第6話 ミッション開始
アトムがドームで暮らすようになって初めて、
ドームの職員がアトムと直接接触する日がやってきた。
ドームの入り口では、最後のミーティングが行われた。
研究チームの監督:
「最終確認を行います。まずはロボット単体で接近。
しばらく様子を見てから、こちらで実行項目のチェックを行う。
全ての条件が満たされた後で、
アヤにはこの防護服とヘルメットを着用してドームに入ってもらいます。
ドーム内での指示はヘルメットに搭載したトランシーバから…」
アヤは任務の段取りをすっかり、記憶していた。
研究者S:「いいですね、メーターから目を離さないで。
アトムの交感神経の働きが基準値より上がったら、
自身の判断で彼女から離れてください。」
アヤ:「了解。」
研究者N:「今後さらに詳しく研究を進めるために、彼女の協力が必要です。
なるべく機嫌を損ねないように。」
アヤ:「むやみに甘やかしはしません。
彼女は賢い子だから、大丈夫。」
研究者N:「わかっています、でも…」
研究者は口をつぐんだ。
アヤ:「…アトムが怖いのですか。」
アヤが問いかけると、周囲が一瞬、静かになった。
研究者N:「…いや、本当に今、やるべきか、まだ決心がつかないだけです。」
アヤ:「それは同じ意味ではないですか。彼女は9歳の子どもですよ。
そのように接してあげれば心配はいらないはずです。」
研究者N:「そういうものでしょうか。」
アヤは微笑んだ。
アヤ:「まだわからないことばかりでしょう。とにかく、やってみないと。」
アヤは緊張していた。
判断を誤れば死に直結する。
それに、アトムに心の傷を残すことは避けたかった。
監督:「それではミッションを開始する。」
ゆっくりと壁に隙間ができていく。
巨大な金属が引きずられ、不気味な振動音が辺りに響き渡る。
ズズ…ギギギ…
ドームの扉が開いた。
まずはアヤの操縦するロボットが出動する。
昼の3時、アトムは昼寝を終え、部屋で本を読んでいる。
アトムのそばに付き添っていた育児用ロボットが、アヤの訪問について告げる。
アトムは承諾した。
家の前にたどり着くと、育児用ロボットに家の中へ招かれる。
アヤは深呼吸して、アトムが部屋から出てくるのを待った。