ダンジョン一階層-③
数ヶ月ぶりの活動再開です。
諸事情で遅れてしまいお待ち下さってくれていた方には大変申し訳ありません。
今後も不定期にはなりますが更新していこうと思っております。よろしくお願い致します。
「ふっ!」
「グオォッ!?」
ゴブリンジェネラルの大剣の一撃を余裕を持って躱し、鎧の隙間に剣を突き刺したまま脇を抜けて振り切る。
「ガァッ!!」
吹き出す血飛沫を意にも介さず、ゴブリンジェネラルが振り向きざまに地面を抉りながら大剣を振り上げる。
しかし、大振りの攻撃に当たるほど俺も甘くはない。もし躱せなければ次の訓練で父さんからの指導が厳しくなることは想像に難くなかった。
隙だらけの胴体。敢えて誘ってる?
鎧で身を守ってるから俺の攻撃くらいなら受けられると思ってるのか。
それはなんとも考えが甘いな。
「斬鉄っ!」
攻撃系のアクティブスキル斬鉄は、瞬間的に斬れ味を大幅に上がることで金属諸共に断ち切る力を得る。
俺の剣を鎧で弾いた後に反撃するつもりだったのだろう。
ゴブリンジェネラルは大剣を大上段に構えたまま胴体を輪切りにされて訳も分からず生き絶えた。
「やるじゃないか!流石だな、リアム」
「当たり前だろ親父。リアムはもう俺よりも強いんだぜ?油断しなけりゃ余裕だろ!」
「そうだね。でも、今のは父さんがくれた剣のお陰だよ」
そう言いながら、剣についた血を振るって落とす。
このソードマンティスの片手剣は父さんが使用していた武器の一つ。お下がりとして譲り受けた。
Cランク魔物ソードマンティスという蟷螂の魔物の鎌を剣に加工した装備。本来はダンジョン報酬でしか手に入らないアクティブスキルが付与されている特別製だ。
こうしたスキル付きの装備はランダムで付与されるため、極めて高価な代物になる。それがアクティブスキルなら尚更である。
父さんには頭が上がらない。有り難く大事に使わせてもらっている。
他の装備も全部誰かしらのプレゼントだ。
Cランク魔物相手でも通用する装備ばかりで頼もしいことこの上ない。
当たり前だけどアデル兄さんの装備も父さんから譲り受けた物で、性能的には俺がもらった物と同等の代物。
特に盾にはアクティブスキル鉄壁が付与されている。ゴブリンキングの攻撃も受け止められるはずだ。
まあ、アデル兄さんは性格的にタンクよりもアタッカー向きだと思うから、この三人で動く時のメインタンクは父さんにはなるだろうな。
こうして俺たちは危なげなくダンジョンを攻略していき、程なくして一階層の最奥まで到達した。
攻略から三時間ほどでここまで来ることができた。
初めてここを見つけた時はダンジョンに潜ってから六時間以上を必要とした。闇雲に歩き回っていた時と比べるのは間違っているだろうが、強くなっているのは確かだろう。
「この先にゴブリンキングが……」
「ふぃー、初のCランク上位の魔物か。楽しみだけど、流石に緊張するな」
「ははは!安心しろ、息子たち。如何にゴブリンキングと言えど、お前たちの父さんの方が強い!」
「そうだね。むしろ問題は強化される配下の方だ」
「その通り!最弱のゴブリンでさえ重複された統率スキルの恩恵を得てDランク程度の力を得ることもある。だからこそ、扉を開けたら頼んだぞリアム!」
「うん。今出せる全力の魔法をお見舞いするよ!」
俺が使えるのはまだ中位魔法が精々だ。
強いて言えば土魔法はこの間上位魔法を一つ覚えたが、まだ使い物にはならない。
とはいえ、技量次第では中位魔法が上位魔法に必ずしも劣るというわけではないのだ。
「……よし、開けるぞ!」
父さんが高さ五mほどもある重厚な造りのボス部屋に繋がる扉に手を掛ける。
最後の確認に対してアデル兄さんと並んで頷き返しながら、俺は左手のマギトレントの魔杖と右手のミスリルの指輪にそれぞれ異なる属性の魔力を練り上げて集中させていく。
まるで片手ずつ別の絵を描くような繊細さと複雑さを要求される。杖と指輪のどちらも魔法発動体としての機能を持ち合わせているからこそ可能な魔法使いの高等技術。
ギギギ、と開かれた扉の奥。
部屋というにはあまりにも大きなその空間には、しかし部屋が狭く見えるほどのゴブリンが犇めいていた。
極めつきは最奥の玉座に腰掛ける巨体。緑の体皮に尖った耳鼻は変わらないが、父さんと変わらない体格のゴブリンジェネラルと比べても倍近い体躯は圧巻だ。
