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十一.三男のクリエイター

 突然現れたクリエイターに岡本は唖然とした。


(まさか……確か銀河の中央でその傷を癒やしていたはず。もう状態は回復したのか)


 グランマが崩壊しかけた時、体中に穴が空いて倒れ込む無残な姿が頭に浮かんだ。クリエイターが続けた。

 

「まあ、そう驚くな、グランマの若き統率者よ。我はもう大丈夫だ。だが、本来は出てくる気は無かった。アースの試練。お前たちがどう乗り切るか、楽しく鑑賞しているつもりだったのだが」


 その口が少しニヤリと歪んだのを岡本は見逃さなかった。背筋がぞっとした。


(思い出した。この人はこういう人だった)


 クリエイターが諦めたようにため息をついた。

 

「既にグランマの管理者ではないとは言え、アースがなくなっては我も気が重い。そして、せっかく我が銀河の六道衆に頭を下げて残してもらったグランマ。ゴースト達が消えてしまったのを黙って見過ごすのも本意ではない。というわけで……」


 クリエイターが顔を上げた。心なしか生き生きと目を輝かせているように見える。

 

「兄者、ここは我に任せてくれるな。そして、グランマの若き統率者、岡本よ。ここからはちと荒療治になるぞ、歯を食いしばってついてこい。これを乗り越えた時、お前たちはさらなる次元に到達し、我も大いに楽しむことができるはずだ。ガハハハハ」


 その横柄な笑い声に、岡本は唖然とした。やはりこの人が関わるとこういう事になる。(つむぐ)が、次男が首をすくめて苦笑しているのを感じる。さて、クリエイターが気を取り直して空咳をした。

 

「ユージ、聞いているな。お前がやろうとしている事を我は知っている。〝銀河の残り火〟に自らの命を持って再びその炎をともす。まったくもって美しい。だが……」


 クリエイターに怒りの気配を感じて岡本はぞっとした。ユージが何かを言い返そうとした時、クリエイターが押さえつけるようにかぶせた


「それは意味のないことだ。お前のソウル容力をもってしても、銀河の残り火は復活しない。それほどビッグバンに必要な熱量は膨大なのだ。無駄死には美しくない。そして、それをしたところでアースは元には戻らない。それは本意ではなかろう。我にいい考えがある」


 ユージから唖然とした気配を感じた。よしよし。クリエイターが満足したようにうなずいた。

 

「では、早速だが岡本よ。ユージが残り火を復活させる案は却下した。ではどうするか? アースをいったん縮小させ、ビッグバンを誘発、残り火を強める以外ないだろう。それでいいな? だがそうなれば復元したアースは今と異なる世界となる可能性が高い。だが我が言ったことを覚えているな?」


 突然振られた岡本は慌てて思い返した。

 

「あ……はい。たしか、俺次第とかどうとか……」


 必死に頭を整理した。ビッグバン後のアースは膨張して元の状態に戻ることができる。しかし、同じ世界に戻る保証はない。だが、俺次第でなんとかなるとクリエイターは言っていた。どういう意味だ。


 黙り込む岡本。クリエイターは心なしかニヤついているように思える。岡本は手に汗握った。答えがわからず先生の前で黙り込むような情けない気持ち。(つむぐ)が声を上げた。

 

「すいません。三男のクリエイターさん。ちょっとわからないので聞きたいことがあるのですがいいですか? あなたの言い分だと岡本さん次第で元のアースに戻るような言い方ですが、なにか納得いかないんですよねぇ」


 突然の横やりにその場の空気が一瞬とまった。岡本も呆気に取られた。クリエイターにもおじけず話す(つむぐ)。次男の世界の弟。俺の知っているあいつもマイペースだがさらに輪をかけて。(つむぐ)が続けた。

 

