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ダンジョン調査


私の個人的な事情で更新は不定期ですが、気長に待って頂けると助かります。

 







 洞穴のような入り口から慎重に中に足を踏み入れる。

 意外にも中は暗くはなかった。光源らしいものも無いのに、何故か明るい空間になっている。



 鑑定で見た通り、これは洞窟タイプのダンジョンらしい。

 壁面はゴツゴツと岩が剥き出しになっているが、不思議と足場は悪くない。完全に平坦というわけではないけれど、戦闘に支障はないだろう。

 普段足元の不安定な森の中を歩いているお陰か、想像よりも苦労せずに進んでいくことができる。



 ある程度足を進めると、気配感知と魔力感知に反応があった。気配や魔力には覚えがない。戦ったことのない魔物だろう。

 ロングソードとバックラーを構える。意識は既に戦闘状態に入っている。

 通路正面の曲がり角、その奥から三匹の敵性反応。ジッと見据えて待ち構えていると、現れたのは薄汚れた布に身を包んだ小柄な鬼だった。

 緑色の体皮、尖った耳、鋭い犬歯。知っている情報と一致している。

 何よりも特徴的なのは餓鬼を思わせる不自然に膨らんだ腹だ。栄養失調の人間に見られる症状と似ているが、果たして魔物も同じなのだろうか。




「ゲギャ!」

「ギャッ?」

「グゲゲッ、ギャギャ!」


「ゴブリン、だな。……いや、一匹だけ上位種が混ざってるのか?」




 知識にはあるが、実際に遭遇するのは初めてだった。

 獲物を見つけて歓喜しているのだろう。見窄らしい錆びた鉄剣とボロボロの木の棍棒を振り回しながら、耳障りな声を上げているのを油断なく眺める。

 その中に一匹だけ革鎧を身に付けて小綺麗な鉄剣を構えている個体、恐らくゴブリンファイターだな。

 とはいえ、所詮はゴブリンでしかない。最上位のゴブリンキングとゴブリンクイーンのようなCランク魔物でもなければ問題はない。




「ゲギャ?」

「まずは、一匹っ!」




 一足でゴブリンの眼前まで移動して、目にも止まらない速度で振るわれた剣が首を刎ね飛ばす。

 こちらの速さに反応できなかったのだろう。もしかしたら自分が死んだことにも気付かないまま絶命したかもしれない。

 頭部を失った身体がドサリと崩れ落ちる。



 相手の方が数は多い。一匹倒しても油断はしない。

 剣を振り切ったのとほぼ同時、畳み掛けるようにして事前に練り上げてあった魔力を解放する。

 そのまま魔法を構築、発動する。




「アーススパイク!」

「──ッ!?」




 一匹目と同じく俺の動きについて来れていないもう一匹のゴブリンの足元、地面が一瞬にして盛り上がって無数の杭が全身を刺し貫いた。

 土属性の低位魔法アーススパイク。発動の速さと足下という死角からの攻撃が売りの魔法だ。

 確認するまでもない。声を出す間もなく生き絶えた。

 ここでようやくゴブリンファイターが動こうとするが、あまりにも遅すぎた。




「ギッ、ギャ!」

「はあっ!」




 雑に振られた剣をバックラーで弾き飛ばす。

 腕が上がり、身体が反動で仰反った。胴体もどこもかしこもガラ空き。隙だらけだ。

 一閃。ロングソードが首を刎ねる。

 敢えて革鎧を着ている胴体に攻撃するなんて無駄なことをする必要もない。斬り飛ばされた首が宙を舞い、焦点の合わない目が虚空を見詰め、ゴロリと地面に転がった。




「……ふーっ!初めての魔物と戦うのは緊張するなぁ!」




 相手が格下であることは分かっている。

 現在のステータスでゴブリン程度に負けるはずがないことも理解している。

 だとしても、初見の魔物は緊張する。知識にあることが全てとは限らないし、見た目だけ同じ特異個体の可能性だってあるのだ。

 死ぬ時はあっさり死ぬ世界。油断するくらいなら慎重過ぎるくらいが丁度良い。



 刀身に付いた血を払ったタイミングで、突然ゴブリンの死体が靄に変化してダンジョンに吸い込まれるようにして消えてしまった。

 ダンジョンの中ではこうなるとは知ってはいたけど、実際見ると変な光景である。ゲームみたいだ。

 死体の代わりに残されたのは小さな石ころのような物。ゴブリンとゴブリンファイターの魔石だ。Fランクなので人差し指の第一関節くらいのサイズだった。




「まあ、ゴブリンだしな。剥ぎ取りの手間が省けたって思えばラッキーか」




 ゴブリンの剥ぎ取りは魔石、あとは討伐依頼等を受けていたのであれば証明として耳を切り取るのが一般的である。

 それ以外は使用していた装備品くらいしか取るものはないし、質が悪ければそれも回収はしない。荷物が嵩張るのもあるが、やっぱり臭いらしいから。



 その後も調査を続けた結果、以下のことが分かった。

 まず一階層はゴブリン系の魔物しかいないということ。上位種含めて、最低でも三匹以上で常に行動している。

 かなりダンジョンが広くてどこまで進めたかは判断ができないけど、現状見て回った限りではソロだと一階層を踏破するのも難しそうだった。



 魔物には支配者階級、または指揮階級と呼ばれる厄介な魔物が居る。

 有名どころではゴブリンキングのような種族ごとの最上位種が当て嵌まるが、これらの魔物は同じ種族で自分より格の低い魔物を統率してステータスを底上げし、更に知能を上げて連携させることができる。

 具体的に言えば、Fランクでも下位の普通のゴブリンをFランク上位くらいまで強化してくるのだ。正直面倒極まりないスキルなんだよな。



 ゴブリン系の場合はゴブリンキングとクイーンが支配者階級、ゴブリンジェネラルとゴブリンセイジとゴブリンコマンダーが指揮階級とされている。

 このうちゴブリンコマンダーが指揮する部隊とは既に交戦したあとだが、息のあった連携を前に少し梃子摺らされた。

 まだ見掛けてはいないが、この分だとジェネラルとセイジも居る可能性はある。Dランクでも上位の強さを持っていると聞いているし、ソロだと負けはしないだろうけど厳しい戦いを強いられることになるだろう。




「この辺りが引き際かな?」




 取り敢えず、一階層がゴブリンの巣窟だってことは判明したから一旦調査は打ち切っても良さそうだ。

 このくらいなら父さんとアベル兄さんだけじゃなくて、ノクス兄さんでも問題なく戦えると思うし、本格的な調査も含めてみんなで来るのも有りかもな。

 それから道中や帰り道で見つけた宝箱の中身や魔石にドロップアイテムなどを丸ごとアイテムボックスに収納しながら、特に何事もなくダンジョンを脱出することに成功したのであった。










以下、通常ゴブリンの仮ステータスです。


【名前】なし

【種族】ゴブリン

【性別】♂

【年齢】0歳

【状態】健康・悪臭

【ステータス】

 レベル:1

 HP:50/50

 MP:10/10

 筋力:35

 耐久:25

 敏捷:30

 器用:20

 魔力:5

 抵抗:10

 幸運:1

【スキル】

 剣術Lv1(または棒術Lv1) 投擲Lv1

【称号】

 なし


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