表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/35

第20話 個人戦(第三週)

午前中の授業が終わり、午後に個人戦が始まる。

お昼休憩中に抽選は済んでおり、今日の僕の相手は『クミコ クローテッド』に決まった。学年1位にして僕の幼馴染だ。これまで3位4位そして1位と対戦とか、ランダムにしても運が悪すぎるだろって?一応これには理由があって、下位(21~30位)の僕は1~3節では必ず上位(1~10位)と当たる仕組みになっている。

…とはいえ10位までいる上位陣からランダムで当たるのに1/3/4位と当たった僕はやっぱり運が悪い事に違いはないのだが。


さて、クミコか。ここまで先週先々週とその戦いを目にしてきたけど、僕と同じ下位が相手とはいえ、いずれも秒殺だった。開幕と同時に氷のアイスアローを2発連射。同時に敵に突進。この氷のアイスアローが制御・威力ともに見事で、速度も速い。この氷のアイスアローが直撃すれば怯んだところを接近してくるクミコに斬られる。なんとか回避しても態勢不十分なところをやっぱり接近するクミコの初撃をかわせず斬られる。先週も先々週もほぼ同じ結果で3秒決着だった。

僕はどうしようか。目標6秒?違う、そういう話じゃないよ。氷のアイスアローだけなら魔法障壁で防げるけど、そのまま魔法障壁ごと僕が斬られそうだな。勝てないまでも一矢は報いたいところだけど、正直どうすればいいか分からない。


第1位のクミコ戦なので午後の第一試合だ。遠くにレイラが見えて手を振っている。隣の授業とぱいえ、大丈夫なのかな。先生に見つからないようにね。


「余所見とは余裕だな、アキラ。…ああ、隣のクラスの女か。また鼻の下を伸ばして…昔はそんな軽い男じゃなかったのに、全く惜しい男を亡くしたものだな。」


その瞬間、周囲の温度が一気に冷えた気がする。いや、気のせいじゃない。文字通り空気が凍てついている。これはクミコの怒りで冷気が漏れているのかな。


「人の事を勝手に殺さないで欲しいな。でも珍しいね、クミコが感情を御せないなんて。」


僕はそこら辺に浮いている極微小の冷気の結晶をとって見せる。


「ほう、本当に余裕があるのだな。ちょっと前ならこの程度で恐怖で震えてまともに受け答えできなかっただろうに。これなら今日は少しは楽しめるのかな。アキラ、あまり私を失望させないでくれよ。」


そういってクミコは演習場の中に入っていった。

赤の他人…とは言わないが、ただの幼馴染なだけで別に許嫁でも何でもないのだから、そんな風にまで言われる筋合いはないと思うのだけどなぁ。


―――ぶるぶるっ


あ、今更ながら震えが来た。僕って鈍いからこういうの少し遅れてくるんだよね。でもカッコ悪いとこ見せなくて済んだからよかったかも。さて僕もそろそろ行かなくちゃ。


演習場に入るとクミコがスタンバイして待っていた。その視線は冷たく正に『氷の美姫』。


―――ブーッ!


試合開始のブザーが鳴ると同時にクミコから氷のアイスアローが2発飛んでくる。その向こう側からは飛ぶようにクミコが迫ってくる。僕は魔法障壁を張った。盾で躱す事も考えたが、この氷のアイスアローは、自分の技術では完璧に対処するにはまだ心許ないからだ。

氷のアイスアローが2つ魔法障壁に着弾した事を確認すると、手を離し後ろに飛びのく。僕の手が離れた魔法障壁は消え、そこにクミコが飛び込んでくる。


―――光のライトアロー


クミコの顔に向かって魔法を打つのは多少のためらいがあったが、元よりここは演習場で傷など残らないのだ。そして僕の光のライトアローは目潰し以外に効果は無いに等しく、顔に…その瞳に向かって撃たねば効果は無い。


クミコは咄嗟に籠手を目の前にかざし、僕の光のライトアローをそれで受けた。そして立ち止まり自身の籠手を見て光の矢を引き抜き、僕と交互に見る。


「なるほど…いい目晦ましにはなりそうだな。やるじゃないか、アキラ。

だが、ただの時間稼ぎにしかならないなっ!」


クミコが斬りかかってくる、


―――ガキンッ!


くっ、なんて重い一撃なんだ。かろうじて盾の防御が間に合うが、1合で大きく盾を弾かれる。


―――ガキンッ!


次は右手にもつメイスがかろうじて間に合うもこちらも弾かれる。


―――光のライトアロー


3撃目を食らうより早く僕の魔法が発動し、クミコを襲う。

クミコは咄嗟に手で守り、3撃目を出させない事に成功した。

僕はまた盾とメイスを中心に引き寄せ守りを固める。


勝ち目がないのはハナから分かっている。少しでも粘ってやる!


しかしそれを嘲笑うかのように、クミコは再度同じ二連撃を僕に浴びせて盾とメイスを大きく弾くと、次の僕の光の矢は目を瞑ってそのまま受け、そして目を瞑ったまま斬られた端から凍っていくような氷の刃で僕を一撃で切り裂いた。


僕が次に気付いた時にはいつものように演習場の外の簡易ベッドにいた。


演習場から出てきたクミコはちらっと僕を一瞥すると、特に何もいう事もなくそのままスタスタと引き上げていった。


完敗だった。

もう少し粘れるかと思っていたけど、そうでもなかった。

しかし、学園の評価はそうでもなかったようで、僕は1点の加点がもらえた。


[個人戦3/10終了:合計2点]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