第14話 週末特訓
今日は土曜日でレイラと死者の墳墓ダンジョンでスケルトンと戦闘訓練しながら、白い魔石を確保して生活費を稼いでいる。もっとも倒してるのはほとんどレイラだけど。
「ほとんどレイラが倒してるのに折半は申し訳ないなぁ。」
「何言ってるんだ、倒してるのは実質アキラの祝福の魔法じゃないか。それを言ったら私の方が申し訳ないくらいだ。しかもアキラの昇天があるから安心してここを狩場に出来ているんだ。あれ、そう考えるとほとんどアキラのお陰じゃないか。これはあれか?アキラは恩に着るように見せて、私に恩を着せに来ている?」
「そんなばかな!」
「ははーん?なるほど、アキラめ。私にHなお願いがしたいんだろ?別にそんなに遠回しに言わなくても、見たい揉みたいって言えば、いくらでも希望は叶えてやるのに。」
「…全っ然、そんな事思ってないから!!!」
結局、土曜日は終日死者の墳墓ダンジョンにいた。その帰り道、二人でつらつらと話しながら情報交換をする。そして個人戦でクサナギさんと戦って負けた月曜日の話をした。
「ああ、それは私も見てたぞ。隣の演習場だったからな。アキラの時だけこっそり覗いていたんだ。確かにちょっと悲しい結果だったかもしれないけど、結局はまだまだ場慣れが足りないって事じゃないかな。特訓しても急に強くなるわけじゃない。技術が身についてもすぐに発揮できるわけじゃない。焦らずやっていこうぜ。アキラなら絶対に強くなれるよ。この私、レイラが保証する。」
…ぐす。なんかちょっと涙が出てきちゃった。
「…うん。僕はレイラと知り合えて本当に良かったよ。」
「そうか?私こそアキラと知り合えてよかったと思ってるけどな。それもアキラがそう思ってくれているより、ずっとな。」
…そうかな?
「ちなみに私は個人戦の1回戦はちゃんと勝ったぞ。まぁ、こっちのBクラスにはクミコやタクヤといった化け物がいないからな。全勝で終わらせるつもりだ。」
「うん、レイラなら出来ると思う。むしろ、そっちは全然心配してないんだけど、座学の方、大丈夫?一年次がBクラスだったのってそっちが原因なんじゃないの?」
うっ、とばかりに胸を抑える振りをするレイラ。くっ、なかなかにあざとかわいいじゃないか。
「だから私からもお願いがあるんだが、日曜日は剣と魔法の実戦の訓練を一日しているじゃないか?その中で午前中は私に座学を教えてもらえないだろうか…。」
と頭を下げてお願いされた。
「そんなのお安い御用だよ。じゃあ、今週から日曜日は…早速明日からそうしようか?場所は魔法学園の図書館でいいかな?日曜日だと割と混みそうだから朝一から並ばないとかなぁ。」
翌日曜日、午前中は二人で図書館で一般教養と魔法学のレイラが特に苦手だというところを見てあげた。いつもレイラに教わってばかりなので、なんか新鮮な気分だ。
「レイラ君、どこが分からないんだい?(眼鏡クイッ)」
「…アキラ、楽しいか?」
「うん、ちょっと。」
午後はレイラと対人個人戦の訓練を行う。レイラは燃えるような赤い髪を珍しくまとめシニヨンにしていたが、弓を持ってきていたので絡ませない為なのかな。これもかわいくていいね。
「アキラ。もう今期にクサナギとの個人戦は無いかもしれないが、クサナギとの戦闘の記憶に新しいうちに復習をしておこうか。流石にクサナギ程のレベルにはないが、私の弓も悪くは無いぞ。いくぞ!」
―――ヒュンッヒュンッヒュンッ!
「うわっ!」
普通に弓矢も上手いじゃないか。
「アキラ、油断するな!次いくぞ!」
―――ヒュンッヒュンッヒュンッ!
「ちゃんとよく見ろ!最初から難しい事を考えるな、まずは確実に盾に当てて弾く事からだ!」
―――ヒュンッヒュンッヒュンッ!
―――カンッカンッ!グサッ!
「うわっ。回復!」
「無理に全部盾で避けなくていい。普通に躱せるのは盾を使わないで躱せ!」
「はいっ!」
「アキラも分かっている通り攻撃魔法の基本は属性矢の魔法だ。火の矢や氷の矢とかな。アキラは魔法障壁で防げるのだろうが、盾で防いだり躱したりしてもいい。これは魔法戦でも役に立つはずだから身に着けて損は無いぞ!」
その後も僕が回復魔法を使えるのを良い事に肉体ダメージを考慮されない容赦ない訓練が続いた。回復魔法があっても痛いものは痛いんだよ…?でもちょっとは盾の使い方が上手くなった…いやマシになったんじゃないかな。
終了後、街に出て夕飯を一緒に食べる。最近白い魔石を沢山取れているので少しいいところで食事だ。
二人の前には美味しそうなシチューオムライスが湯気を立てて配膳されている。向かい合ってテーブルに着くと、レイラはおもむろにシニヨンを解き赤髪がばさっと広がる。それだけで僕は既にドキドキしてしまっているのに、レイラは更にじーっとこっちを見つめながら食べている。
「あのレイラさん…?」
「ん、なんだ?まだ全然食べてないじゃないか。アキラ、ちゃんと食べないと力が出ないぞ?」
「くっ、誰のせいだと…。」
「ただ、じーっと見てるだけじゃないか。そんなに恥ずかしいか?」
「……。ええ、レイラみたいなきれいな女性にじっと見つめられるのは。流石にレイラと普通の会話するのは慣れてきたけど。」
「こんなのただの目とか鼻とか口とかの形とか位置だけの違いだろ?生まれた時から自身の努力で大きく変わるもんでもない。そんなのより内面の方がよっぽど重要だと思うけどな。アキラ程の男でもそうなんだな。」
「アキラ程のって…レイラは僕の評価高過ぎない?」
「そんな事ない。私に言わせれば、アキラの自己評価が低過ぎるんだ。」
「そんな事ないよ。Aクラスからの評判もそんなもんだし。」
「あれはあいつらに見る目が無いんだ。来年になったら、まとめて私より下の順位になってるさ。だが、わかっているやつは分かっている。タクヤとかそうだろう?」
「まぁ…でもクミコは?」
「おおう、私とのデート中に他の女の話をするなんていい度胸じゃないか!」
といって僕の首を小脇に抱えられてヘッドロックのような形で胸に押し付けられた。
「い、痛い、痛いよレイラ!っていうか当たってる当たってる!」
「いいだろ別に。私が構わんと言っているんだ。今後、私とのデート中に他の女の話はしないって約束するか?」
「はい、しますします。しますから離してください。」
しょうがない奴だなと解放してくれた。っていうか、これデートだったの?
「男と女が二人っきりで出かけてご飯とかも一緒に食べてるんだ。これがデートじゃなくて何なんだよ。」
「まぁ、確かに…。っていうかナチュラルに僕の心読まないでくれない?」
そうか、デートだったのか!これは僕の恋愛経験値も上がってしまったのでは!?