「ちょっと理解できなくて、間違っていればご指摘を。サイクリックによりアースの魂は時間が逆行し縮小。超高圧に凝縮された後、銀河の残り火により着火され爆発。復元されはしますがその過程はランダムなため、理論的に現在とは異なる世界となる可能性が高い。全く知らない人々が生活していたり、もしかしたら猿が世界を征服していたりするかもですかねぇ」


 (つむぐ)の話す内容に岡本はぼんやりと想像した。その世界にはあいつらは存在しない。おれの生きていた痕跡さえも。岡本はたまらず声を上げた。

 

「そんな世界は納得できない。クリエイター、そんなことあなたは納得できますか?」


 レインボーロードに映るクリエイターに岡本は訴えかけた。クリエイターは黙ったまま。すでに鑑賞モードに入っているようだ。こうなると自分たちで何とかするしかない。

 

(いや、まて。俺次第でなんとかなるといっていた。何か見落としているはずだ)


 (つむぐ)が続けた。

 

「岡本さんのいう通り、私もその状態に戻る事は本意ではありません。しかし、これは銀河の、宇宙の理。しかし、あなたは岡本さん次第ではそれが回避できるといっていた。どういうことだろう。岡本さん、何か心当たりはありますか?」


(心当たりと言われても……)


 岡本は黙り込んだ。不意にユージが思いついたように声を上げた。

 

「もしかして、アカシックレコードの事でしょうか?」


 クリエイターの口元がわずかに上向いたのに岡本は気付いた。どうやら正解らしい。だがアカシックレコードとはなんだ? 

 

「そういう事か、さすがユージさん」


 (つむぐ)が関心して吐息をついた。呆気にとられた岡本だったか黙って二人の答えを待った。ユージが続けた。

 

「アカシックレコードは宇宙の記憶を格納したデータベース。その創成期から現時点に至るまでの素粒子レベルでの変化の記録が収められている。そこにアクセスできれば、ビッグバン以降のアースの成長を以前と同じ手順で再現することができ、論理的には元の状態に復活する。しかし、あれはあくまでも理論上の代物。どうやってアクセスするのか、そして、どうそれを使うのかはまったくの未知」


「それを我が知っているとしたらどうする?」


 クリエイターのからかうような口ぶりにユージは息を飲んだ。


         *


「残念ながら我はそれを使いこなすことはできない。複雑に入り組んだ超他次元宇宙(アザーバース)データベース。一部の狂いもなく情報を抜き出し、真っ白なアースの全物質の一生を素粒子レベルで完全に再現する。狂気の沙汰。悪魔の御技。普通ならアカシックレコードにアクセスしただけで、その膨大な情報量で気か狂う。だが、ユージ。お前なら使いこなせるかもしれない。お前のオリジナルは秋山結弦。情報の運び屋。複雑に入り組んだ人間社会の要望を正確に、素早くコンピューターに変換する。まさに、お前達アースの住人にはうってつけの仕事だな」


 岡本は唖然としたが、ふと、かつて秋山が日本橋料亭の膨大なシステム設計書を一人で復元した事を思い出した。客として来店し、五感を研ぎ澄ましてAIを観察することで失われた設計図を再現する。運び屋、秋山だからこそできた奇跡。それによって、アイコスとの戦いに勝つことができた。


(しかし、今回はあまりにも)


 岡本は溢れ出る冷や汗を止めることができなかった。アカシックレコード。銀河の太古からの記録。アースの誕生から現代までの歴史を再現する。確かにそれであれば完璧に元の状態に戻るかもしれない。しかし、それは危険な事ではないのか。岡本は声を荒げた。

 

「まってください。なぜユージだけで。全員で協力すればもっと安全にできるのではないでしょうか」


 クリエイターは諦めたように首を振った。

 

「それは無理だ。いや、正確にはやりたくてもできないのだ。アカシックレコードへのアクセスは量子プロトコルとは異なる通信方式、他次元素粒子体系を包含するプロトコルであるソウル容力が必要だ。そして、現時点で使いこなせるのが長兄とユージのみ。長兄は今、手を離せない。ならユージにやってもらう意外ない」


