三話
「はあ?どうしたんだ!一体。半数以上、やられているぞ!銃もない原始人のくせに、トーマス、あれをぶっ放せ!」
「はい!火矢ですね。しかし・・」
「いいから、やれ!」
☆城の見張り台
「おお、魔法は便利じゃな。儂は老眼で遠くは見えるのじゃ」
魔導師が指で輪を作り。米太郎が覗いている。指の間は遠くが見えるようになっている。
「おお、あれを出しおったのう。短音じゃ。緊急じゃ。あの距離じゃあたらんかのう。奴らに誘導弾は使えまい」
カン!カン!カン!カン!カン!
けたましく、鐘がなる。
すると、
野外に出ている者は、
「壕に入れ!」
土嚢の後ろに掘ってあるたこつぼ陣地に入り鉄のフタを占める。
「さあ、エリーゼ殿も早く!」
「はあ、はあ、はい」
城に残った者は、伏せる姿勢を取る。
ドン!無反動砲の発射音が響くが、
トーマスは立ったまま撃った。
この時代の投射兵器に、伏せて撃つ発想がない。
つまり、撃った瞬間にぶれて、目標を大きく外れるのだ。
ヒュ~~~~~ン。ドカーーーーン。
壕を狙ったが、大きく外れ、仲間達の真ん中に着弾した。
「馬鹿、何をやってやがる。金がないと召喚できなのだぞ!」
パン!
田中はトーマスを撃った。
「俺が直接行く。原始人がよ!」
軽装甲車を走らせ。
近場で、撃とうとするつもりだ。
狙いは悪くはないが、
「良し、次の段階じゃ。魔導師撤収じゃ。
騎士の出番じゃ!射程まで出て、弓で魔導師達を援護じゃ」
「「「「オオオオオオオーーーーー」」」
☆
「ヒィ、弾がねえ。お、ルフィール様のところに行って、弾の箱をもらわなければ」
「騎士達が出て来た!畜生、撃て!たてごと、撃て!」
パン!パン・・・・
カン!カン!
城門の外に出た騎士達は徒歩だ。
前衛は、奇妙な大盾を持っている。
盾は曲がっている。
敵方に向かって、曲射している。いうなれば、Uの形である。
☆
「これだけは、死傷者が出る前提の作戦じゃ。U字杭というものがあってな。薄い鉄でもな。弾が、曲射して、敵に跳ね返ることがあるのじゃ。
儂は7.62ミリ弾が、U字杭に跳ね返った現象を見たことがあるのじゃ。
勿論、盾は厚くして、この鹵獲をした銃でためすのじゃ」
「何だ。何だ。何故!弾が貫通しない。グハ!」
一人の盗賊に弾が当たった。
跳ね返ってきたのだ。
「今だ。弓を撃て、魔導師たちを援護するのだ!」
盾の後ろに隠れていた騎士が弓を撃つ。
魔導師達は、速やかに、城門の内側に入った。
魔導師の中には、ハーフリングも混じっていた。
彼らの仕事は斥候。
両手に、拾ったマガジンを抱えて帰って来た。
「勇者様に、これを!」
「心得た!」
すぐに、駆け足で、見張り台まで登り。マガジンを渡す。
そして、米太郎は、銃に装着した。
使者から鹵獲した銃で、狙撃しようとするのだ。
「M16かのう。さすがに、引きがね室部はいじらんかったがのう~」
米太郎は、鹵獲した銃を、剣の整備で使う植物油とウエスで、整備をした。
彼が転移前に使っていた銃とは違うから、細かいところまでは整備出来なかったが、これで充分だ。
パン!パン!
見張り台の上から狙う。騎士の退却を援護しようとするのだ。
しかし、
「ありゃ、もう、いないのかのう~、ルフィルとかいう奴、馬鹿じゃのう。馬鹿は予想を遙かに跳び越えるからやっかいじゃ、うん?ありゃ、馬鹿じゃ。軽装甲車で、前線にきておるのじゃ」
軽装甲車のハッチの上には、配下の盗賊に、無反動砲を持たせている。
近くで撃てば、当たるとの戦略だ。
しかし、
「馬鹿じゃのう。まっすぐ来ておる。ジグサグで来なければ、いけない場面じゃ」
パン!