左手に杖、右手に大剣を握っている。事前情報の通り魔法も使ってくるらしい。
「リアム!」
「分かってる!先手必勝だ!」
ゴブリンキングが杖を掲げて配下に号令を下すよりも早く、俺は魔法を二つ同時に発動した。
風属性中位魔法のトルネード。火属性中位魔法のファイアブラスト。
ゴブリンの大群の中心に重なるようにして展開された緑と赤の魔法陣が混ざり合い、異なる魔法へと昇華される。
その名も複合魔法ファイアトルネード。
紅蓮の旋風が大気を焼き、ゴブリンを引き裂きながら部屋を蹂躙し尽くす。
魔力操作Lv50になってから使用可能になった高等技術であり、掛け合わせた魔法の相性次第では一段上以上の威力を発揮する。
ファイアトルネードは並の上位魔法を凌駕する火力と規模を有しているが、魔法が解けた後にはまだゴブリンキングにゴブリンジェネラル、ゴブリンセイジは顕在だった。
だが、無傷ではない。
恐らく魔力操作の応用である魔力障壁や各属性の防御魔法によって凌いだのだろうが、全身に焦げ跡が付いている。
特にゴブリンセイジは大量に魔力を消費したのだろう。消耗が激しい。
「よくやった!アデルっ、畳み掛けるぞ!」
「俺も弟に負けてられねえぜ!」
言うや否や、父さんはゴブリンキング、アデル兄さんはゴブリンジェネラルに向かって駆け出す。
ゴブリンセイジによる全力の防護が成されたのか、ゴブリンキングは無傷同然だが、援護すべきなのはアデル兄さんの方だ。
生き残ったゴブリンジェネラルの数は五匹、死亡したのは一匹のみ。ゴブリンセイジは八匹全てが生きているが、魔力は枯渇寸前で数のうちには入らないだろう。
「アデル兄さんは目の前の敵にだけ集中して!露払いは俺がやる!」
「へへっ、任せたぜリアム!うおりゃああああっっ!!」
アデル兄さんは行きがけの駄賃としてゴブリンナイトなどの手足を砕きながらゴブリンジェネラルに接敵する。
その横をファイアランスや風属性下位魔法のエアカッターが追い越して魔物たちを狩っていく。
「グォオオッ!」
「ガァッ!」
「お手柔らかに頼むぞ将軍様?」
近場に居たゴブリンジェネラル二匹と戦い始めたのを視界の端に収めながら父さんの様子を確認する。
流石は父さんと言うべきか、援護の必要もなく既にゴブリンキングの玉座まで辿り着いていた。
王の側近のような存在なのか、側に控えていたゴブリンジェネラルが動き出そうとしたところを俺の魔法が襲って道を作る。
「威圧!強撃!はぁああああっ!!」
「ゴァアアアアアァァアアアアッッ!!!!」
隙を逃さず突貫した父さんがいきなりアクティブスキルを使用するが、威圧は返しの咆哮で抵抗された。
更に強撃までもが同じ大剣の一撃によって相殺される。
見たところゴブリンキングの大剣にもスキル使用時の発光が見られたことから強撃を発動したのだと思われる。
同時攻撃とばかりに殺到した俺の魔法も魔法障壁で受け切られた。幾ら魔力で上回っているとしても下位魔法では通らないか。
初のCランク魔物、一筋縄ではいかないらしい。
以下、ゴブリンキングのステータスです。
気になる方は参考にどうぞ。
【名前】なし
【種族】ゴブリンキング
【性別】♂
【年齢】0歳
【状態】健康・悪臭
【装備】
右手:ゴブリンキングの大剣(筋力+50、耐久+30)
左手:マギトレントの宝杖(魔力+80、増幅+5)
腕:鋼の籠手(耐久+15)
胴体:鋼の鎧(耐久+40)
腰:鋼の腰鎧(耐久+20)
足:鋼の脚甲(耐久+15)
アクセサリー1:ゴブリンキングのマント(耐久+20、抵抗+20
アクセサリー2:守護の足環(耐久+12、抵抗+12)
【ステータス】
レベル:12
HP:768/768
MP:734/734
筋力:355
耐久:384
敏捷:211
器用:302
魔力:343
抵抗:367
幸運:1
【スキル】
王命Lv5 統率Lv15 指揮Lv12
鼓舞Lv10 威圧Lv20
気配感知Lv8 魔力感知Lv14
魔力操作Lv21 魔力放出Lv15
身体強化Lv22 精神強化Lv18
剣術Lv24 槍術Lv16 盾術Lv8
強撃Lv13 再生Lv4
強靭Lv30 剛力Lv25 頑健Lv28
俊敏Lv14 技巧Lv23 魔導Lv24
魔坊Lv27
火魔法Lv21 水魔法Lv12 風魔法Lv18
土魔法Lv15 召喚魔法Lv5
集中Lv12 拡散Lv10 拡大Lv9
【称号】
王種