「そんな」


 岡本は呆然とした。かつての秋山を思い出した。いつも、青白い顔でふらふらになりながらも困難に立ち向かっていた。幾度の試練もその知識と能力で打ち勝ってきた。だが今回はまったく次元が違う。何か別の方法はないのか。ふいに紬が声を上げた。

 

「シンの他力本願。たしかその影響で三男と次男のアースは互いに存在が可視化された。あの力には平行世界を干渉させる力があるのではないでしょうか。であればアカシックレコードにも我々がアクセスできるというのでは?」


 クリエイターは黙りこんでいる。そこから先は自分たちでなんとかしろ、そう言っているように岡本には見えた。既に頭が限界だった。大きく息を吸って立ち上がった。

 

「まあ、シンの件は一旦おいておきましょう。アースの復元が始まるのはいつからなのか明確にしないと。それまでには方針をきめる必要がある」


「三ムーンだ」


 不意に見知らぬ男の声がした。中肉中背の目つきの鋭い男がレインボーロードに映っていた。岡本は懐かしい姿に驚いた。日本の警察官。しかも、この男、どこかで見たことがある。警官が厳しい眼差しで続けた。

 

「時間がない。残り火が消えかけている。急がないとアースは完全に死滅するぞ」


 (いぶか)しそな(つむぐ)の声が響いた。


「あなたは確かマスターを連行した銀河警察の。三ムーン……ですか。それは具体的にどれくらいなのでしょうか?」


 全員が息を飲んで警官の言葉を待った。


(三ムーンだと……?)


 岡本は頭を捻った。どこかで聞いた記憶がある。管理者になりたての頃、中央政府の研修で六道衆から教えてもらったような。必死に記憶を振り絞った。


(確か、ミッドナイトブロッサムの開花サイクルだったはず。場所により時間の速度が異なる銀河で唯一の例外がミッドナイトブロッサムの開花タイミング。銀河の場所によって自動的にその間隔が変わる。時間が遅い場所では早く開花し、早い場所ではゆっくり開花する。それにより場所に依存せず正確な銀河時刻を知ることができる。理由はながらく謎だったが、おそらくこの花はソウル容力で銀河中央のタイムクリスタルにアクセスしている可能性がある。三ムーン。三回の開花が終わるまでということか)


 ふと男が花を持っているに気づいた。

 

「すでに先ほど開花した。のこり二回」


 岡本は背筋がぞっとした。


「どういう意味ですか? もしかして三回、つぼみが開いたら……」


 紬が絶望的な声を上げた。ニヤニヤと笑うクリエイターが横目に映った。タカハシがぶっきらぼうに続けた。


「まあ、俺はアースがどうなろうが知ったこっちゃないが、銀河が滅ぶのは困る。寝る場所がなくなるからな。もっとアースの縮小スピードを早めろ。今の十倍は必要だ。さっさと爆発させて残り火を復活させるんだ。復元後のアースの違いは我慢しろ。戻るだけマシと思え。今は残り火の復元が最優先。そして、あのクソガキのマスターの案は中止だ。被害を最小限に抑える必要はない。今回失敗することも考慮して、第二、第三のアースも誘爆させないと。長兄の全グランマへのゴーストの供給は今直ぐ停止だ」


 ペラペラと話す男に全員が呆気に取られた。岡本も啞然と男を見た。


(この男は何を言っている? アースの縮小をはやめるだと? んなこといったって一体どうすればいいんだ)


 悲しそうにこちらを伺う(つむぐ)の気配に気づいた。悲痛な、だが何かを訴えかけるようなその心。ユージ意識も感じた。悲しみに満ちた、だが全てを託すようなその想い。岡本は戸惑ったがふと思い出した。クリエイターの言葉。全ては俺にかかっている。今決断すべきはこの俺か?