「ギャ!」
☆
「ルフィール様、帰りましょう。もう、無理です!上の砲手もやられました!」
「ええい。このままなめられたまま帰られるかよ!」
「この装甲車の中にいれば安全だ!」
「かしら~前方に空堀があります。橋が架かったままです」
「はあ?卑怯なワナを仕掛けるだけの奴らだ。橋に乗ったら、壊れる仕組みだぜ!この装甲車で空堀に入って、そこから、登ればいい!入れ!」
田中は、運転手に銃を突きつけて、命令をする。
「はい!」
軽装甲車は、空堀に入るが、
「おい、もっと、アクセルをふかせ!」
「やってます!」
軽装甲車は、前に、つんのめり、車体を起こせなくなった。
☆城の見張り台。
「意味不明じゃのう・・・あの軽装甲車のう~あれは指揮官搭乗タイプだのう~後方で無線指揮するタイプじゃ。
それに、この空堀は、戦車壕と同じ大きさと深さなんじゃ・・・戦車や装甲車が、入って抜けそうで抜けない微妙な幅と深さなんじゃ」
☆
「空堀を補修するのじゃ。相手は装甲車を持っているかもしれないのじゃ!」
「あの、せんしゃごうとは?」
「それはのう。戦車・・がのう。跳び越えられない壕のことじゃ、無駄になるかもしれないが、言われた深さと幅にするのじゃ」
「「「了解です!」」」
・・・イラク戦争ではのう。米軍は、戦車壕の中に、鉄パイプをぶっ込んで、戦車を通したというがのう。
自衛隊じゃ、爆破して、斜面を緩やかにして通るのじゃ。
戦車壕かのう。近代戦では、対策立てまくられているがのう。
まさか異世界で役に立つとはのう。
日本ではのう
よく分らんおばさんが、有事になっても、
『国民の財産である土地を勝手にイジってはいけません。許可書が必要になるザマス!』
戦車豪を掘ってはいけません!というのじゃがのう。う~む
「勇者殿、如何為された!」
「はっ、軽装甲車に、土を被せるのじゃ!儂もいくのじゃ!儂が行くまで待機じゃ」
「「「了解!」」」
・・・・
軽装甲車ごと埋める。銃を持った米太郎の護衛の元、城兵達が、土を被せるが、
田中龍飛伊留は両手を挙げて出て来た。
日本語で話す。
「はあ、はあ、はあ、降参する!老人か?いや、もしかして、元自衛官か?俺は金さえあれば武器を召喚出来る。一緒に手を組もうぜ。
俺はこんな名前だから悪にしかなれなかった!しかし、心を入れ替えるぜ!
こんなちんけな奴らほっぽいて、国盗りをしようぜ・・・」
しかし、米太郎は、異世界の言葉で返した。
「儂はのう。二男なのに米太郎じゃ。兄は丈司、妹は由美じゃ。儂のじいさんがのう。やる気出してのう、名付け親にならせてくれと言ってな。妹の時は、初めての女の子だから、両親は拒否してのう。それでも儂はぐれなかったのじゃ!
大体な。あの戦いはなんじゃ。自動車化部隊と機甲化部隊の戦いの違いもしらんとは最近の若者はなっとらん!
戦場に、部下にガソリン車で突っ込ませるとはのう。だから、車を燃えるのじゃ。そんなアホをするのはイスラ〇国ぐらいじゃ!」
「爺さん。話なげえよ。どうだ?天下を・・」
パン!パン!
と銃声が響いた。
・・・アホウ、同郷のよしみで殺してやったのじゃ。エルフの姉ちゃんは国を燃やされたのじゃ。
生き残っても、厳しい拷問がまっておるに決まっているのじゃ。
儂も甘いのう。
米太郎は、銃を丁寧に壕の中に入れ、
「一緒に埋めてくれんかのう」
「「「分りました」」」
どこか寂しげであった。
☆数時間後
「負傷者、騎士3名、着弾、命に別状無し。今、回復術士に見てもらっています!魔導師、捻挫2名、転倒による怪我5名、擦り傷程度、
エルフ魔導師、負傷者、エリーゼ殿、重度の疲労。これは、2,3日の休養で治る見込みです」
「ああ、まさか、軍事チートと戦争して勝てると、まさにコメタロウ殿は本物の勇者だ」
「ええ、今日は、国庫を開放して、ホロホロ鳥を出しますわ。皆様の勝利ですわ!」
「「「「オオオオオオオオオオオ」」」
「あれ、勇者様は?」
☆
「フフフフフ、儂は異物じゃ。これから、冒険者になって、悪さをする日本人を止めるのが儂の役目じゃて。
アンヌ婆さん・・・」
米太郎はクールに国を去ったが、
老人の足なので、すぐに捕まった。
フレデリカは、両手を腰に当てて、米太郎に怒る。プンプンだ。
「おじいちゃん。じゃなかったわ!勇者様、勝手に国を去らないで下さいませ!アンヌお婆様も肩を落していましたわ!」
エルフのエリーゼも、
「ゆ、勇者様がいなかったら、嫌なのだからね!」
・・・早苗。
『キャー、お爺ちゃん。下着で庭を歩かないで!』
『これ、早苗や。これはステテコと言ってな。下着じゃないのじゃ!』
『フン!超受けなんですけど!今日は、お爺ちゃんの誕生日だから、ラコステを買ってきたから!ほら着てよね』
『ステテコ?ラコステ?早苗・・・芸人になれるのう、アハハハハハハハハ』
プイ『最低!!!』
米太郎は何故か孫を思い出した。
今まで勇者として大事にされてきたが・・・どこか遠慮があると思っていた。
・・・異世界を第二の故郷にするかのう。
吉田米太郎、元自衛官、この世界で生きる覚悟を決めた。
最後までお読み頂き有難うございました。