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第17話 ダンジョン演習前半(第二週)

火水木と無難に授業をこなしたり、数学の授業で良いところを見せたりしながら金曜日を迎えた。ダンジョン演習の日だ。


幸か不幸かマリュウカ フォン ローゼンタール…その人ではなく、その取り巻き女性3人全員(もちろん全員貴族)と一緒だ。序列は17位の斥候と19位の大盾戦士と24位の槍士だ。まぁ、全員僕より序列が上な訳だが。あとは、序列13位ズレータ(第一話登場…テルキナ系スキンヘッド戦士)と序列22位平民の土魔法使いモブ土君の6名だ。ランダムの結果、なんと珍しくも序列一桁シングルがいないパーティーとなった。


腐ってもAクラス…と言いたいところだが。

金曜日の早朝に当日のパーティーが発表される。その後30分ほど作戦会議ブリーフィングの時間が設けられてそこから出発するのだが、その作戦会議ブリーフィングからして波乱の予感しかしなかった。


まず僕の罵倒から始まった。


「おい平民め!マリュウカ様といい勝負したとか思ってないだろうな!ただ地面に這いつくばって粘ってただけなのを勘違いするなよ!」


いきなりマリュウカの取り巻きの一人にこう言われた僕。残りの二人もほぼ同調し、3人で僕を責めたててきた。

きょとんとする僕。ズレータもモブ土君も唖然だ。だって今ここは作戦会議ブリーフィングの場で連携を深める場であって、仲間割れをする場ではないからだ。いきなりの出来事に僕も『お、おう…』って感じだったわ。


で、そこからパーティーリーダーを決めるって事になったんだけど、まずこのパーティーの最上位はズレータ君だが、ズレータは基本脳筋だ。そして自分がリーダータイプで無い事も自覚している。それ自体は素晴らしい事なのだが、この後のグダグダ具合を見ると、それでもリーダーシップをとってほしかったと言わざるを得ない。


ズレータを除けば序列最上位はマリュウカの取り巻きの一人で序列17位の斥候職だ。…斥候貴族様とでもしておこうか。そして6人中3人がマリュウカの取り巻きで半分を占めている。そして斥候貴族様は明らかにリーダータイプではないのだが、ズレータがそのポジションを降りた結果、自分が序列TOPとなったのが嬉しいのか急に仕切りだした。それでもまとめられるなら良いのだが、議題を自分好みの結論に引っ張りそれで決めるならまだしも(いや、本当は良くはないが)、そこまでやっておいて結論を自分で下すのは怖いのか、皆の同意を求めようとするのだ。ズレータと自分とモブ土君はその取り巻きたちの意見が明らかに間違っているので同意し難く反対する。でも取り巻き3人はなんとなくでその意見を押し通そうとする。でも責任を取りたくないので、全員賛成したという形をとりたい。結果グダグダ…こんな感じである。彼女らのお陰で僕はズレータとモブ土君と意気投合し、少し仲良くなってしまったよ。


結局、結論が出ないままに時間切れで作戦会議ブリーフィングを終え、AM9時スタートで学園ダンジョンに出発する。そして、事件は第五階層中ボスフロアで起こった。


このフロアはゴブリンリーダーという配下をちょっぴり強くする統率格のゴブリンとアーチャー、ファイター、メイジ、プリースト、シャーマン等の進化系ゴブリンが1匹ずつと大量のノーマルゴブリンと言った編成の部屋だ。ゴブリン自体は弱いから、進化種をどのように料理するかを事前にちゃんと作戦を立てて戦えば、それほど困る訳ではない。前期終了時で、Aクラスじゃなくて真ん中より上半分はクリアできるくらいだ。言い換えれば、下半分はクリアできていないわけだが…。だからAクラスとて油断すれば楽勝という訳にはいかない。それでもよっぽどの事が無い限りは個々人のスペックの高さで押しきれてしまうだろうが。


そう。ここで、よっぽどの事が起きたのである。

作戦会議ブリーフィングでも揉めたのもこれだが、斥候貴族様は自分中心のPTにしたかったんだろう。自身の斥候の役割を放棄して自分を姫護衛して自分が活躍できる布陣にしようとしたのだ。もちろんそれは僕らも一致団結して拒否した。で、結論の出ないまま…それでも第一~第四階層は別に問題なかった。敵自体が弱いのだから。僕もズレータもモブ土君も第五階層くらいまではなんだかんだでなんとかなるだろうし、第六階層で雑魚と二~三戦して上手くいかなくなってそこで帰るか、そのまま第六階層をぐだぐだしながら一日を終えてもいいかと思っていた。


だが、第五階層での斥候貴族様の動きは我ら3人の予想の斜め上を行った。

正面切って中央突破をかまそうとしたのだ。『お前らついてこい!』と。一瞬唖然としたのち『ついていけねーよ!』というのが我ら三人の共通見解だったが、見捨てる訳にもいかない。斥候貴族様に続いて大盾戦士貴族様と槍士貴族様も追随して突撃しているのだから。


「行くぞ!」


ズレータの声に頷くと僕ら3人はズレータを先頭に後を追う。途中、ゴブリンアーチャーから矢が何本か飛んでくるが、ズレータがその全てを軽く切り払う。さすがだな。


前方を見ると、3人組は既にゴブリンの群れと交戦中のようだ。大盾戦士と槍士は前衛職であるため、余裕かと思いきや、ゴブリンメイジやシャーマンに全くプレッシャーがかかっていないため、そちらからの魔法攻撃に苦戦して、ゴブリン兵を蹴散らしてはいるものの、優勢を築けるという感じでは全くない。

そして肝心の斥候貴族様は何を思ったのか自身の器用さと素早さを最大限に生かして大跳躍で一気に敵前線を突破、そのままゴブリンリーダーと一騎打ちを始めた。


そこまでして目立ちたかったのか。そして一騎打ちなどをモンスターに求めても仕方がない。当然すぐにわらわらとゴブリンに群がられて、


「なんだと!これは一騎打ちだぞ、卑怯者め!」


とか斥候貴族の方から聞こえてきたが、『うわ、何をする、やめろー!』とか聞こえていたが、あっという間にゴブリンの群れの中に埋もれていった。それに動揺したのか、大盾戦士貴族と槍士貴族の動きが乱れる。ゴブリンメイジとシャーマンの魔法を被弾し、更に動きが鈍る。


マズイ、斥候貴族の生死も気になるが、このままだと前線が崩れる。

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