 必死に頭を絞った。俺。グランマの管理者。アースの神。全知全能の支配者。人類をすべるもの。その生死さえも。


(あっ)


 ある可能性に気づいてゾッと背筋が凍った。人類の死。つまり魂の解放。確かに消滅の速度は早まるがそれを俺が。


「花が咲いた。あと一回だ。さっさとやれ、お前は神だぞ。簡単なことだろ」


 高橋が苛ついて岡本を睨んだ。クリエイターが興味深そうに視線を向けているのを感じる。モーセの十戒、世紀末、ラッパが……岡本は朦朧(もうろう)としてきた。いくら銀河のためとはいえ、地球の滅亡を俺がこの手で。


 ふっと岡本の前に黒い箱が現れた。これはまさか。タカハシが(ののし)った。


「さあ、それを開けろ。お前ならできるはずだ。そしてボタンをおせ。全てを消滅させる死のリセットボタン。かつてのクリエイターはつ躊躇(ちゅうちょ)なくやってきたぞ。特にお前の前のあいつは。よだれを垂らしたあいつの嬉しそうな顔。あれは正真正銘のサド野郎だな。さあ開けろ、そして押すんだ」


 唖然と固まる岡本にタカハシはイラつき舌打ちした。ちっ、腰抜けが。タカハシは悪態をついて声を荒げた。


「おい、次男。聞いてるな。三男はあんな感じじゃだめだ。仕方がないから次は、お前のアースを誘爆させる」


「な……」


 (つむぐ)が絶句する声がわずかに響いた。


「元はといえばお前が一番出来損ないだ。三男はまだ使える。はじめからこっちからやっておけばよかったな」


 タカハシの抑えた耳がわずかに光った。次男の魂の供給を停止させろ。ぼそりとつぶやく声が響いた。


「いやだ、助けて……」


 (つむぐ)の悲痛な声が響いた。岡本は唖然とその様子を眺めた。俺は一体どうすれば……


「大丈夫です。岡本さん」


 ユージの落ち着いた声が聞こえた。ふと、かつての秋山を思い出した。冷静で温かく不思議と落ち着かせる声色。あの声で俺は常に冷静さを取り戻せた。


「必ず僕が元通りに戻します。たとえこの体が砕けても必ず。だから信じて。岡本さんは今、自分がなすべきこと」


 信頼の眼差しでこちらをみるかつての秋山の姿が重なった。あの時、秋山は俺を信じてアイコスに脳を差し出した。そして、こいつも同じ。


(やはり息子だな。自分の事は後回し。バカ正直に人を信じて渦中に身を投じる。だがそれでこそユージ、あいつの、秋山の魂を受け継ぐものだ)


 肩の荷がふっと降りた。深呼吸し、心を整えた。


(心を決めろ。俺の手がどれだけ汚れようと構わない。ユージの、人類の糧に少しでも役立つなら何度でもこんなボタンは押してやる)

 

 黒い箱を手に取り、険しい顔を上げ叫んだ。


「クリエイター、ユージにアカシックレコードについてすぐに説明してやってくれ。終わり次第、地球の魂をリセットする。すまんな、ユージ。いつもお前には頼りっぱなしだ。あとは頼んだぞ」


 岡本は心が締め付けられる思いがした。俺は今、あいつを死に向かって推し進めているのかもしれない。だが、これも俺に課せられた使命。ニヤリと笑うクリエイターが目に入った。頭にカッと血が上った。


(くそったれが)


 久しぶりに心の底から憎しみが沸き上がった。魂の試練、今まで幾度となく辛酸を舐めてきた。今回もクリエイターにより、あえて困難な道を選ばされているのかもしれない。


(だからなんだってんだ)


