召喚、初めて出来ました。
この度は数ある作品の中から、本作品をお読み頂きありがとうございます。
本作品は、作者初の長編小説になります。最後まで完結できるよう、頑張って書いていきたいと思います。
世界観や設定は、細かいところでゆるっとしている所があるかもしれません。ご了承ください。
ラブコメタグをつけてはいますが、恋愛要素は薄目かもしれません。
誤字脱字、もしありましたらご指摘頂けるとありがたいです。
よろしくお願いします。
思えば、私は人とちょっと違うなと思ったことは度々あった。
そりゃあ、領地視察中に森に捨てられてたからという理由で赤子だった私を拾ったお義父様も大概だとは思う。
辺境伯という立派な肩書をもつ貴族の一員なのに、と後ろ指を刺されてもからから笑って何処吹く風のお義父様は、その爵位に恥じない功績を収めているので、変わっているぐらいが丁度いいのだろうけど。
そんな変わってるお義父様と、お義父様の奇行を平然と受け入れられるお義母様に育てられた私は、それはそれは周囲――主に貴族――から腫れ物扱いをされてきた。
意外にも腫れ物扱いする以上のことはされなかったのだが、それは私に何かした際、お義父様からの報復が怖かったからだとは思う。
けど、それとは関係なく、私自身が変わっているなと思うのは、この黒髪に金色の瞳と能力だった。
まずこの見た目に関して、私と同じ色をもつ人間は誰一人として会ったことはないし、誰も私と同じ色をもつ人間を見たことがないと聞いた。
学生時代、出自の分からない私に構おうとする貴族は殆どいなかったが、不思議と平民の方々とは仲良くさせて貰った。
その方々から、平民の暮らしを教えてもらう中で何の気なしに教えてもらった話だった。
貴族に関しても、辺境伯令嬢として夜会などに出席していればすぐに分かる。
例えば、王族は皆が金髪碧眼であるし、辺境伯家は髪も瞳も暗い茶色である。
その他の貴族にも、私のような色合いを持つ人間はいなかった。
夜会に参加している時には「人間ではないのではないか?」と心無い言葉を投げつける人もいたが、今思うとその方々に「察しがいいですね」と言ってあげたい気分である。
幾分前の話なので、何処の何方かはもう忘れましたが。
次に能力の話だが、私には「召喚」という能力がある。
この国では、10歳になると貴族も平民も関係なく学園に入学するのだが、その際に魔力測定と能力鑑定が行われる。
私も例に漏れず、そこで自身のスキルが判明した。
「召喚」自体は固有する人物が少ないだけでそこまで珍しいものではないのだが、私はどういう訳か今まで一度も成功したことがないのだ。
その前に行った魔力測定では、魔力量は平均よりも少し多いとの結果が出たので、これには私のみならず鑑定してくれた先生方も一緒に首を傾げた。
そういった経緯もあり、学園では基本の講義に加え、同じ能力を固有する先生に定期的に実践演習をしてもらっていたのだが、結局16歳で卒業する最後まで成功することは無かった。
幸い、基本的な魔法は習得できたのと、どの教科も成績は悪くなかったようなので、無事に特例で卒業認定を貰えたのだが。
閑話休題。
何故冒頭からいきなりこんな自分語りをしているのかと言うと、今までできなかった召喚が突然開花したことから話は始まる。
実は卒業後も自身の能力の特訓は続けていた。
元々の生い立ちもあって、辺境伯であるお義父様の後を継ぐこともできなければ、何処か別の貴族と婚姻を結ぶことも難しい。
百歩譲って婚姻は結べたとしても、絶対に辺境伯の権威が目当ての方だったり、何か訳ありの方だったりとしか結べないだろう。
この家自体は、お義兄様が正当に継ぐ予定なので大丈夫だし、幸せになれない結婚はしなくていいと家族から言って貰っている。
こればっかりは仕方がないことだと理解はしているが、そうなると私は今後の人生においての身の振り方を考えなければいけなかった。
このままここで行かず後家になるくらいなら、自分のやりたいことをやって生きていきたい。
しかし、この国では何をするにも能力が使いこなせないと就職もできない。
なので卒業後は、一度領地に戻って日々特訓をしたが、中々芽が出ず悔しい思いをする日々が続いた。
「――……変な時間に目が覚めたから、気分転換に練習してみただけなんだけどなぁ」
何時もならぐっすりと眠っている夜中に目が覚めた。
窓から外を除けば、満月が大きく輝いていて綺麗だったので、ちょっと練習して疲れたら寝よう位に軽く考えて召喚の呪文を唱えてみた。
そしたら、できてしまったのだ。
しかし驚くべきところはそこでは無い。
一般的に、召喚されるのは火精霊や風精霊といった精霊である。
しかし、私が召喚したのは精霊ではなかった。
まるで闇から浮き出てきたかのように現れたそれは、高い魔力をもつ人型の種族――魔族と呼ばれるものだった。
その闇を象徴する黒い髪、血の気を感じられないほどの白い肌、そして血のように紅い瞳という怖いくらいの美しさに、思わず身震いした。
魔族はこの辺境伯の隣、北の方にある魔王国に住んでいると言われている。
魔が付く名の通り、国全体に強固な結界を張るほど魔力が豊富である者達が住んでいるという。
その結界に憚られて、魔王国内がどんな様子なのは殆ど分からないのだ。
そんな結界の中から出てくることは無いはずの魔族が今この場に現れたのだから、それはもう声が出ない程に私は驚いた。
突如現れた彼(と言っていいのか分からないが)は、私の存在に気付くと目を見開いてこちらを凝視した。
そして素早く膝を折ると、私に向かって恭しく言ったのだ。
「まさか、貴女様に呼ばれるとは……美しく成長なさった姿を見ることができ、大変光栄に思います、王女様」
「…………は?」
最初は短めになっております。