はスケルトンのような不死者特効の補助魔法だけど、これはそういうレベルじゃない。
―――サクッ!サクッ!
スケルトンが野菜をカットするかのように切れていく。
何これ。アタイはレイラを見る。
すると彼女は笑っていた。そして人差し指を口の前に持ってきた。黙っていろって事ね。そりゃもちろんよ。こんなお金になりそうな美味しい話、他に話す訳ないわ。
どうやってこれをお金に換えるかはまた考えるとして、まぁアタシも負けず嫌いだから、アキラの彼女ポジを本気で狙ってもいいかもしれないね。
最悪、アキラの養分で終わっても十分元が取れそう。しかも養分自体が利益になりそうな程ね。これはこれからが楽しみだわ。