 岡本は決心して前を向いた。


「他に道があるかなんて関係ない。俺は、俺たちは目の前に立ちはだかる壁をぶち壊して前に進むだけだ」


「岡本さん……」


 (つむぐ)が涙を流して笑った。


「ふん、命拾いしたな。さっさとやっちまえ」


 タカハシが岡本を一瞥してそっぽを向いた。クリエイターが思い出したように手を叩いた。


「そうだ。アカシックレコードの前に、もう一ついいことを教えてやろう。長兄の攻撃で使われた魂、あれを使えば……」


「わかっています。そんな事より、早くアカシックレコードを」 


 珍しく怒りを含ませたユージの声。


「……そうか、わかった。老兵は去るのみ……か」


 黙り込んだクリエイターに岡本は少し心地いい気になった。だが、ふと、今のクリエイターの言葉が気になった。長兄の攻撃がどうとか。慌てて首を振った。


(余計なことは考えてるな。後はユージに任せればいい。俺は俺のなすべきことをやる。それだけだ)


 しばらくして気を取り直したクリエイターがいつものようにニヤリと笑って声を上げた。


「じゃあ始めるか、ユージよ。アカシックレコード、我の知についてこれるかな」


 クリエイターが話し込む姿をぼんやり眺めながら、岡本は気を取り直して背筋を伸ばした。


(俺がやるべきこと……)


 震える手で箱を開け、現れた真っ黒なボタンをこわごわとしばらく見つめた。


「オッケーです」


 ユージの声が響いて岡本はハッとして顔を上げた。呆れたように首を振っているクリエイター。その横には涼し気な顔のユージ。岡本も呆れ返った。


(もういいのか。俺はまだ決心すらついてないってのに。やはりこいつはとんでもないやつだ。)


 クリエイターが口を開いた。


「ユージ、我の出番はここまでだ。後はお前に任せるとしよう。だが、最後に一つ条件を出させてくれ。何もそんな難しいことではない。我が言いたいことはシンプルだ」


「条件ですか?」


 ユージが眉をひそめた。

 

「生きろ」


 場に沈黙が流れた。普段とは異なるそのクリエイターの真剣な声に岡本は驚いた。


「困難にたちむかい、戦い、そして勝利するのは当然だが死んではいい気持ちにはなれない。我の性格はわかっているだろ? かならず、最後には生きて皆と共に笑え。それが我の最低条件だ」


 ユージが諦めたようなため息を漏らし、呆れて苦笑いした。

 

「わかりました、相変わらず手厳しいですね」


 ふむふむ。クリエイターが満足したようにうなずいた。岡本は呆気に取られたが思わず笑みがこぼれた。


(やはりこの人はこういう人。だが俺達のアースはこうでなくっちゃな)


「予定が随分早まったが始めるか。さあ、若きグランマの統率者よ」


 クリエイターが手を広げて岡本にボタンを押すように促した。やっとか、タカハシがあくびをしてこちらを見ている。全員の注目を浴び岡本は頭が真っ白になった。大丈夫、ユージの温かい気持ちを感じた。頑張って、紬の祈るような願いも。レインボーロードに目をやった。ドスン。巨大な生き物が動く気配がした。ギーギーと獣の鳴き叫ぶ声。もう、ここまで退化したのか。紬が声を震わせた。


「白亜紀、まだ四パーセントほどしか進んでいない。急がないと」


(たった四パーセント?)


 箱に目をやった。震える指を必死に押さえてボタンに近づけた。


「おい、(つぼみ)が動いたぞ。まじでやばい」


 タカハシが声を荒げた。


「岡本さん、早く」


 ユージがさけんだ。紬の祈る心を感じる。クリエイターが声を荒げた。


「いい加減、諦めろ。お前は全知全能の神、創造主だ。さあ押せ、何も考えるな。これがお前の背負うべき枷、クリエイターの宿命だ!!」


(くそったれ)


 岡本は目をぎゅっと閉じた。


(すまん、地球の生き物たち)


 震える手を抑え、全体重を乗せてボタンを押し込んだ。

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