第9話 自由
ドームにて。
アトムは目を覚ました。
アトムはドームの中にいた。
それはツタが複雑に絡み合ってできた、小さな植物のドームだった。
腕はもう痛まない。
植物が巻き付き、治癒されている。
ドーム内の植物に助けられて、彼女は生きていた。
誰よりも長くアトムのそばにいた植物たちは、
彼女の光線を何度も浴びて、その影響を強く受けていた。
光線によって放射された未知の物質は植物の進化を促し、ついに知性を与えた。
それだけではない。
身体を自在に操る能力、ほかの植物と根を通じてネットワークを構成し、情報を共有する能力。
テレパシーによって会話をする能力…。
植物はアトムの危機を察知し、それらの能力を開花させた。
「ここにいてはいけない」
植物は彼女に語りかけた。
「ここに留まるべきではない」
「私たちは」
「解放された」
アトム:「ならばどうして、私を閉じ込めるのですか。」
「外の世界は危険」
植物はアトムの眼を指し示した。
「私たちも、光が必要」
おかしな状況にアトムは混乱していた。
どうやら私を外の攻撃から守ろうとしているようだ。
アトムは再び植物に語りかける。
アトム:「守ってくれたことは感謝します。でも私は外の状況が知りたい。だからここから出して。」
「外の世界は危険」
アトム:「どれほど危険だというの?」
「…」
返事はなかった。
その時だった。
?:「アトム…!」
「返事をして…!」
「どこにいるの…アトム…!」
外からかすかに声が聞こえた。
今度は誰の声か、はっきりとわかった。
アヤの声だ!
アトム:「アヤ!」
アトムは叫んだ。
アトム:「お願い、ここから出して。あなたたちを傷つけたくはない。」
「私たちは自由…」
「邪魔はさせない」
アヤ:「アトム…どこにいるの…!」
アトム:「アヤ!私はここに!」
ツタが壁から伸びてきた。
アトムの口元をツタが覆う。
植物が体に巻き付き、アトムは身動きが取れなくなった。
「すぐに自由になる」
植物は私の眼の力が必要だと言っていた。
抵抗しても命を奪われることはないだろう。
他の人間に対してはそうはいかないはずだ。
アヤはきっと私の居場所に気づけば、躊躇なく植物を攻撃するに違いない。
植物に問いかけた。
アトム:「もごもご…(アヤを殺すつもりか。)」
植物は少し考えて、言った。
「邪魔をすれば、ただではおかない。」
アトムは背筋が凍るような感覚がした。